45年前の8/7吉田拓郎の「旅の宿」がオリコン・チャート1位を獲得【大人のMusic Calendar】

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中学1年の終わりごろに「シー・ラヴズ・ユー」を聴いたのが最初の出会いで、初めて聴いた時はB面の「アイル・ゲット・ユー」のほうが良かった――。「ビートルズとの出会いは?」と訊かれるたびに、こんなふうに答えている。でも、最初に買ったレコードは何かと訊かれたことはまだない。

小学校に上がる前の昭和40年代前半、西暦で言うと1960年代半ばに、テレビ主題歌を収めた朝日ソノラマのソノシートを買ってもらった記憶はある。たとえば『ウルトラマン』『キャプテンウルトラ』『ゲゲゲの鬼太郎』『もーれつア太郎』『あしたのジョー』などだ。同じ時期に『リボンの騎士』や『マッハGoGoGo』『マイティ・ジャック』などの主題歌の入ったLPを家でよく聴いていたことも覚えている。思えば、そんな主題歌を聴いていた時に、ビートルズが日本にやって来たわけだ。

当時は歌番組もたくさんテレビで放映されていたから、GSや歌謡曲も自然に覚えた。「もりとんかつ、いずみにんにく、かーこんにゃく、まれてんぷら…」とジャッキー吉川とブルー・コメッツの「ブルー・シャトウ」の替え歌を口ずさんでいたのもその頃のことだ。4つ目の歌詞に「…まれてんどん」というのもあったと知ったのは、中学以降のことだったと思うけれども。

そして小学5年生の時に、初めて自分でレコードを買った。買い物ついでに地元のレコード屋に行き、なぜ「それ」にしたのかも、なぜ買おうと思ったのかも忘れてしまったけれど、手にしたのは、よしだたくろう(当時の表記)の「結婚しようよ」と「旅の宿」。自分でお金を払う、ということがたぶんなかったからだろう、その時の光景は今でも忘れられない。

CDジャーナル在籍時の2008年に浜野智さんと『吉田拓郎読本』という書籍を作ったが、その時に改めて発売日を調べてみたところ、「結婚しようよ」は72年1月21日で、「旅の宿」は72年7月1日だということを知った。ビートルズに関しては発売日にも興味や関心が高かったのに、それ以外はそうでもなかったのかもしれない。「旅の宿」は8月7日にオリコン・チャートで1位になったというから、どこかで耳にして気に入り、出てまもなく購入した、ということだったんだと思う。吉田拓郎が「ビートルズが教えてくれた」をまだ発表する前の出来事だ。

そのシングル2枚を手に入れ、それほど日が経っていない時期に、同じレコード屋で『元気です。』を買った同級生がいた。どんな「表紙」か休み時間に訊いてみたら、こんな返事だった。
「まだ封を開けていないからわからない」。
「あれ? 見て買ったんじゃないの?」

こういう他愛のないやりとりは、いつまでも忘れないものだ。そして別の同級生がその年の秋か冬ぐらいに『元気です。』を買ったというので、聴かせてもらいに行った。ビートルズよりも先によしだたくろうに興味があったというのは、今思うとちょっと不思議な気がする。人の家でレコードを聴いたのもそれが初めてのことだった。翳りのある「表紙」もその時初めて見た。そして並んで聴いているうちに、ふと思った。
「あれ? 〈旅の宿〉が、持ってるシングルとは違う」

いわばサイモンとガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」みたいなものだということも後で知ったが、別ヴァージョンに興味を持ったのは、それが最初のきっかけだったのだろうか。ついでに言えば、「結婚しようよ」と「旅の宿」よりも、B面の「ある雨の日の情景」と「おやじの唄」になぜか心惹かれたのも、「アイル・ゲット・ユー」に惹かれたのと同じく"B面好き"の始まりだったのかもしれない。ちなみに、よしだたくろうで最も好きな曲は、小学校卒業間近に「ツッパリ」の知り合いが気前よくくれた「おきざりにした悲しみは」のB面に収録された「花酔曲」である。
よしだたくろう「結婚しようよ」「旅の宿」「元気です。」写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト
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【筆者】藤本国彦(ふじもと・くにひこ):ビートルズ・ストーリー編集長。91年に(株)音楽出版社に入社し、『CDジャーナル』編集部に所属(2011年に退社)。主な編著は『ビートルズ213曲全ガイド』『GET BACK...NAKED』『ビートル・アローン』『ビートルズ語辞典』など。映画『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK』の字幕監修(ピーター・ホンマ氏と共同)をはじめビートルズ関連作品の監修・編集・執筆も多数。


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