岸田総理のウクライナ訪問は「ギリギリのタイミング」だった

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筑波大学教授の東野篤子氏が3月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理のウクライナ訪問について語った。

岸田総理のウクライナ訪問は「ギリギリのタイミング」だった

2023年3月21日、共同声明署名式~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202303/21ukraine.html)

岸田総理が帰国、ウクライナ訪問について説明

ウクライナなどを訪問し、首都キーウではゼレンスキー大統領と会談した岸田総理大臣が3月23日、羽田空港に到着した。総理は参議院予算委員会で今回の訪問等の説明を行った。参議院では、27日の本会議でも総理の帰国報告を行う方向で与野党が調整を進めている。

ギリギリのタイミングでのウクライナ訪問だった ~4月になれば戦況が激しくなる可能性も

飯田)岸田総理のウクライナ電撃訪問ですが、どうご覧になりましたか?

東野)ようやく行っていただけたので、まずは胸をなでおろしています。しかし、本当にギリギリのタイミングだったと思います。

飯田)ギリギリというのは、G7サミットを見越してということですか?

東野)G7サミットを見越してですね。ウクライナ情勢に関しては、4月にまた戦況が変わる可能性があります。戦況が危険なときに総理が訪問するのは困難だったと思います。5月の連休という考え方もあると思いますが、そのタイミングだと注目が集まりすぎて行きにくかったのではないでしょうか。

飯田)5月の連休となると。

東野)しかし、5月の連休を逃すとサミットまで時間がないので、もし今回が厳しかった場合、まったく訪問できなかった可能性があります。

侵略の現場であるブチャを自身の目で確認

飯田)今回はインド訪問からチャーター機を使ってポーランドに移動し、キーウ近郊のブチャを視察しました。岸田総理は現場を見て衝撃を受けたということも報道されていますけれど、現場を見ることは大事ですか?

東野)大事だったと思います。キーウだけを訪問するのではなく、「侵略の現場を見たい」というのは総理自身のご意向だったようです。キーウ近郊のブチャやイルピンは、東京都心から千葉や埼玉に行くくらいの距離感であり、近いのです。今回は侵略の象徴的なブチャを選ばれた。

飯田)ブチャを。

東野)現場を見るだけでなく、詳細な説明をウクライナ側から受けたようです。悲惨な写真を何枚も見て衝撃を受けられたようなので、やはり訪問してよかったのではないかと思います。

NATO基金を通じて殺傷能力のない装備品を供与 ~NATOとの協力関係を活かしたもの

飯田)ゼレンスキー大統領と会談し、殺傷能力のない装備品などの支援を表明しました。その辺りの成果はいかがですか?

東野)現時点で日本ができることを上手く表明できたと思います。殺傷性のない装備品というところだけが着目されるのですが、これは日本と北大西洋条約機構(NATO)との協力でもあるわけです。

飯田)NATOの基金を通じて。

東野)NATOの信託基金を通じて支援を行うため、日本からでは直接届けられない部分があるかも知れませんが、NATOを通じて活用していただき、届けなければならないところへ確実に届く支援になると思います。NATOの活用の仕方も、これまで岸田外交が目指してきた日本とNATOの協力関係を最大限に活かしたものだと思います。

ロシアもウクライナも停戦の意向はない ~終着地点は見えない

第一生命経済研究所首席エコノミスト・永濱利廣)ロシアによるウクライナ侵攻の今後の展望ですが、停戦の可能性はあるのでしょうか?

東野)今年(2023年)中に停戦になる可能性は低いと思います。ロシア側にもウクライナ側にも停戦の意向がないからです。中国が和平案を携えて和平交渉に出るのではないかという憶測もありましたが、中身を見ると、とても和平案とは言えないものです。

飯田)和平案とは言えない。

東野)もし和平案を出すのであれば、もっと具体的だと思いますし、ウクライナ側の要望も勘案するべきだったと思います。「こういうことをやったらいい」という内容を連ねているように見えますが、(ロシアへの)制裁反対など、中国の言いたいことを織り込んだだけです。私は本気でやるつもりはないと思っています。

飯田)本気でやるつもりはない。

東野)ロシアは戦争を長引かせ、誰も戦争に関心を持たない状況にして、自分の領土をできるだけ確保したい。最終的には、ウクライナを属国化したいと思っているのではないでしょうか。残念ながら終着地点はいまのところ見えません。

クリミア侵攻が「悪しき成功体験」となっているロシア ~攻め込めば領土を手に入れられる

飯田)ロシアが望む状況は、2014年にクリミアや東部ドンバスへ不当に侵攻し、占領した状況を再びつくり出したいのでしょうか?

東野)おっしゃるとおりです。クリミア侵攻が不幸な成功体験になっていると思います。だからこそ、ロシアの「攻め込めば何とかなる。国際社会にそこまで怒られずに他国の領土を手に入れられる」という前例を、これ以上つくってはいけないのです。

きらびやかなクレムリンでの中露首脳会談の最中にブチャを訪れた岸田総理 ~そのコントラストが国際社会に与えた影響は大きい

飯田)習近平主席がロシアを訪問し、プーチン氏に会うタイミングで、岸田総理はウクライナに行った。このコントラストが国際社会に与えた影響は大きいのではないでしょうか?

東野)必ずしも狙った効果ではないと思いますけれど、国際社会にとってのインパクトは大きかったと思います。岸田総理は吹きさらしのブチャに行き、被害に遭われた方に花を手向けた。その一方で、習近平主席とプーチン大統領はきらびやかなクレムリンで会談を行う。このコントラストは非常に大きかったと思います。

飯田)そうですよね。

東野)「アメリカと日本は自由側」、「中国は戦争犯罪側」に立つという見方を示している方もいます。今回の訪問で「日本がどちらに立つのか」がはっきりしたことは大きな成果だと思います。

G7で核不使用に向けたメッセージを

飯田)今後、議長国として開催するG7サミットもありますが、日本が出すべきメッセージはどんなことでしょうか?

東野)岸田総理は核軍縮や核の不使用に向けたメッセージを発信したい。つまり「プーチン大統領がこの戦争で核を使うかも知れない」と暗に示しているわけです。「核を使用するような戦争の仕方は、21世紀には許されないのだ」ということを広島から発信するのは大事なことだと思います。

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