光GENJI『パラダイス銀河』 昭和ジャニーズの最後を飾る
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第1回 光GENJI『パラダイス銀河』
最近、ますます加熱するアナログ盤ブーム。そしてシングル盤が「ドーナツ盤」でリリースされていた時代=昭和の楽曲に注目する平成世代も増えています。
子供の頃から歌謡曲にどっぷり浸かって育ち、部屋がドーナツ盤で溢れている構成作家・チャッピー加藤(昭和42年生)と、昭和の歌謡曲にインスパイアされた活動で注目のアーティスト・相澤瞬(昭和62年生)が、ターンテーブルでドーナツ盤を聴きながら、昭和の歌謡曲の妖しい魅力について語り合います。
チャ:『しゃベル』読者のみなさま、半年間のごぶさたです。チャッピー加藤です。
相澤:はじめまして、シンガーソングライターで、「プラグラムハッチ」というニューウェーヴ歌謡曲バンドと、「ニュー昭和万博」という歌謡曲カバーバンドでギターとボーカルをやってます、相澤瞬です。
チャ:これまで1年半ほど、昭和の歌謡曲についてコラムを書かせてもらいましたが、一人で書いてると、だんだん煮詰まってくるんですよ。そしたら最近、ひょんなキッカケで瞬くんと知り合って、「これはきっと『一緒にやれ』という歌謡曲の神のお告げだ」と。
相澤:スピリチュアルですね!(笑)ご指名本当にありがとうございます。大好きな歌謡曲の世界に携われて感無量でございます……。
チャ:瞬くんは、生まれたのはギリギリ昭和なんだよね?
相澤:はい、昭和62年(1987)生まれです。バブルまみれの産湯で洗われた「昭和最後の世代」です(笑) 。
チャ:じゃ、物心ついたときはもう平成で、リアルタイムな昭和の記憶はないわけだ。
相澤:そうなんですよ。昭和の歌謡曲に関しては、TVで当時の映像を観て「なんだコレは?」とハマっていったんです。
チャ:なるほど。……最近、平成育ちなのに、ものすごく昭和っぽい楽曲を書くアーティストがいるじゃない。瞬くんもその一人だけど、昭和の歌謡曲をどんな感覚で聴いて、どんなところに影響を受けてるのかなーと、前から訊いてみたかったんだよね。
相澤:自分は逆に、リアルタイムで聴いてた方の話が聞きたいです!
チャ:美しい補完関係だなー(笑)。じゃ、さっそく始めますか。
■大人は見えない「コロンブス」
チャ:きょうは記念すべき第1回ということで、瞬くんのツテで、銀座のスナックを借りてるんですが、しかしよく借りられたね?
相澤:ここ、友達のお母さんが経営してるんです。撮影で借りたことがあって。
チャ:水割り作ってくれるおネエさんもほしいなぁ(笑)。さて、最初に取り上げるシングルですが、瞬くんのリクエストでこの曲にしました。
チャ:光GENJI『パラダイス銀河』! 1988年3月9日発売のサードシングルで、作詞・作曲は飛鳥涼。公称ミリオン、光GENJI最大のヒット曲だけど……瞬くん、なぜこの曲を?
相澤:この曲、僕と「学年が一緒」なんです! 当時は生まれたてで当然自我もないので(笑)、後追いで知ったんですけど、なんか縁を感じちゃって。
チャ:最初に聴いたのはいつ?
相澤:TVの懐メロ番組ですかね。ローラースケートを履いて歌うって、「なんだコレは?!」と。
チャ:自分は当時大学生で、TVで観て「なんだコレは?!」と衝撃を受けたんだけど、その衝撃って、後追いでもおんなじだよね。
相澤:そうなんですよ! しかもこの曲、ウルトラキャッチーで、聴いててすごく歌いたくなるんです。今は自分のライヴでもよく歌ってます!
チャ:じゃ改めて、ドーナツ盤で聴いてみますか。(♪ターンテーブルで演奏開始)……改めて聴いてみて、どう?
相澤:まず、いい意味での「ダサさ」を感じますね。これはdisってるんじゃなく、突き抜けてますよね。「カッコ良すぎない」って大事だと思うんです。
チャ:あー、なるほど。よく考えたら「光GENJI」ってグループ名も、「ダサい」よね。だってモトは『源氏物語』、紫式部だよ。
相澤:普通の感覚じゃ出てこないですよね。だけど強引に命名して、アイドルグループの名前として定着させちゃったのがすごい。
チャ:その「いい意味でのダサさ」って、楽曲面ではどんなところに感じる?
相澤:やっぱり、歌詞にあるコロンブスっていうパワーワードですね。これ、めちゃくちゃインパクトないですか?
チャ:確かに、なかなか浮かばないワードだよなー。いくらコロンブス(=欲にまみれた大人)がしゃかりきになって探しても、「大人は見えない」し「夢の島まではさがせない」んだよね。
相澤:ネバーランド感がありますよね!
チャ:あるねー。てか、「パラダイス銀河」ってタイトルも、まさにネバーランドそのものだよね。「銀河」なんて、歌詞のどこにも出てこないんだけど「そうか、本当の楽園は宇宙にあるから、大人には見えないのか!」と、ヒザを打つわけですよ。
■「光」+「GENJI」=「光GENJI」
相澤:あと、これも後から知ったんですが、光GENJIって、「光」+「GENJI」なんですね。
チャ:そうそう、年長の2人(内海光司・大沢樹生)が「光」で、年少の5人(諸星和己・佐藤寛之・山本淳一・赤坂晃・佐藤敦啓)が「GENJI」なんですよ。
相澤:その「GENJI」の5人の初々しさというか、歌唱力もまだ危ういところが、ますますネバーランド感を醸し出してますよね。
チャ:そこなんだよね。飛鳥涼という人は根がすごくピュアな人だと思うんだけど、だからこういう純粋な詞が書けたわけで、当時のGENJIたちの声質にぴったりシンクロしてる。彼に依頼したジャニーさんの慧眼もおそるべしだけど。
相澤:ところで、B面の「LONG RUN」って曲も気になりますね。
チャ:これはね、「光」の二人がメインで歌ってるんだけど、ちょっと聴いてみよう。(♪ターンテーブルで演奏開始)
相澤:あー、こっちはA面とうってかわって、硬派ですね。
チャ:これは作曲がCHAGEなんだけど、男闘呼組みたいだよね。だけど途中から「GENJI」の5人がコーラスで乗っかってきて、ハモるというより、主役奪っちゃうの(笑)。
相澤:あ、ホントだ(笑)。……なんか、年長者の悲哀を感じますね。
チャ:この「光」+「GENJI」っていうグループ内グループの構図って、のちのV6の「カミセン」+「トニセン」に通じるじゃない。
相澤:確かに。原型になってますね。
チャ:平成になって、光GENJIが最初に出したアルバムのタイトルが『Hey!Say!』で「ダジャレじゃん!」って当時ひっくり返った記憶があるけど、それが「Hey!Say!JUMP」に継承されてたり、光GENJIって、後輩グループにけっこう影響を与えてるんだよね。
相澤:キスマイ(Kis-My-Ft2)もローラースケート履いて歌ってますもんね。
チャ:そうそう。「ああ、歴史はこうやって受け継がれていくんだな」と、つい目頭が熱くなったりして(笑)。
相澤:昭和と平成の橋渡しをしたわけですね。
チャ:1988年って、昭和→平成と同時に、ドーナツ盤からCDへ移る転換期でもあるんだよね。この曲はCDシングルも同時に出てたんだけど、そんな節目の年に『パラダイス銀河』がレコード大賞を獲ったのって、すごく象徴的だと思うなー。
相澤:昭和を締めくくった曲でもあるんですね。
チャ:そう。まとめると、「光GENJIは、昭和ジャニーズの最後を飾ったと同時に、平成ジャニーズのひな型を作った重要なグループである」という結論で、相澤先生、どうでしょう?
相澤:異議なし!(笑)さすがチャッピーさん!……でもまだまだ話足りないんで、次回も光GENJIでやりませんか? もう一曲、ぜひ話したい曲があるんです!
チャ:ああ、「ガラ十」ね。私も異議なし(笑)。じゃ来週もよろしく。
……次回は、光GENJI『ガラスの十代』について二人が熱く語ります。
お楽しみに!
【チャッピー加藤/Chappy Kato】
昭和42年(1967)生まれ。名古屋市出身。歌謡曲をこよなく愛する構成作家。好きな曲を発売当時のドーナツ盤で聴こうとコツコツ買い集めているうちに、いつの間にか部屋が中古レコード店状態に。みんなにも聴いてもらおうと、本業のかたわら、ターンテーブル片手に出張。歌謡DJ活動にも勤しむ。
好きなものは、ドラゴンズ、バカ映画、プリン、つけ麺、キジトラ猫。
【相澤瞬/Shun Aizawa】
昭和62年(1987)生まれ。千葉県出身。懐かしさと新しさを兼ね備えた中毒性のある楽曲を、類い稀なる唄声で届けるシンガーソングライター。どこまでもポップなソロ活動、ニューウェーヴな歌謡曲を奏でる「プラグラムハッチ」、 昭和歌謡曲のカバーバンド「ニュー昭和万博」など幅広く活動。
好きなものは、昭和歌謡、特撮、温泉、うどん、ポメラニアン。