ジャーナリストの有本香が7月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。次の衆議院選挙に向け、東京5小選挙区の立候補予定者を決定した自民党について解説した。

2023年7月11日、記者の質問に答える岸田総理～出典：首相官邸HPより（https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202307/11bura.html）

次の衆議院選挙をめぐり、自民党が東京の5つの支部長を決定

自民党は7月19日、衆議院小選挙区の定数「10増10減」に伴い新設される自民党内の5選挙区で、次の衆議院選挙の公認候補予定者となる支部長を選任した。東京28区では公明党が独自候補の擁立を求めていたが、自民党は拒否している。

飯田）この辺りは揉め続けている最中ですね。

有本）ちょうど1ヵ月前にこの番組に出演した際、東京の候補者、支部長が決まらないという問題を言ったと思いますが、それがようやく公募という形を経て決まりました。8区、9区、12区、15区、28区。東京は新しく増えましたので、30の選挙区があります。

飯田）25区から30区に増えましたね。

有本）全国でも圧倒的に多いところです。もともと自民党は東京の選挙区があまり強くありません。なぜなら無党派層が多く、人口の4分の1くらいが入れ替わるからです。東京はこのような理由もあり、自民党が選挙で苦戦する地域です。8区は石原伸晃さんが出ないと決めた杉並です。東京9区は練馬の辺りですが、これも菅原一秀さんの……。

飯田）もともと地元ですね。

有本）元大臣経験者であり、大臣や閣僚を経験した大物政治家が、何らかの理由で選挙区を離れるということで入ってきたわけです。12区は北区を中心にした選挙区で、ここはずっと公明党の候補を自民党が応援してきたところでした。

飯田）公明党の候補者を。

有本）それを都議時代からずっと行ってきたのが高木啓さんです。都議時代から支部長を任せていたのに、「なぜわざわざ公募させるのか」という、よくわからないことを自民党はしたわけです。それから15区（江東区）が柿沢未途さんです。柿沢さんは他党にいて、自民党とはこれまで相容れなかったのですが……。

飯田）自民党は自民党で秋元さんがいましたね。

有本）秋元司さんがいたのですが、例の「500ドットコム」の事件で離党しました。柿沢さんは当選して自民党に入ってはいましたが、支部長にはしないということで、今回また公募されることになったわけです。28区は公明党と揉めたところです。これも練馬ですよね。この人を擁立したい自民党と、28区が欲しい公明党とで揉めました。

公明党票がなくなり、維新の会が候補者を立てることで、かなり苦しくなる自民党　～参政党に流れる無党派層の票も

有本）5人の支部長が選任されましたが、正直、東京は相当厳しくなるでしょう。公明党の票が多いところでは2万票くらいが離れる可能性もありますが、今回、維新は候補者をほとんどの選挙区で立ててきます。

飯田）日本維新の会は。

有本）そうなると、「自民党はどうかな」と思っているところが維新に流れるでしょう。選挙区によっては、いままで自民党と共産党しかいないようなところで、「共産党はちょっとね」と思って自民党に入れていた人の票が割れる方向になります。しかも公明党の票がなくなるとなれば、かなり厳しいですよね。

飯田）そうですね。

有本）参政党も一部の選挙区では、「この人が予定者だな」という人が激しく街宣活動をしています。保守票で、特に東京の場合は無党派、どこかの党派に属していない有権者が多いわけですので、「こちらに入れてみようか」というシフトは起きると思います。

「維新は第2自民党でいい」馬場代表

飯田）7月23日に日本維新の会の馬場伸幸代表が、「第2自民党」という言葉を使っていました。「そうやって揶揄されるぐらいなら、第1自民党と第2自民党で討論し、改革を競えばいいではないか」という内容でした。

有本）馬場さんは、ああいう言葉の取り方がうまいですよね。

飯田）それで見出しをつくるような。

有本）さすが関西の人です。

自民党も日本維新の会も世界的な基準ではリベラル的な政党　～安倍政権を支えてきた「岩盤保守層」の行き場がない

有本）しかし、「第2自民党」という言葉は、私はまさに揶揄するつもりで言ってきたところがあります。いままで「保守票」と大まかに言っていましたが、世界的な基準で見ると、いまの自民党も維新の会も相当リベラルですよね。

飯田）政策面で見ると。

有本）維新は改革派と言われてコストカットもしていますが、教育の無償化など、そういうものにはお金をつける考え方です。それを憲法にも書き込めと言っていますので、リベラル・左派的な政党です。

飯田）そのような政策を織り込んでいるわけですからね。

有本）自民党、特に安倍政権を10年近く支えてきたとされる「岩盤保守層」の行き場がないのです。

飯田）岩盤保守層の。

有本）その選択肢として、奇妙にエッジが効いたところもありますが、例えば参政党などがどれくらいその人たちを取り込んでいくか。これは東京の話ですが、今後、全国的にそういう傾向が広がっていくのではないかと思います。保守であるという自分の政治思想をはっきり持っている人たちは現在、票を入れる政党がないのです。

飯田）なるほど。

有本）自民党は「LGBT法」で相当な反発を買っています。そのような思想・理念が相当強く反映されるところでは、自民党は難しいと思います。維新も同じような形です。国民民主党もその選択肢になり得るのではないかと言われてきましたが、どうも大塚さんの話を聞いてみると……。

飯田）大塚耕平さんですね。

有本）これはこれで相当リベラルなのかなという感じです。現実的な政策を持ちつつ、きちんとした保守層を取り込めるだけの理念を掲げるところが、いま実はないのですね。

飯田）打ち出し方いかんで、いつ選挙があるのかにもよりますが、一気に変わる可能性もある。

有本）可能性はあります。特に東京は変わりやすいです。

日朝首脳会談など、起死回生につながることを岸田政権が仕掛けられるか　～できるだけ選挙を早くした方が傷は浅い

有本）いまは「12月に選挙があるのではないか」と言われていますが、一方では「12月まで待っていたら、もっと支持率は落ちるだろう」ということです。

飯田）12月まで待っていたら。

有本）本来はもっと早い時期にしておくべきでしたが、東京の選挙区がいま決まっているような状況ですから、仕方がなかったのでしょう。「できるだけ早く選挙を行った方が、傷が浅いのではないか」と自民党内では言われています。

飯田）早く選挙をした方が。

有本）来年（2024年）になってしまったら、おそらくできないでしょうね。

飯田）その辺りも臨時国会が9月末にあるとなると、どうなるか。

有本）支持率アップにつながる、起死回生になるような大きなことを岸田政権が仕掛けられるかどうかです。

飯田）内政でのアピールが難しいとなると、外交で。

有本）日朝首脳会談が果たして可能なのか、という話になってきます。でも、そういうことは選挙を考えて想定するべきではないと思います。北朝鮮の問題、特に拉致問題は、常に何らかの策を模索しなければいけません。

飯田）そうですよね。

有本）自民党だけではありませんが、自民党は特に「危機」が言われているため、選挙で頭がいっぱいですよね。今週末は夏祭りのピークですので、一生懸命回っているという感じです。