1978年の本日、デュエットソングの定番、平尾昌晃/畑中葉子「カナダからの手紙」がオリコンチャートの1位を獲得

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ロカビリー歌手から作曲家へと転向して次々とヒット曲を世に送り出していた平尾昌晃が、主宰していたミュージックスクールの生徒・畑中葉子と一緒に自ら歌った「カナダからの手紙」は、1978年の初頭に発売されると徐々に人気を上げ、ピンク・レディーや沢田研二ら並み居る強敵を抑えて遂にオリコン1位を獲得。70万枚を売り上げる大ヒットを記録してデュエットソングの定番となる。栄えある首位に輝いたのは、レコード発売から1ヶ月半後の2月27日のことであった。平尾亡き今、改めて評価されている屈指の傑作ナンバーは、数ある平尾作品の中でも欠かせない一曲といえる。新人・畑中葉子にとってはこれが記念すべきデビュー曲となった。

1978年の本日、デュエットソングの定番、平尾昌晃/畑中葉子「カナダからの手紙」がオリコンチャートの1位を獲得

平尾が“平尾昌章”として「リトル・ダーリン」でデビューしたのは1958年のこと。同じ年にはオリジナル・ナンバー「星はなんでも知っている」をヒットさせるなど歌謡曲とカヴァーを並行して歌っており、60年には自作曲「ミヨチャン」をヒットさせている。加山雄三や荒木一郎よりさらに早い、極めて初期のシンガーソングライターのひとりということになる。山下敬二郎、ミッキー・カーティスと共に“ロカビリー三人男”として活躍したが、その後は病気療養を余儀なくされる時期があり、しばらく歌手活動を休んでいたところ、以前発表した「おもいで」という曲に北海道から火がついてリバイバルヒットに至る。快気へ向かいつつあった平尾への渡辺プロからの要請は、歌手復帰ではなく、「おもいで」を新人の布施明に歌わせたいというものだった。しかし布施版「おもいで」がヒットしたことで、平尾に作曲家としての道が拓ける。「銀の涙」をスマッシュヒットさせた後、名前を“昌章”から“昌晃”に替えての「霧の摩周湖」「恋」が続けて大きなヒットとなり、梓みちよ「渚のセニョリーナ」、伊東ゆかり「恋のしずく」などを次々にヒットさせた。

1978年の本日、デュエットソングの定番、平尾昌晃/畑中葉子「カナダからの手紙」がオリコンチャートの1位を獲得

70年代に入り、五木ひろしが苦節の時期を経て遂にブレイクした「よこはま・たそがれ」や、小柳ルミ子「わたしの城下町」などの大ヒットに及んで、平尾は押しも押されもせぬ人気作曲家として活躍を続ける。平尾昌晃歌謡教室(現・平尾昌晃ミュージックスクール)を創設したのは、中条きよしに書いた「うそ」や梓みちよ「二人でお酒を」が大ヒットした74年のこと。狩人、川島なお美、石野真子、松田聖子、川崎麻世、森口博子、倖田來未らを輩出することになるスクールの生徒から見出されたのが、まだ高校在学中だった畑中葉子である。抜群の歌唱センスを持つ彼女は、平尾が自ら歌う「カナダからの手紙」のデュエットの相手役に抜擢され、見事期待に応えた。ふたまわり近く年の差のあるふたりだったが、その佇まいに違和感はない。第3回「空の音楽祭」でグランプリを受賞した軽やかなデュエットナンバーは78年1月10日に発売された。カップリングはやはりデュエットによる「揺れる二人」であった。いずれも作詞は橋本淳、編曲は森岡賢一郎というヒットメーカーたちが顔を並べた最高の仕事で、生まれるべくして生まれたヒットだったといえるだろう。

1978年の本日、デュエットソングの定番、平尾昌晃/畑中葉子「カナダからの手紙」がオリコンチャートの1位を獲得
1978年の本日、デュエットソングの定番、平尾昌晃/畑中葉子「カナダからの手紙」がオリコンチャートの1位を獲得

続けて出された「エーゲ海の旅」「サンフランシスコ行き」、そして「ヨーロッパでさよなら」と歌の世界旅行が展開され、アルバム『カナダからの手紙』には、畑中のソロ曲「ひとり歩き」も収められた。タイトルからして愛弟子への激励に満ちたナンバーであることが窺える。さすがに「カナダからの手紙」を上回るヒットは出なかったものの、2枚目のアルバム『サンフランシスコ物語』も作られ、旅情豊かなナンバーが数多く生み出されることとなった。折しもカラオケが流行りだした時期であったことから、平尾と畑中、それぞれのヴォーカルだけが収められた「女性用」「男性用」のカラオケ・レコードも作られているのがユニークである。ジャケットには“あなたもスターと夢のデュエットが出来るカラオケ・レコード”と書かれていた。

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平尾はその後も秋篠美帆との「恋人たちの港」、水谷ジュンとの「ふたりの有楽町」、土家里織との「霧のレイクサイド」などのデュエットソングを出したがいずれも残念ながらヒットには至らなかった。平成になってからもヴェテランのアグネス・チャンや木の実ナナと一緒に歌ったデュエットナンバーがあるがあまり知られていないことと思う。平尾のデュエットの相手役として、畑中葉子がいかに相性抜群で抜きんでていたかがわかる。平尾は2017年に惜しくも世を去ってしまったが、屈指のナンバー「カナダからの手紙」は、今後いろんな形で畑中葉子が歌い続けてくれることだろう。歌謡ポップスの世界でこれほどまでにパワーを持った華やかなデュエットソングはなかなかないのだから。

「星はなんでも知っている」「よこはま・たそがれ 」「わたしの城下町」「カナダからの手紙」「エーゲ海の旅」ジャケット撮影協力:鈴木啓之

【著者】鈴木啓之 (すずき・ひろゆき):アーカイヴァー。テレビ番組制作会社を経て、ライター&プロデュース業。主に昭和の音楽、テレビ、映画などについて執筆活動を手がける。著書に『東京レコード散歩』『王様のレコード』『昭和歌謡レコード大全』など。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』(毎週日曜23時~)に出演中。
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