ボブ・ディランがフジロックに出演~当日の期待と心配とは?

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【大人のMusic Calendar】

本日、5月24日はボブ・ディランの誕生日である。

ボブ・ディランがフジロックに出演する。うれしい驚きだ。これまでも何度かうわさに上がったことがあったが、まさか実現するとは思っていなかった。1978年の初来日以降、ボブは何度も日本にやってきている。日本ツアーで8回。1985年に「タイト・コネクション」のプロモーションフィルム撮影、倍賞美津子と共演したストーリー仕立ての不思議な映像を東京でおこなった。1994年に奈良東大寺で開催されたユネスコ主催のGME(グレート・ミュージック・エクスペリエンス)に出演。この「あおによし」と銘打った3日間のイベントには、ボン・ジョヴィ、Xジャパンなど、多数のアーティストが出演し、全世界にテレビ中継された。こうしたことから推測すると、ボブは日本がとても気に入っているのだと思う。ただ、これまでの日本ツアーはすべて春先にアリーナやホールでおこなわれるのが恒例となっていたので、真夏の野外フェスティヴァルでボブを見るのは初めというファンも大勢いるだろう。これも楽しみだ。

キャリア60年、77歳のボブはフォーク、ブルース、ロック、カントリー、ポップ、ゴスペル、ジャズなど様々なジャンルの歌を歌っている。また、音楽以外にも画家、彫刻家、映画製作、作家としても活動する万能人で、グラミー賞、アカデミー賞、ゴーデングローブ賞、ピュリツアー賞、大統領自由勲章、レジオンドヌール勲章、ロックンロール殿堂入り、など数多くの賞を受賞している。2016年には世界中が驚いたノーベル文学賞にも輝いた。「生きる伝説」と呼ばれるのも納得できる。まぎれもなくボブ・ディランはスーパースター、今年のフジロックは見逃すことはできない。

ボブは1988年にネヴァー・エンディング・ツアーをスタートさせた。このツアーは現在も続行中で、30年間にわたって毎年100回前後のステージを世界各国でおこなっている。こんなミュージシャンはほかにいない。現在のボブは、ギターは弾かずにピアノに専念し、5人のバックバンド(10年以上不動のメンバー)といっしょに自作曲とアメリカン・スタンダード曲を中心にしたセットリストでステージをおこなっている。2016年の来日コンサートでも、全21曲のセットリストのうち、8曲はシナトラに代表されるスタンダード曲を歌っていた。しかし、フェスティヴァルは違う。ボブは毎年夏にはいくつかのフェスティヴァルに出演している。熱心なディラン・ファンだけでなく、ボブを知らない若い音楽ファンが大勢集まるフェスティヴァルでは、通常のセットリストではなく、自作の代表曲を中心に歌うことが多い。今度のフジロックでも、最近ほとんど歌わなくなってしなった「ライク・ア・ローリング・ストーン」や「見張り塔からずっと」など、ヒット曲を歌うかもしれない。これは熱心なファンにとっても楽しみのひとつだ。

ただ、心配なことがひとつある。ぼくは2016年にデザート・トリップでボブを見たが、7万人が集まった野外ステージなので、もちろん巨大なスクリーンが設置され、遠くの観客もステージの模様を間近に見ることができる。それなのにボブの場合はスクリーンにステージの模様を映しだすのではなく、モノクロのイメージ映像を使っていた。しかも、ボブのステージ照明は驚くほど暗い。はたしてフジロックはどうなるのだろう。日本の若いファンのためにも、ビッグスクリーンを使って、ボブの顔の表情が伝わるようなステージになることを願っている。

最近のボブの活動にも触れておこう。フジロックのあと、香港、台北、シンガポールのコンサートが発表されているが、もしかするとフジロックの前か後にオーストラリア/ニュージーランド・ツアーが決まるかもしれない。オリジナル曲によるレコードは2012年の『テンペスト』が最新作で、その後はアメリカン・スタンダード曲をカバーしたアルバムを連続して3作発表している。そろそろオリジナル曲のニューアルバムが発表されるかもしれない。

音楽以外では、ボブが共同経営者として設立した酒造会社から3種のアメリカン・ウイスキー「ヘヴンズ・ドア」が5月にアメリカで発売された。当然、日本にも輸入されると思うので、ウイスキーグラスを片手に、ボブの音楽を楽しむのもおしゃれかもしれない。

【著者】菅野ヘッケル(すがの・へっける):1947年生まれ。70年にICU(国際基督教大学)を卒業し、CBS・ソニーに入社。すぐに洋楽部に配属され、10年間ディラン担当ディレクターをつとめる。78年にはライヴアルバム『武道館』を制作。その後CBS・ソニー出版を経て86年に独立し、セヴンデイズを設立。74年にシカゴで初めてディランのコンサートを見て以来、現在までに270回以上見ている熱狂的ファン。現在もディラン関係の翻訳やライナーノーツの執筆など、ディランと関わる活動を続けている。主な訳書は『ボブ・ディラン自伝』。東京在住。

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