台湾について「ウクライナの轍は踏まない」ように行動するアメリカ

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数量政策学者の高橋洋一が10月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。「世界民主運動」の世界大会での「中国の圧力に屈しない」という台湾・蔡英文総統の発言について解説した。

台湾について「ウクライナの轍は踏まない」ように行動するアメリカ

【ロ軍に備えるウクライナ兵 南部州編入要請に猛反発】ウクライナ南部ヘルソン州の北方で、ロシア軍の侵攻に備えるウクライナ軍の戦車 2022年5月9日(ゲッティ=共同) 写真提供:共同通信社

台湾・蔡英文総統、中国の圧力に屈しない姿勢を強調

アメリカの非政府組織「全米民主主義基金(NED)」などが主催する「世界民主運動」の世界大会が、10月25日から台湾の台北で始まった。開幕式で挨拶した蔡英文総統は、台湾統一に向けて「武力行使の放棄は約束しない」とする中国の圧力に屈しない姿勢を強調した。

飯田)大会は25日から3日間に渡って開かれているということです。先に行われた共産党大会における習近平氏の演説を受けて、という話でした。一連の流れをどうご覧になりますか?

他派閥をすべて排除した習近平氏

高橋)台湾について「武力行使の放棄を約束しない」とはっきり言いました。いろいろなところで出ていますが、共産党大会が閉幕するときに胡錦濤さんの退出があったのは、放映が入ったあとですよね。

飯田)そのようですね。

高橋)それまでは、ほとんど共産党大会は非公開でした。放映が入ったあとのタイミングで行われたのかも知れないし、習近平さんの権力の誇示かも知れないし、どちらかはわかりませんが、いずれにしてもすごいものを見てしまいましたよね。

飯田)マスコミにオープンの場で行われた。席を立ったのか、あるいは連れて行かれたのか。

高橋)席を立ったとしても、連れて行かれたのだとしても、どちらかの意図ではあったわけですよね。習近平氏が権力を誇示したという見方もできます。

飯田)係員に腕を掴まれて移動していました。

高橋)両脇を後ろから支えられていましたね。日本のマスコミだとすべてを流してはいないのですが、海外ではすべての様子が流れています。それを見るとよくわかります。

飯田)直前にファイルを見て、「何だこれは」という感じの表情になっていました。そして紙を持っていこうとすると、習近平氏側がそれを止めんとする、というようなやりとりでした。

高橋)権力闘争は人事ですから、それが最たるものだと言えばその通りなのだとは思います。そのために、胡錦濤さんは少し異議を唱えたのかも知れません。また、最後の最後まで習近平さんは言わないでいたのかも知れません。どちらにしても明らかなのは、政治局常務委員のメンバーは7人いますが、全員が習近平派です。違う派閥の人が2人~3人残るのではないかと言われていましたが、残りませんでした。

飯田)その下に連なる24人の政治局員のなかにも、首相になるのではないかと言われていた胡春華氏、この方は胡錦濤氏のグループに属すると言われていた方でしたが、そのような方などはまったく入れませんでした。

高橋)完全に排除しましたね。あえて言うと、自民党で閣僚を選ぶときにすべて自派でやるような話ですよね。

飯田)他派閥をすべて排除して政府が回るのか、という話ですよね。

高橋)回るようにしたのだと思います。少なくとも、政治局常務委員のなかで異論がなければそのままいくでしょう。

習近平政権の3期目に台湾に何らかのことをすると予想される

高橋)台湾について武力行使を排除しないということと合わせると、3期目は台湾に何らかの形でいくのではないかと予想するのが普通ですよね。

飯田)これに関してアメリカは、海軍の作戦部長やブリンケン国務長官も「中国は方針が変わったのではないか」と指摘しています。いままでは2027年までに、という話もあったけれど、かなり前倒しされるのではないかと。2022年~2023年という話もあります。

高橋)習近平さんも、もうすぐ70歳になります。私も同じような年齢なのですが、70歳をすぎると判断力や体力が落ちてくるのです。それを段々と感じるようになって、いろいろとやり残したことなどを考えるようになったのではないでしょうか。逆に3期目にこれをやらなかったら、「習近平さんの3期目とは何なのか」という感じです。

飯田)どうして3期もやることになったのか、と。

高橋)3期目のうちにやるという確率は高いと思います。

台湾についてウクライナの轍は踏まないように行動するアメリカ

飯田)危機感が最も強いのは台湾ということですね。

高橋)もちろんそうですね。台湾であれば、中国のなかの権力情報もすぐわかると思います。台湾の対応を見ていると、より中国の態度がよくわかります。

飯田)台湾がアメリカとどのように連携するかというところですよね。

高橋)当面はアメリカと連携する。アメリカとしても、いままでの曖昧戦略から徐々に変えつつあります。安倍さんが言っていましたが、曖昧戦略はもう限界なのではないかという懸念は、まったくその通りだと思います。

飯田)曖昧戦略は。

高橋)台湾に対して武器を供与するのは確実です。そのため、もう少し違うコミットメントも必要になってきます。ウクライナ情勢を考えると、「ウクライナには何もしない」と言ったらロシアが来たので、それをいま恐れているのだと思います。ウクライナの轍を踏まないようにアメリカは行動しているのではないでしょうか。

米・中間選挙がどのような結果でも台湾への支持は変わらないアメリカ

高橋)これは民主党だけでなく共和党も一緒です。中間選挙がどのような結果であっても、この方針は変わらないと思います。議会の方が変わらないのですから。民主党も共和党も同じように、中国に対しては強硬ですからね。

飯田)夏にあったペロシ下院議長の訪台がクローズアップされますが、その前後でアメリカの議会陣も行っていますよね。

高橋)そうですね。2010年代ぐらいから、「中国が脅威だ」ということは一貫して言われています。その懸念が現実化してきていますので、そのような人たちの発言力は議会のなかでも高いと思います。

飯田)民主党、共和党両方の議員などが訪台したりもしていますし、その辺りも見ると。

高橋)政府の方針などは関係なく、議会の方はしっかりしています。

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