追悼・渡辺徹さん 太陽のような明るいキャラクター
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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1088回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
渡辺徹さんが11月28日に敗血症のために死去したことが、12月2日、発表されました。享年61歳。あまりにも若すぎる、そしてあまりにも突然の知らせに、驚いた人も多かったことでしょう。
ニッポン放送の番組にも度々出演されてらっしゃり、その元気あふれる軽快なトークが印象に残っています。
そこで今回は、渡辺徹さんの代表作とともに、在りし日のお姿を振り返ります。
「太陽にほえろ!」で、一躍スター俳優街道へ……
正義感とヒューマニティにあふれる警視庁七曲署捜査第一係の刑事たちの活躍を描いた、刑事ドラマの金字塔「太陽にほえろ!」。新人や無名の俳優を起用し、彼らが人間的に成長する姿を追いかけることで、スター俳優を数多く輩出した伝説のドラマ。本作で、1981年、華々しくデビューを飾った渡辺徹さん。当時、若干20歳。文学座の研究生でした。
演じたのは竹本淳二、愛称はラガー。渡辺さんが「太陽にほえろ!」に加入した当時は、主演の石原裕次郎さんは病気療養中。ボス不在の中で着任した新人刑事でした。個性豊かな刑事たちが登場するドラマの中でも、ラガー刑事は強い正義感にあふれた、ちょっぴりやんちゃなキャラクター。画面に映るとその場がパッと明るくなるような天性の華を持つ、“七曲署捜査一係メンバーの末っ子キャラ”といった印象が強かったことが思い出されます。今にして思えば、明るく元気なラガー刑事は、いつも朗らかな渡辺徹さんのお人柄が滲み出ていたかのよう。七曲署に新しい風を吹き込んだキャラクターであったことは、まぎれもない事実でしょう。
「太陽にほえろ!」への出演をきっかけに、今で言うところの“イケメン俳優”として大ブレイクした渡辺徹さんですが、出演ドラマの中で忘れてはならないのが「風の中のあいつ」。新米医師の恋と青春を描いた爽やかなストーリーで、ヒロイン役の榊原郁恵さんと結婚するきっかけとなった作品ということでも知られています。私個人的には1980年代に放送されたドラマの中で、特に印象的な1本。中でも、渡辺さん演じる主人公・津村一平はラガー刑事を彷彿させるキャラクターで、「太陽にほえろ!」ファンとしては、ニンマリとしてしまうこともしばしば。今でも根強い「風の中のあいつ」ファンが多いことにも頷ける、隠れた名作ドラマです。
俳優業だけでなく歌手やバラエティ番組での司会など、幅広い活動を続けてきた渡辺徹さん。デビュー以来、文学座一筋。コンスタントに舞台に立ち続け、舞台俳優としての道を邁進してらっしゃったことは、演劇ファンの間では周知のとおりです。
そんな渡辺徹さんの最後の出演作となったのは、舞台「今度は愛妻家 THIS TIME IT’S REAL」。榊原郁恵さんとのおしどり夫婦ぶりでも知られた渡辺さんですが、夫婦愛をテーマにした作品で俳優人生の幕を閉じたということに“愛妻家・渡辺徹”らしさを感じるのは、きっと私だけではないことと思います。
末筆ではありますが、渡辺徹さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
いま、観るべき!渡辺徹さん 近年の出演映画
『海獣の子供』
ひとりの少女がジュゴンに育てられた兄弟との出会いを軸に、海と生命の神秘に触れる壮大な冒険を描いたアニメーション映画。ラジオドラマ、ナレーション、洋画の吹き替えなど、声の演技にも定評があった渡辺徹さん。主人公が所属するハンドボール部の先生を表情豊かに演じているのは必見ですよ。
『棘の中にある奇跡 〜笠間の栗の木下家〜』
茨城県笠間市にある栗農家を舞台に、故郷や家族の絆の大切さを描いたヒューマンドラマ。渡辺さんが演じたのは、日本三大稲荷のひとつである笠間稲荷神社の神主。茨城訛りのセリフからは温かみと包容力が感じられて、ほっこりする人も多いはず。
<作品情報>
■太陽にほえろ!(1972年〜1986年放送 渡辺徹さんは1981年〜1985年出演)
企画・原作:魔久平
原案:小川英
脚本:小川英、長野洋 ほか
監督:竹林進、金谷稔、山本迪夫、鈴木一平、木下亮、高瀬昌弘、児玉進、櫻井一孝、澤田幸弘、小澤啓一、斉藤光正 ほか
音楽:大野克夫
演奏:井上堯之バンド、フリーウェイズ、大野克夫バンド
選曲:小林和夫
プロデューサー:岡田晋吉、梅浦洋一、津田昭、清水欣也、山口剛、川口晴年、中村良男、酒井浩至、服部比佐夫、梶山仗佑、新野悟 ほか
出演:石原裕次郎、露口茂、下川辰平、竜雷太、小野寺昭、萩原健一、関根恵子(高橋恵子)、松田優作、勝野洋、宮内淳、沖雅也 、木之元亮、山下真司、神田正輝、渡辺徹、三田村邦彦、世良公則、地井武男、長谷直美、又野誠治、石原良純、 金田賢一、西山浩司、渡哲也 ほか
製作:東宝
■風の中のあいつ(1984年放送)
作:松原敏春
演出:細野英延、中山史郎
プロデューサー:平林邦介
音楽:馬飼野康二
主題歌:「瞳・シリアス」(作詞:松本隆/作曲:筒美京平/編曲:川村栄二/歌:渡辺徹)
出演:渡辺徹、榊原郁恵、松本伊代、金田賢一、明石家さんま、坂上忍、篠ひろ子、矢崎滋 ほか
■海獣の子供(2019年公開)
声の出演:芦田愛菜、石橋陽彩、浦上晟周、森崎ウィン、稲垣吾郎、蒼井優、渡辺徹、田中泯、富司純子
原作:五十嵐大介「海獣の子供」(小学館 IKKICOMIX刊)
監督:渡辺歩
音楽:久石譲
主題歌:米津玄師「海の幽霊」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
アニメーション制作:STUDIO4℃
公式サイト https://www.kaijunokodomo.com/
配給/東宝映像事業部
(C)2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会
■棘の中にある奇跡 〜笠間の栗の木下家〜(2018年公開、2019年DVDリリース)
DVD好評発売中
【品番】OED-10533【価格】3,800円(税抜)
【発売・販売元】LILYFILM
【販売協力】オデッサ・エンタテインメント
出演:西尾舞生、勇翔(BOYS AND MEN)、土田拓海(BOYS AND MEN)、倉野章子、渡辺裕之、西村知美、渡辺徹、池田拓矢
監督:植田尚
脚本:森田剛行
主題歌:池田節子「奇跡の足音」
企画製作:ユウプロモーション
協力:メディアミックス・ジャパン(MMJ)、アプローズプロ
共同配給:ベスト ブレーン
公式サイト https://www.toge-kiseki.com/
(C)2019棘の中にある奇跡
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連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/