ペロシ米下院議長が台湾訪問した際、米軍が心配する「中国の行動」

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が7月29日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。7月28日に電話によって行われた米中首脳会談について解説した。

ペロシ米下院議長が台湾訪問した際、米軍が心配する「中国の行動」

25日、教師や学生代表との座談会で重要演説を行う習近平氏。習近平(しゅう・きんぺい)中国共産党中央委員会総書記・国家主席・中央軍事委員会主席は25日午前、青年節(5月4日)を前に北京市の中国人民大学を訪れ、思想政治科目のスマート教室、博物館、図書館を視察した。(北京=新華社記者/鞠鵬)=配信日:2022(令和4)年4月26日、クレジット:新華社/共同通信イメージズ

米中首脳会談、習氏が台湾問題でバイデン氏を牽制

アメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席が7月28日、電話で協議した。習氏は台湾問題について「外部勢力の干渉に反対する。火遊びは自らを焼く」と述べて台湾への関与を強めるアメリカを牽制(けんせい)した。一方で両氏は、対話の継続では一致した。

新行)両首脳の対話は3月にオンライン形式で会談して以来とのことで、ワシントン、北京からの共同によると、「中国が軍事圧力を強める台湾情勢をめぐって互いを牽制、応酬となった。気候変動対策や感染症の大流行などに備える『健康安全保障』といった協力できる分野では対話を継続する方針を確認した」とのことです。いかがでしょうか?

宮家)平行線で進展がなかったということです。普通は首脳会談が終わると、5~10ページの分厚い共同声明が出てくるのだけれど、今回はA4のペーパーに12行分しかないです。アメリカのホワイトハウスが出した発表文なのですけれども。

新行)短いですね。

中身がなかった今回の米中首脳会談

宮家)簡単に言うと中身はゼロです。こういうものは、書いていない部分の行間を読むことが大事です。どう書いてあるのかは、裏を読めばいいのです。

新行)裏を読む。

宮家)この発表文には「今回の会談は、アメリカ側の努力の反映です。まずはコミュニケーションを維持し深める努力です」とあります……ということは、今両国間にコミュニケーションがないということですね。それから「両者の違いをマネージする責任がある」……ということは、違いがマネージできていないということです。「アメリカと中国の共通の利益では協力する」……気候変動や健康分野の話です。それはそうなのだけれども、それって大した話ではないでしょう。

大きな問題はペロシ米下院議長の台湾訪問 ~行くことになればクライシスになる可能性も

宮家)最も大きな問題は台湾です。発表文には出てこないけれども、アメリカのペロシ下院議長が5月に台湾に行くはずだったのですが、予定がずれて、いま「台湾に行く、行かない」という話になっています。それに対して中国側はとても怒っているのです。

新行)台湾へ行くということに。

宮家)今回ワシントンへ行ったときに、いろいろなシンクタンクの人に話を聞きましたが、中国側はアメリカ政府だけではなくシンクタンクの人にも働き掛けてきていて、「下院議長が今度、台湾に行ったら大変なことになるぞ。クライシスになるぞ」と言っていたそうです。

新行)クライシス。

宮家)要するに、軍事的な行動を匂わせるようなことも言ったということです。中国はとても怒っています。それはそうでしょう。中国側は党大会の直前なのに、アメリカの要人がわざわざ台湾に行くのですから。

ナンバー3が党大会の直前に台湾訪問することに怒る中国 ~「行かない」ということも間違ったメッセージを送ることになるアメリカ

宮家)ペロシさんは、中国には非常に厳しい人です。下院議長ということは、大統領の次は副大統領、その副大統領が欠けたら彼女が大統領になるわけであり、ナンバー3なのです。中国にすれば、「なぜそんな人が行くのか」と思うわけです。

新行)ナンバー3の人が。

宮家)アメリカの方は、「何を言っているのだ、三権分立を知らないのか」と。大統領が「行くな」と言っても、下院議長は行くときは行くのです。ペロシさんからすれば、ここまで言われて、しかも「フィナンシャル・タイムズ」にも書かれてしまって、もうみんな知っているわけですよね。いまさら中国の圧力で「すみません。では行くのをやめます」などと言えるわけがありません。それもまた間違ったメッセージを送ることになるでしょう。

新行)そうですね。

宮家)というわけで、どちらも降りられなくなってしまっているのです。その問題について、バイデンさんは「何とかしろ」と言われているのでしょう。しかし、いまのところ説得できるような状況ではないのです。

話し合いを続けることが重要

宮家)むしろペローシさんは同僚の議員に「みんなで行こう」と言っているらしいです。このような状況で米中共同声明が出るわけもないし、それは仕方がありません。ただ、両者が話し合いを続けているということ自体が大事です。それはそれで頑張って欲しい。結論は出なくてもいいのですけれども、とにかく話し合いが続いて、「信頼醸成」と言いますが、相手が間違ったことをしないように、お互いに考え方を述べ合って、誤算がないようにすることが大切です。

アメリカ軍が心配する中国の行動 ~戦闘行為に出る可能性も

宮家)中国は今回、何をするかわからないということを、アメリカ軍が若干心配しているのです。下院議長が台湾に行く場合は、当然のことながら米軍機で行きますから。

新行)米軍機で。

宮家)米軍機で直接台湾へ行くというのも、かなり刺激的なのだけれども、そうなった場合は中国軍がインターセプトするか、もしくはエスコートと称して一緒に飛んでいき、着陸を妨害するか。あるいは、台湾の上空で威嚇するなどという可能性もあります。そういう形で牽制するのではないかと言われているのです。

新行)中国機が。

宮家)そうしたら台湾も困るし、アメリカも困ります。下手をしたら戦闘状態になるかも知れないので心配しているのです。バイデンさんは中国側に「アメリカ軍も少し心配している」ということを言って牽制しているのだけれども、ペロシさんがどうするかはわかりません。1つ間違えると、いままでとは違うことになりかねない。

新行)なるほど。

宮家)もう1点だけ言うと、米下院議長の台湾訪問はペロシさんが初めてではなく、1997年にギングリッチさんという当時の議長が行っているわけです。しかし、そのときと今では状況が大きく変わっています。今回の方が中国側の反発が強いという部分だけ、懸念材料ではあります。

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