8月20日(月)深夜、劇作家の根本宗子と役者兼モデルの長井短(ながい みじか)がパーソナリティを務めるラジオ番組「根本宗子と長井短のオールナイトニッポン0(ZERO)」(ニッポン放送)が放送され、8月17日~20日までの4日間、様々な高校の演劇部の高校生を教えながら演劇を作るイベント『中部日本高等学校演劇ワークショップ』に参加していた根本が、それを通して思い出した大切なことについて語った。
中部日本高等学校演劇ワークショップは、能登半島の能登演劇堂で行われた、高校演劇の活動と発展を趣旨とした企画。根本ら演劇に関わるプロたちが講師を務める中、中部地方の各県から集まった参加希望者たちが、与えられた4日間で稽古を行い、4日目に各々練習してきたものを発表するといった内容だ。朝9時から夜11時まで、お風呂と移動と食事以外は全て稽古という過酷なスケジュールの中行われたそうだが、そうした中でも高校生たちは熱意に溢れており、みんな根本の話を真剣に話を聴いていたという。
演劇部の高校生というと、普段は演劇の大会を目指して完成度を上げていくが、ワークショップでは“間違えないこと”に集中しても学ぶことがあまりないと思った根本は、失敗してもいいから、根本が指導したことから自分で考え、何が自分の役に活かせるかを考えて披露する時間にしたのだそう。中には、セリフが多くて覚えられなくて泣き出してしまう子や、気合いを入れて声を張りすぎて本番で声が枯れてしまう子もいたそうだが、「それくらい、みんな一生懸命だった。」と話し、それを聞いた長井も、その初々しさに思わず「可愛いねー!」と声を上げた。
そうして4日目を終えると、最後に高校生たちは、4日間過ごした感想を一人ずつ記録用紙にまとめていたという。それにならい、根本自身も4日間で学んだことを文章にしてみたそうで、その文章を番組の中で読み上げた。
「4日間、演劇を始めたばかりの高校生と共に演劇を作ってみて、近年忘れかけていた感情をたくさん思い出しました。彼らはまだ演劇と出会ったばっかりで、演劇への熱が凄まじく、一つでも多くのことを知りたい、吸収したいと、キラキラした目で毎日私を見つめてくれていました。
高校生の頃の私は、彼らと同じような目をしていたと思います。本当に、毎日1本でも多くの演劇を観たかったし、戯曲を読みたかった。劇団を始めてからも、とにかく自分の面白いと思うことを追求して、演劇でしかできない表現を日々考えていました。とにかく毎日が演劇に関わることで、とっても楽しかった。そのうち演劇でご飯が食べられるようになってきて、さらに関わる人間も増えてきて、演劇への愛が強すぎるがゆえに面倒臭がられたり、すごく信頼していた人に裏切られてしまったり、なんでこんな思いをしなきゃいけないんだろう?と思うことが増え、大好きだったはずの演劇が、どこか仕事だからと割り切らないといけなくなってしまっていることが増えてきていました。
でも今回彼らに会って、そもそも自分がやり始めたことで、誰に頼まれて始めたわけじゃないんだ。私がやりたいから始めたんだなぁと改めて気が付かされました。とにかく演劇が好きで仕方なくて、私はこの仕事を選びました。これは超当たり前のことだけど、忙しいときほど気持ちがトゲトゲしたり、嫌なことばかりが目に入って嫌な気持ちになってしまうけど、好きで仕方なかった頃の気持ちを忘れないように、私も頑張ろうと思いました」
高校生と一緒に演劇を作る中で、かつての熱く真っ直ぐだった気持ちを思い出したという根本。高校生たちの感想の内容は、根本自身は見ることができていないそうだが、「今度の演劇の大会までに、私が言ったことを参考にしてくれていればいいな」と話していた。