アニメ「昭和元禄落語心中」をきっかけに、アニメファンの間で広がった「実際に落語を観てみたい」という声に応えるイベント「声優落語天狗連 Supported by 昭和元禄落語心中」の五回目公演が、昨日7月23日(土)に浅草東洋館で開催された。
この「声優落語天狗連」は、落語研究会出身のニッポン放送アナウンサー・吉田尚記と、アニメ好きにして落語研究会出身の学者芸人・サンキュータツオがダブルMCを務め、過去に4回実施されている。
前回に引き続き、浅草東洋館での開催となった第五回。まずはメインMCの2人による「アニメ×落語談義」からスタートした。
会場には、約250人のお客様が集まり、満席の客席は熱気十分。
互いに落語研究会出身で、アニメを愛する共通点がある2人。落語の楽しみ方だけではなく、アニメの例えなども引用しながら、テンポよくトークを繰り広げていく。大学での教鞭もとるサンキュータツオの落語解説に、場の空気はどんどん温まっていった。
そして、目玉企画である「声優落語チャレンジ」の時間に。これまで声優の石井マーク、阿座上洋平、古川慎が「初めての落語」に挑戦してきた人気企画。
今回、挑戦した声優は、『弱虫ペダル』の鳴子章吉 役や、『アクエリオンEVOL』のジン・ムソウ役などで知られる人気声優 福島潤。
ちゃんとした着物を着るのも初めてだったという福島潤は、立川志ら乃師匠の指導で1ヶ月みっちり鍛えた落語「反対俥」を披露。
心配もなんのその。客席を前にした福島のペースはどんどんとあがり、会場は笑いっぱなし。やりきった後、高座に崩れ落ちた福島潤の姿と汗に、心がぐっとつかまれた。
そして、アニメ「昭和元禄落語心中」の劇中で語られる落語を中心に、プロの落語家が実際に口演する人気コーナーへ。「声優落語天狗連」ではこれまで、入船亭扇辰師匠「鰍沢」、立川志ら乃師匠「時そば」、春風亭一之輔師匠「居残り左平次」、隅田川馬石師匠「野ざらし」が披露され、会場を沸かせてきた。
今回披露してくれるプロの落語家は瀧川鯉斗。二ツ目の落語家だ。これまで登場した真打ではなく、今回初めて二ツ目の落語家を起用した。その理由は、リピーターも増えたイベントで、これから一緒に育っていきたいというMC2人の願いがあったからだ。
瀧川鯉斗は、和服で高座にあがる前に、私服姿も公開。
サンキュータツオは瀧川鯉斗について、「めちゃめちゃイケメンでしょ。名古屋の元暴走族の総長だったのよ」と語り、会場中を驚かせた。落語に出逢い、その魅力に惹かれて落語界に飛び込んだ、まさに「昭和元禄落語心中」の話にも通ずるようなそんな男だ。
披露したのは『紺屋高尾』。花魁の最高位である「高尾太夫」と、一介の紺屋職人「久蔵」との純愛をテーマに据えた名品だ。
40分以上にわたる口演を見ていて、どんどん引き込まれていく。サンキュータツオは言っていた「気持ちの入った紺屋高尾は、何度聴いても良いと思うのです」と。それが会場のみんなにも自然と伝わっていた。
そしていつのまにか、久蔵を応援している自分がいた。
立川志ら乃師匠が言った「鯉斗の色気には勝てない」という言葉が、印象的な夜だった。
フリートーク付きの落語のイベントというのは、なかなか他では見られないイベントだ。落語家の「人生」や「人となり」を知れば、さらに面白く噺を聴くことが出来るということが発見できた2時間だった。
話題の「声優落語天狗連 Supported by 昭和元禄落語心中」。次回の開催は9月を予定している。