萩生田経済産業大臣「脱炭素社会の実現に向けて原発再稼働」が正しい“これだけの根拠”

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月6日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。萩生田経済産業大臣が2050年の脱炭素社会の実現に向け、原発の再稼働を表明したというニュースについて解説した。

萩生田経済産業大臣「脱炭素社会の実現に向けて原発再稼働」が正しい“これだけの根拠”

【政治 岸田内閣発足】官邸に入る萩生田光一氏=2021年10月4日午後、首相官邸 写真提供:産経新聞社

萩生田経済産業大臣、脱炭素社会の実現に向けて原発再稼働を表明

新たに就任した萩生田経済産業大臣は2050年の脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーの最大限の導入や、安全性が確認された原発の再稼働などに取り組む考えを示した。

飯田)メディアの見出しを見ると、なかには原発再稼働だけを「ドンッ」と出しているところもありますが、話としては、全体的なCO2削減の流れのなかで言及されたようです。

佐々木)脱炭素のために、再生可能エネルギーだけで賄えるのかという議論なのです。原発再稼働の表明だけを見出しにすると、「原発村から金をもらっているのではないか」という話になりがちで、原発だけが目標のようになってしまうけれど、そうではない。

日本の現状では、再生可能エネルギーだけで100%脱炭素は無理

佐々木)日本の現状では、「再生可能エネルギーだけで100%脱炭素は無理」というのが専門家で共有されている意見ではないかなと思います。これを言うと必ず「いやいや、ヨーロッパやドイツは」と言うのだけれど、ヨーロッパの場合は国がたくさんあって、陸続きだから電力を融通し合えるのです。日本はそれができない。

飯田)できませんね。

佐々木)「中国やロシアから買うのか?」 と。そうすると、今度は経済安全保障の問題になり、エネルギー供給の首根っこを掴まれたらどうするのだという話になります。

飯田)パイプラインで首根っこを掴んでいるロシアと西欧の関係と同じですね。

佐々木)同じになってしまうでしょう。だから日本はエネルギーでは自立するしかない。同時に石油では頼らざるを得ないので、現状はホルムズ海峡やマラッカ海峡の方から運んで来る。

飯田)南シナ海を抜けて。

佐々木)それを防衛しているわけですけれども、原発だけにすれば、この問題も解決するという話なのです。

日本で再生可能エネルギーが難しい理由

佐々木)アメリカの場合は、もちろんシェールガスの存在もありますが、再生可能エネルギーの割合が増えている。ただ、あそこは国土が広いのです。

飯田)日本とは違いますね。

佐々木)太陽光にしろ、風力にしろ、いろいろな土地で足りないときは、どこかから再生可能エネルギーによる電力を持って来ることができる。日本は国土が細長くて、太陽光パネルにしろ、風力発電所にしろ、設備規模が少ないので融通しにくいのです。再生可能エネルギーの最大の問題は、「間欠的であることだ」とよく言われます。

飯田)間欠的?

佐々木)永続的ではなく、間欠的であるということです。風が吹いたり吹かなかったり、太陽が照ったり照らなかったりする。間欠泉の噴水と同じです。

日本で風力発電で電力を賄うには、年間3兆円が必要 ~現実的ではない日本での再生可能エネルギーによる電力供給

佐々木)これをどうやってなだらかにするかという問題ですが、その問題を解決するにはバッテリーしかないのです。蓄電する。

飯田)多いときに貯めておくと。

佐々木)ところが、現状のテクノロジーだと現実的ではない。今年(2021年)の8月にビル・ゲイツが『地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる』という本を出したのです。このなかで原発や再生可能エネルギーについていろいろ検討していて、東京を例に挙げてバッテリーの話を書いているのです。

飯田)東京ですか。

佐々木)東京がすべての電力を風力で賄うことを考えた場合、8月に台風が来るとします。台風が来ると、風力のタービンが回せない。

飯田)風が強過ぎて。

佐々木)停止させますよね。台風が去って再びタービンを動かせるようになるまで3日間ほど空くとしたら、この3日間を風力なし、他の原発や火力もなしで電気を持たせるためには、バッテリーがいくつ必要でしょうか? 何と1400万個必要なのです。

飯田)1400万個!?

佐々木)1400万個のバッテリーが必要なのです。トータルコストは年間270億ドル超。

飯田)270億ドル?

佐々木)年間で3兆円くらいですね。

飯田)270億ドル、3兆円。

佐々木)まったく現実的ではないのです。もちろん未来にテクノロジーが進化し、高性能なバッテリーが開発されてコストが下がれば、それで実現するのかも知れませんが、現状では無理です。

萩生田経済産業大臣「脱炭素社会の実現に向けて原発再稼働」が正しい“これだけの根拠”

行き詰まる核燃料サイクル 青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場=写真提供:共同通信社

萩生田大臣が「原発再稼働」を表明したということは、画期的ないい話 ~ベースロード電源には「火力・石炭・原子力」の3つしかない

佐々木)「ベースロード電源」と言われるような、一定量ずっと発生し続けられる電力は、火力、石炭、そして原子力の3つをやるしかないということです。ただ、石炭や火力はCO2の問題があるし、将来的にはホルムズ海峡を通って行かなければならない。

飯田)地政学的な問題。

佐々木)地政学的な問題もある。マラッカ海峡も中国との関係があるということを考えれば、ある程度は原発に頼らざるを得ないという状況なのだと思います。

飯田)なるほど。

佐々木)日本は「3・11」の事故の印象が強いので、原発がタブー化されてしまっている部分がありますが、萩生田大臣が「原発再稼働」を表明したということは、画期的ないい話だなと思います。

飯田)そうですね。

佐々木)今後やらなければならないのは、原子力発電のテクノロジーの進化です。欧米などでやっているのは「小型モジュール炉(SMR)」と呼ばれているものです。福島第1原発は70年代のものなので、もう半世紀前なのですけれども、いまの原発は小型の格納容器を丸ごと水に沈めてしまう。そうすると全電源が喪失しても、プールのなかに入っているので冷却され続ける。このように、いろいろな方式が出て来ているのですね。

飯田)放射線の遮蔽も水中だと相当減衰するという話です。

原発再稼働と、原発のテクノロジーの進化によって脱炭素は十分可能

佐々木)高市政調会長が総裁選のときに「小型核融合炉の開発を国家プロジェクトとする」と言っていましたが、いずれはこれも可能になると期待されているわけです。原子力のテクノロジーも進化しているので、もう少し財務省は選択と集中をして欲しいと思います。

飯田)そうですね。

佐々木)せっかくお金を集中して使うのだから。ここの期待は大きいと思うのです。六ヶ所村でやっているような、使用済燃料の再処理を行う再処理工場をつくるとか。こういうことをやれば、脱炭素は十分可能ではないかと私は思います。ただし原発再稼働と、原発のテクノロジーの進化によってですが。

欧米では「原発やむなし」とする環境保護運動家が増えている

佐々木)日本では「脱炭素」を言っている人が反原発とワンセットになってしまっていることが多いのだけれど、アメリカやヨーロッパでは、環境保護の運動家のなかで、「原発やむなし」と言う人が増えている印象があります。

飯田)そうですか。

佐々木)「CO2の問題」が最大の課題である。それをクリアするためには、ある程度は原発を容認せざるを得ないという方向に、現実的な切り替えが行われつつあるのです。日本の環境保護運動家は、欧米の状況ももう少しウォッチして欲しいですね。

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