柳亭小痴楽~読み物に例えるならば「落語は小説」
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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に落語家の柳亭小痴楽が出演。落語の魅力について語った。
黒木)今週のゲストは落語家の柳亭小痴楽さんです。いま、どれくらいの噺が頭のなかにあるのですか?
柳亭)100はないぐらいですね。「いますぐ演って」と言われると、20~30くらいしかできませんが。これはかなり少ない方です。私はキャリアが15年くらいあるのですが、普通だと120~150くらいは皆さん覚えていて、おやりになると思います。噺は師匠に「教えてください」とお願いして、1対1で教えてもらいます。覚えたら見てもらい、師匠に「やっていいよ」と言われて、ようやく人前でできるのです。
黒木)師匠に見せて「いいよ」と言われ、初めてお客様の前で、その噺ができるのですか。
柳亭)勝手にやってはいけないのです。それがプロと素人の違いで、礼儀があります。それでも私くらいのクラスでは、150席ほど持っているのではないかと思います。
黒木)落語の魅力は、「笑わせるだけが落とすことではない、話を飲み込ませるのが落とすことだろう」と。
柳亭)漫才・コントと落語は、お笑いというカテゴリでは一緒なのですけれども、読み物のカテゴリにも本や漫画があるように、落語は小説と同じで、言葉を聞いて想像し、頭に絵をつくって行く。コントや漫才は、見せて楽しませてくれるので漫画に近いです。どちらも楽しめる読み物なのです。頭を回す、自分の脳を回すという意味で、落語の楽しみ方はそうなのかなと。一席聞くと、脳がよい疲れ方をしていると思います。15年ほど落語をやっていますが、3席連続は聞けません。3席目で疲れて集中力が切れてしまい、どんなに面白い師匠の落語でも、お腹いっぱいになってしまって、途中から聞こえていないのです。出て来る登場人物の風景、時代などが古典落語の魅力ですね。新作落語は新作落語で、いまの感性を想像させてくれるため、大好きです。昇太師匠の新作落語はとてもわかりやすく、考えずに笑えます。志の輔師匠の方は、考えて笑える。新作でもいろいろあります。どれが好きなどではなく、落語はいいなという気持ちになります。
黒木)いろいろな楽しみ方があるということですね。
柳亭)仲間外れにしないのですよ。与太郎というバカなキャラクターがいるのですが、普通なら町内で「ちょっと吉原に行こう」というとき、「与太郎はバカだからいいよ」となるような場面でも、与太郎が「俺も行く」と言うと、「本当か。奥さんを言いくるめられるか、待っているからな」と。奥さんも「あなただけのけ者にされるのは冗談じゃない、行ってきなさい」と言って、奥さんがお金をくれるのです。みんなが与太郎の味方をするというか、どうにかそいつを生かしてやろうという、助け合う感じが好きです。「ザ・滑稽話」なのですが、そのように見ると本当に人情があって、好きになりますね。
柳亭小痴楽(りゅうてい・こちらく)/落語家
■1988年12月、5代目・柳亭痴楽の次男として誕生。本名:沢辺勇仁郎。
■2005年10月、16才のとき、入門を申し出た途端に父が病に伏したため、2代目・桂平治(現:桂文治 )へ入門。「桂ち太郎」で初高座。
■2008年6月、父(痴楽)の門下に移り「柳亭ち太郎」と改める。
■2009年9月、父(痴楽)の没後、父の弟弟子・柳亭楽輔の門下へ。
■2009年11月、二ツ目昇進を期に「3代目 柳亭小痴楽」を襲名。その後、二ツ目の若手落語家と講談師11人によるユニット「成金」を結成。メンバーには講談師の6代目 神田伯山ほか、昔昔亭A太郎・瀧川鯉八など。
■2011年2月、「第22回 北とぴあ若手落語家競演会」奨励賞を受賞。
■2015年、2016年と2年連続「NHK 新人落語大賞」ファイナリスト。
■2019年9月、真打に昇進。同時に6代目・柳亭痴楽襲名の話もあったが襲名せず。
■ユニット「成金」については、メンバーの誰かが真打になったときに終了するとされていて、小痴楽の真打昇進前日の2019年9月20日に終了。全メンバーが出演する年末開催の「大成金」は継続。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳