音楽にまつわる雑学を楽しむコラム【ザツオン】
今日はその第3回目

拝啓、ボブ・ディランさま。
「ノーベル文学賞」受賞おめでとうございます！

1941年 ミネソタ州ダルース出身。
1961年の冬、ニューヨークへやってきた青年は翌1962年2月にレコードデビュー。
グラミー賞/アカデミー賞など数々の賞を受賞して1988年「ロックの殿堂」入り。
2008年「ピューリッツァ賞特別賞」を受賞。
そして、2016年の75歳でNobel Prize winning！！
そんなわけで今回の『ザツオン』はボブ・ディランです。
でも、音楽や歌詞について書くのは余りにも恐れ多いのでもうひとつのディラン先生についてトーキンアバウトっす。

2010年11月、ボブ・ディラン絵画展が六本木で開催されたことを思い出しました。
2007年に初個展がドイツで開催され、その後、世界各地で大好評のなか展開された『BOB DYLAN THE DRAWN BLANKS』！
1989年～1992年のツアー中に描きためていたスケッチにその後、水彩などで彩色した約300点の中から40点ほどが来日展示されたと記憶しております。
風景画や静物画や肖像や裸体など独特のタッチでした。
1960年代、ディランはニューヨーク/メトロポリタン美術館でポール・ゴーギャンの絵画をよく鑑賞していたそうですね。
そんなことを知ると彼の後期印象派なタッチも納得出来ます。
なかでも個人的に印象深かったのは赤い空に黒い雲、そして敷石も赤い線路の絵！
大きさ122×92cmのビッグサイズな作品は約3,900万円（！）という価格でしたが、さてさて、ドナタかが購入されたのでしょうか？！
線路絵画「Train Tracks」はシリーズ作品で青い空、緑の空やオレンジな空などの作品があります。
『BOB DYLAN THE DRAWN BLANKS』公式サイトでぜひ、ご鑑賞してみて下さいませ。

後年リリースされたキリスト教に転向で宗教色モリモリの『スロー・トレイン・カミング』（1979年）でも伺えるようにディラン先生にとって機関車/線路というモチーフは「人生いろいろ」「神への道程」そのものなのでしょう、ふむふむ。
ゲスト参加のマーク・ノップラーの渋いギター技が冴え渡り、このアルバムでグラミー賞男性ロック・ヴォーカルを獲得でした。
さて！ボブ・ディラン画伯の絵が世間に知られるようになったのはザ・バンドのデビューアルバム『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』（1968年）！

ジョン・サイモンのプロデュースワークでロビー・ロバートソン作「トゥ・キングダム・カム」「ザ・ウェイト」やディラン作のB面ラス曲「アイ・シャル・ビー・リリースト」など永遠名曲が収録された歴史的名盤ですねぇ、しみじみ。
その2年後、29歳のディラン画伯は自画像を自らの10枚目アルバムに採用いたします！
タイトルもズバリ！『セルフ・ポートレイト』（1970年）です。

ディラン初の全米1位を獲得した2枚組アルバムはオリジナル・ソングの他にトラディショナル・ナンバーやリチャード・ロジャースとロレンツ・ハートによるスタンダードの超ロマンシーな名曲「ブルー・ムーン」、
サイモン&ガーファンクルの「ザ・ボクサー」、エヴァリー・ブラザーズやゴードン・ライトフットなど、先生の音楽好みを伺い知ることが出来るカバー選曲も素敵！
そして！その4年後アルバム絵画はピカソ風でしょうか？
14作目『プラネット・ウェイヴズ』（1974年）です！

こちらも全米1位でゴールドディスクな名作です。
絵に描かれたマークや文字の謎解きが楽しいっすね！
ザ・バンドの5人を従えて「フォーエバー・ヤング」を名唱！
そして、次なる自筆絵画ジャケットは通算68作目兼ブートレッグ・シリーズ第10弾の『アナザー・セルフ・ポートレイト』（2013年）！
1970年の『セルフ・ポートレイト』から43年後の71歳でリリースされた“アナザー”です。
1969～71年の幻セッション音源をド～ンと77曲！
シンプルな配色、黒い背景でグッと重厚感を増しました。
なんだかコチラのココロを見られている気がします。
勝手に連作絵画と考えると色々な妄想拡大して愉快です！

ディラン画伯の言葉です。

人生の大半をスケッチした。
ノートやナプキンや下書き用紙や段ボールに。
あるときは皿やコーヒーポットに書いたこともある。

ある日は言葉として、ある日は絵画として、その人生を。
ジャンルにとらわれない才能。
ボブ・ディランという稀有な天才と私たちが移り変わる時代で同じ風に吹かれて生きる幸福を感じてやみません。

音楽のもうひとつの楽しみ方を暗中模索な『雑学と音楽 ザツオン』！
第3弾いかがでしたでしょうか？ 次回もお楽しみに♪

神部恒彦（a.k.a 北大路おさんどん）
1960年北海道生まれ。
1981年「オールナイトニッポン」のADとして放送業界で活動開始。
音楽やドキュメンタリーを中心としたテレビ・ラジオの構成/選曲を担当する。
1992年いったん全ての仕事を終了してシベリア鉄道で渡欧。
1年間に渡りフランス/スペインを拠点に欧州各国の景勝地や美術館を見て回る。
さらに渡米、自動車でアメリカ大陸を横断しながら様々な音楽聖地を巡って帰国。
幅広い音楽/雑学知識と好奇心でジャンルを問わない番組/イベント構成を手がける。
趣味：大相撲/F-1観戦、全国各地の居酒屋訪問と見知らぬ人々との会話。