2005年に第29回日本アカデミー賞、計12部門の最優秀賞を受賞、のちにシリーズ化され、3作総興行収入112億超の大ヒット記録を樹立した『ALWAYS 三丁目の夕日』。そのチームが再集結して制作された最新作『DESTINY 鎌倉ものがたり』が2017年12月9日(土)に全国公開される。

11月7日(火)には全国公開に先駆け、東京国際フォーラム・ホールCで開催されたワールドプレミアにて、キャストの堺雅人、高畑充希、堤真一、安藤サクラ、田中泯、中村玉緒、要潤、神戸浩、鶴田真由、吉行和子、三浦友和、そして山崎貴監督による舞台挨拶が行われた。

累計発行部数950万部を超える西岸良平のロングセラーコミック『鎌倉ものがたり』を実写映画化した本作。人間だけでなく、道を歩けば魔物、幽霊、妖怪、死神などが現れる古都・鎌倉で暮らすミステリー作家・一色正和役で主演を務めた堺は、この日、無事ワールドプレミアを迎えられたことに「完成してよかったー！」と叫んで、喜びを伝えた。

実はワールドプレミアが開催されるギリギリまで編集作業が進められていて、数週間前まで、ほぼ未完成の状態だったことから、最悪の場合、このワールドプレミアでは、山崎監督の謝罪からスタートする可能性もあったと話す堺に、観客からは驚きの声があがっていた。

その一方、一色正和の元に嫁いだ、妻の亜紀子役を演じる高畑は、撮影時には何も無い場所で演技していたものが、実際に出来上がった映像ではVFXにより、想像を超えるクオリティに仕上がっていたことから、完成した映画を観た時に「すげ～！」という、ため息混じりの感想を漏らしたという。

この他にも出演者と監督からは、様々な撮影時の裏話が語られた。

今作はタイトルにもあるように、鎌倉での撮影が行われたのだが、撮影された時期が真冬だったため、堺が寒さを防ぐために、衣装の下に120個ものカイロを貼っていたという話には、観客からどよめきが。すかさず高畑が「あのシーンを見ながら、”あ、カイロ120個だ”って絶対なっちゃう」とツッコミを入れると、山崎監督が「忘れましょう！」とフォローを入れて笑いを誘った。

また、江ノ電を貸し切ってのシーンでは、電車のダイヤの関係で2回しか撮影チャンスが無く、その緊張感から、全員が甘噛みになってしまったと話す要。しかしこの件に関しては、堺にも言い分があるようだ。

実は、撮影直前に堺による長台詞の中の「18分」という表現が「19分」に変更され、山崎監督は『堺は長台詞が得意だから1分変わっただけ』と思っていたそうだが、堺にとっては大事件だったらしく、時間も無いままにそのまま撮影に突入。絶対に間違えられない撮影＋急遽変更された台詞により、堺がすさまじい緊張感を放ち、それが要達にも伝わって、全員が甘噛みとなってしまう状態が引き起こされたのだという。

そして最後に、これから映画を観る人へ向け、高畑からは「誰にでも勧められる」「とても好きな作品」堺からは「初めて台本を読んだ時、素敵な絵本をめくるような気持ちで台本を読みました」「好きな本のページをめくるような気持ちでゆっくり時間をお過ごしください」と、主演の2人からメッセージが送られ、舞台挨拶は無事幕を閉じた。

舞台挨拶後には試写会が行われたのだが、上映後の東京国際フォーラムの出口では、涙で目を腫らした若い女性、VFX技術の凄さについて語る年配の男性、「脚本について色々話したいから喫茶店行こう！」と笑顔で話すカップルなど、堺の言葉を借りるなら、この作品によって“好きな本のページをめくる”ような気持ちになった人たちで溢れているようだった。

映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』

＜あらすじ＞
DESTINY = 運命とは？
鎌倉に暮らすミステリー作家・一色正和（堺雅人）のもとに嫁いだ年若い妻・亜紀子（高畑充希）はその生活に驚くばかり。道を歩けば、魔物や幽霊、妖怪や仏様、死神（安藤サクラ）までも現れるのだ。どうやらここ鎌倉は、人と人ならざるものたちが仲良く暮らす街らしい。

本業の小説執筆に加え、鎌倉署の捜査にも協力する夫・正和は、その上、鉄道模型収集やら熱帯魚飼育やら多趣味でもあり忙しい。そんな一色家には、実年齢130歳? の家政婦・キン（中村玉緒）、腐れ縁の編集担当・本田（堤真一）、果ては貧乏神（田中泯）が居座るなど個性豊かな面々が次々に現れ騒がしい日々。亜紀子の理想とはちょっと違うけれど、楽しい新婚生活が始まった。

しかし、正和には亜紀子に隠していた秘密があった。その秘密が原因で正和は結婚に疑問を感じて生きてきたようだ。正和はなぜ亜紀子を見初めたのだろうか？ある日、病に倒れた正和が目を覚ますと、亜紀子の姿が消えていた。夫への愛にあふれた手紙を残して――。なんと亜紀子は不慮の事故で亡くなっており、黄泉の国（あの世）に旅立っていたのだった。失って初めて気づく妻・亜紀子への愛。正和は亜紀子の命を取り戻すため、一人黄泉の国へ向かう決意をする。そこで彼を待っていたのは、亜紀子を黄泉に連れさった魔物たちとあの人の姿・・・・・・。

一色夫婦の命をかけた運命が、今動き出す。

出演：堺雅人、高畑充希、堤真一、安藤サクラ、田中泯、中村玉緒、市川実日子、ムロツヨシ、要潤、大倉孝二、神戸浩、國村隼、古田新太、鶴田真由、薬師丸ひろ子、吉行和子、橋爪功、三浦友和 ほか

主題歌：宇多田ヒカル『あなた』
監督：山崎貴
原作：西岸良平
脚本：山崎貴
配給：東宝
公式サイト：http://kamakura-movie.jp

取材・文：関口勇斗
写真：allnightnippon.com 編集部 岩永史弥