民間人の起訴も可能な「身分なき共犯」とは~IR汚職で元政策秘書も起訴

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(1月14日放送)に中央大学法科大学院教授・弁護士の野村修也が出演。秋元司容疑者の再逮捕について解説した。

2017年12月に中国・深圳の「500ドットコム」本社を訪問した衆院議員秋元司容疑者(右から3人目)。白須賀貴樹衆院議員(左から2人目)、勝沼栄明前衆院議員(同3人目)が同行した。右端は同社副社長の肩書きで活動していたジェン・シー容疑者。 ※一部画像処理(一部人物の顔にモザイク)してます。 ※白須賀議員のフェイスブックより  写真提供:時事通信社

賄賂にしては少額なのか~問題は金額よりも権限

カジノを含むIR(統合型リゾート)事業をめぐる汚職事件で、東京地検特捜部は衆議院議員の秋元司容疑者を収賄容疑で再逮捕した。秋元容疑者は中国企業側から現金300万円の他、北海道への家族旅行の費用およそ70万円を負担させた疑いが持たれている。

森田耕次解説委員)東京地検特捜部は14日、新たに中国企業500ドットコム側から現金200万円の他、中国の深圳にある500ドットコムの本社を訪れた際の旅費およそ150万円相当の供与を受けたということで、収賄容疑で衆議院議員の秋元司容疑者48歳を再逮捕しました。また、贈賄容疑で500ドットコムの元副社長鄭希(ていき)容疑者、元顧問の紺野昌彦容疑者、中里勝憲容疑者の3人も再逮捕しました。さらに地検特捜部は、500ドットコム側から現金300万円を受け取った他、北海道留寿都への家族旅行の費用およそ76万円を負担させたということで、秋元容疑者を起訴しています。更に、「身分なき共犯」ということで元政策秘書の豊嶋晃弘被告41歳を在宅起訴したということで、これで秋元被告の賄賂の総額は700万円を超えるということになったわけです。500ドットコム側の3人も起訴、それから、札幌市の観光会社の会長も贈賄罪で在宅起訴ということで、捜査が広がってきているということですね。

野村)最初の方の300万円の賄賂の件については、一旦捜査が終わって勾留期限が来たので起訴したという話なのですが、今回のニュースはそれに加えて新しい贈収賄の事件として再逮捕されて捜査が始まったという話です。通常、特捜部がこれまでやってきた贈収賄罪の事件は大概1000万円を超えてきていましたので、それに比べると300万円かという声はあったのですが、こうして積み上がってある程度高い金額になってきたと言えます。額は小さくてもやったことがもし法案の制定などに影響を与えていたとすれば、大きな問題だと思います。

森田)秋元議員は職務権限があると地検が判断したということでしょうか。内閣府副大臣のときに、IR整備を担当する大臣の補佐をしていたということですものね。

野村)今回は他の政治家にお金が回っているということもあるのですが、他の政治家は特に権限がなく、何かご縁を持ちたいということで献金や寄付を受けたという形になっています。これ自体は政治資金規正法に基づいて処理していたかどうかというところが問題ということになります。しかし、秋元議員に関しては職務上の権限がありましたので、何らかの見返りを期待したお金の授受ということで、贈収賄罪の成立が疑われていることになっているのです。

元政策秘書と元私設秘書の自宅などが東京地検特捜部の家宅捜索を受け記者団から質問される自民党・秋元司衆議院議員=2019年12月9日午後、国会内 写真提供:産経新聞社

元政策秘書逮捕の理由「身分なき共犯」とは

森田)元政策秘書の豊嶋晃弘被告については、「身分なき共犯」ということですが。

野村)もともと贈収賄罪というのは、公務員という身分を持っている人について成立する犯罪です。収賄側の秋元議員は特別公務員ですから、公務員としての身分があったということで収賄罪になっています。しかし、秘書の人は公務員ではないので、収賄罪が直接は適用されないということが問題となるのですが、共犯者として処罰される余地があります。これは、刑法の65条に規定されているのです。本来は身分がないので直接は処罰されないだろうと思っているかもしれませんが、一緒に罪を犯せば共同正犯という扱いになりますし、あるいはそれをそそのかしたり助けたりすると、教唆犯や幇助犯と言われるような共犯者としての処罰を受けるということになるのです。そのときは身分がなくてもいいということになっていますが、なぜそういう風にしているのかと言えば、身分がなければ犯罪にならないというのであれば自分は罪に問われずに身分のある人を使って、その人だけを処罰させるような悪さをする人が出てくるからです。

中国企業「500ドットコム」の本社事務所が入居する広東省深圳市のビル=12月25日(共同) 写真提供:共同通信社

業者の思惑を見抜くのは議員としての品格の問題

森田)今回の再逮捕について、IR事業そのものをどうしていくのかについて、菅官房長官は夕方の記者会見で次のように述べています。

 

菅官房長官)この事案について検察当局の知見処理や捜査の具体的内容である事柄であり、所感を述べることは差し控えますが、いずれにしろIRについてはこれまでさまざまな法律で議論を積み重ねてきておりますが、引き続き、できるだけ早期にIRの整備による効果が実現できるよう、必要な準備は進めていきたいと思います。

 

森田)また、通常国会が20日に召集され、野党はカジノ営業の禁止法案を共同で出すと。安倍政権成長戦略の目玉に掲げたIR事業自体が問題だと野党側は訴えているわけですが、IRそのものに影響が出てくるのかというところですね。

野村)野党が言っているのは、法案の整備に関わった人が収賄をしたということは、法案が歪んでいるのではないかという主張です。だとすれば、法案の制定プロセスをもう1回検証して、ほとんど影響力がなかったということがわかればその主張は成立しなくなりますので、政府側はそこのところを検証すべきだと思います。

森田)先週末、カジノ管理委員会の初会合が開かれましたね。

野村)管理委員会、三条委員会ということで政治から独立していますから、そういう人たちがカジノの弊害と言われていることを解決できるのかどうか。カジノはビジネスという点で見た場合には、IR事業にとって必要不可欠な部分があります。そこがちゃんと折り合っていけるかどうか、しっかりとした監視体制が必要だということは言えると思います。

森田)誘致に名乗りを上げている自治体も同様してしまっています。北海道や千葉は取り下げましたね。

野村)結局そこの議員さんを狙い撃ちでお金が配られますから、国会議員の人たちは力があるからお金を配られているのではないのだということを自覚して、その業者の思惑を見抜いて拒絶しなければいけません。議員としての品格の問題ですから、しっかりとして欲しいです。

番組情報

ザ・フォーカス

火曜〜木曜 18:00-21:20

番組HP

錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。

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