「反撃・攻撃する手段」は持っておくべき日本 北朝鮮が繰り返すミサイル発射

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前統合幕僚長の河野克俊氏が11月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。北朝鮮が11月3日に日本海に向けて発射したミサイルについて語った。

【金正恩氏 国際危機さなか核戦力増強】「初級党書記大会」で開会の辞を述べる北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(朝鮮中央通信=共同)撮影日:2022年2月 26日、平壌 写真提供:共同通信社

【金正恩氏 国際危機さなか核戦力増強】「初級党書記大会」で開会の辞を述べる北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(朝鮮中央通信=共同)撮影日:2022年2月26日、平壌 写真提供:共同通信社

北朝鮮がICBMを含む6発を発射、「火星17」は失敗か

北朝鮮は11月3日の朝と晩、弾道ミサイル合わせて6発を日本海に向け発射した。3日午前に大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられる長距離砲を1発、また短距離弾道ミサイルを2発。3日夜には短距離弾道ミサイル3発が発射された。なお3日朝、最初に発射された1発は新型ICBM「火星17」とみられているが、2段目の分離後、正常な飛行に失敗した模様。政府は直後、「全国瞬時警報システム(Jアラート)」でミサイルが太平洋へ通過したとみられると速報したが、その後、訂正した。(※編集部注:この放送の2日後の11月5日にも北朝鮮は、4発の短距離弾道ミサイルを発射した)

北朝鮮が核を放棄する可能性は少ない ~その前提で日本の安全保障を考えるべき

飯田)北朝鮮は連日、長短さまざまなミサイルを発射していますが、どうご覧になっていますか?

河野)北朝鮮は去年(2021年)、「5ヵ年計画」をつくりました。今回のことも、それに向けての実験になります。それから「ビジラント・ストーム」という米韓合同の空軍による演習が行われていますが、それに対するリアクションだと思います。

飯田)一昨日(11月2日)のミサイル発射は「戦術核部隊が行った」というような話もありますが、一部は実験段階から手が離れているところもあるのでしょうか?

河野)あれだけ撃っていることを思うと、短距離については戦術訓練として行っているのだと思います。

飯田)脅威の段階としては相当違いますか?

河野)訓練しているということは、実用化し、なおかつ自分たちが使うということを示しているのです。

飯田)「日本を飛び越えた、飛び越えない」というようなことが言われていますが、こういったことが起きるのは、一部やむを得ないところがあるのですか?

河野)北朝鮮は核を持ち、ミサイルを持とうとしているわけです。日本の安全保障の前提としても、悲観的になってしまうのですけれど、北朝鮮が核を放棄することは可能性としては少ないと思います。

飯田)そのなかで、どう守るかということになってくる。

河野)それを前提として日本の安全保障を考えるべきだと思います。

ウクライナ戦争を見て、核のポリシーを変えた北朝鮮 ~「危機に陥ったときは使う」ということを打ち出している

外交評論家・宮家邦彦)北朝鮮が核兵器を放棄することはまずない。そして、実戦配備の方向で動いているということですか?

河野)そうですね。

宮家)しかも、北朝鮮の技術が上がっているわけです。いままでは「飛んでくるミサイルを撃ち落としましょう」「それで日本の抑止力を高めましょう」ということで日本の安全保障政策は進んできました。しかし、今やそれだけで本当に大丈夫なのか。別の意味で抑止力をもっと高めるなど、敵基地攻撃能力と言うかどうかは別として、その種の議論についてはどう思われますか?

河野)今回のことは、ウクライナ戦争が大きく影響していると思います。ウクライナ戦争は「北朝鮮が核を持つこと」に正当性を与えてしまった。北朝鮮はウクライナ戦争を見て、核のポリシーを変えたのです。金正恩体制が「危機に陥ったときは使うぞ」と打ち出しているわけです。それを我々は深刻に受け止めなければいけないと思います。

「どう守るのか」という議論をするべき ~大量にミサイルを撃たれたら防御できない

飯田)抑止力の部分なのですが、いままでは飛んできたものをある意味「真剣白刃取りできる。だから無駄だ」という議論でしたが、そうではなく、「撃ってきたら報復するぞ」という方向でなくてはならない。しかし、なかなかその議論にはいきません。

河野)いまの日本のミサイル防衛システムでは、レーダーで追尾して解析できれば、相当なレベルで迎撃することはできます。しかし、たくさん撃ってこられたら限界があるわけです。

飯田)大量に撃たれたら。

河野)北朝鮮はいま、大量に撃つような訓練をしているわけですから、やはり守るだけではなく、一歩前に進めて「どう守るのか」という議論をするべきだと思います。

「反撃・攻撃する手段」は持っておくべき日本 北朝鮮が繰り返すミサイル発射

新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」の発射実験に立ち会い、笑顔を見せる金正恩朝鮮労働党総書記(中央)=2022年3月24日、平壌(朝鮮中央通信=共同) 写真提供:共同通信社

反撃・攻撃する手段は持っておくべき ~「使うかどうか」は政治がコントロールすればいい

飯田)「アメリカの巡航ミサイル(トマホーク)を買うべきではないか」という報道も出ていますが、どう備えていけばいいでしょうか?

河野)トマホークも1つの手段だとは思います。要は、「守りだけでは限界がある」ということを認識すべきだと思います。日本国民の命を守らなければならないわけですから、言葉は別にして、ある程度の反撃力・攻撃力は一応持っておくということです。

飯田)持っておく。

河野)それを「使うか、使わないか」については、政治がコントロールすればいいわけです。手段を持っていなかったら、お手上げということになります。それは避けるべきだと思います。

日米韓を重視する方向に向いている韓国政権

宮家)日本の対処能力は高くなければならないと思いますが、だからと言って、移動しているミサイル発射台を攻撃するにしても、いまの段階では限界があります。政策の変更という点で言うと、日米韓の連携をきちんと行う。特に日韓関係をしっかりしなければならないと、私は思います。もちろん今も韓国に対しては不満があり、問題があることは事実ですけれど。今度、国際観艦式に韓国が参加しますが、いかがですか?

河野)例の「レーダー照射事件」が2018年にありましたが、私は当時の統合幕僚長でした。あのときの私たちの判断も、「長々と日韓関係について口論し合っているのはよくない」ということで、こちらが一方的に考え方を示して打ち切ったのです。

飯田)そうでした。

河野)現状、北朝鮮の脅威があるので、もっと高い次元で見るべきだということで打ち切り、「前に進みましょう」と判断したのです。今回、韓国海軍を招くことについて、私は賛成です。

宮家)韓国の雰囲気は変わってきているのでしょうか?

河野)少なくとも政権はそういうインテンションですね。いいとは思っているでしょうが、韓国が観艦式に参加することについても、韓国内で反対があると聞いております。「世論全般がそうなった」とは言いきれませんが、政権は日米韓を重視する方向に向いているのだと思います。

攻撃を受けたときにピンポイントで反撃することは専守防衛の範囲

飯田)対処力に関して議論しようとすると、必ず「憲法9条の戦力不保持」あるいは「専守防衛から踏み出すのではないか」というようなことが言われます。この辺りはどうお考えですか?

河野)要は鳩山元総理が言われた、昭和31年の答弁です。

飯田)鳩山一郎元総理ですね。

河野)まさに撃たんとされているときに、「座して死を待つことが憲法の指し示すところではないだろう」と。それは自衛の範囲に入るだろうということです。他の都市を爆撃するわけではなく、「ピンポイントに攻撃することは専守防衛の範囲だ」という答弁が出ていますから、そういう解釈でいいのだろうと思います。無差別に攻撃するわけではないので。

飯田)自分たちを本当に守るために、ということですものね。

河野)そうです。

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FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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