Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1206回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、9月27日に公開された『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』と、映画『Cloud クラウド』をご紹介します。
『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』 ちさと×まひろ、史上最強の殺し屋と対決!
まだまだ社会に馴染みたくない女子2人のモラトリアムな日常と、観客の度肝を抜くガチすぎるアクションを見事に融合させた、映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズ。
超低予算作品ながら、日本映画界に“殺し屋”というジャンルを確立。さらにガールズアクションに革新をもたらした人気シリーズの3作目にして最新作が、ついにベールを脱ぎました。
宮崎を舞台に、殺し屋協会に所属するプロの殺し屋コンビ・杉本ちさとと深川まひろが大暴れします。
『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』のあらすじ
任務遂行のために宮崎の地に降り立った、杉本ちさと深川まひろ。到着早々ミッションをこなし、バカンス気分を満喫していた2人だったが、ちさとはふと気づいた。今日は、まひろの誕生日。しかし、次の殺しの予定が入っているため、プレゼントを準備する時間がない!
心の焦りをひた隠しながら、まひろと共にターゲットがいる宮崎県庁へと向かうちさと。しかし、指定された場所にいたのは、銃を持つ謎の男だった。彼の正体は、一匹狼の殺し屋・冬村かえで。
“150人殺し”の達成を目指す冬村を相手に、ちさととまひろは絶体絶命のピンチを迎える……。
『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』のみどころ
脱力系殺し屋女子コンビ、杉本ちさとと深川まひろを演じたのは、もちろん高石あかりと伊澤彩織。数々の映画賞を受賞し、いまや大注目の若手俳優となった高石あかり。そして、役者としての可能性を追求するだけでなく、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』への参加など、本業のスタントパフォーマーとしても世界照準で活動する伊澤彩織。
2011年の『ベイビーわるきゅーれ』第1作公開以降、大躍進を続ける2人が、ちさと、そしてまひろとして、今作ではどのような“顔”を見せてくれるのか注目です。
そして彼女たちの宿敵となる冬村かえで役は、池松壮亮。ストイックな孤高の男を、持ち前の研ぎ澄まされた演技力で体現しています。
共演には、今作がシリーズ初参戦となる前田敦子をはじめ、前作からの続投となる水石亜飛夢、中井友望、飛永翼(ラバーガール)など、個性的な顔ぶれが勢揃い。
独自のアクション映画道を追求し続ける阪元裕吾監督のもと、個々の才能がぶつかり合うアクション・エンタテインメント作が完成しました。
人懐っこくて、コミュニケーション能力が高いちさとと、ちょっぴり人見知りなまひろ。まったく正反対な性格を持つ2人が繰り広げる日常は、ゆる〜くて愛おしい。特に本作では、宮崎出張を楽しむ“女子旅”的なムードも感じられ、ハジける姿は実にキュート。思わず笑みがこぼれてしまう人も多いことでしょう。
その一方で、アクションシーンは緊迫感に溢れ、その一挙手一投足に目を奪われてしまいます。
このゆる〜い日常と本格アクションが交錯することで生まれてくる緩急こそ、『ベイビーわるきゅーれ』最大の魅力です。
現在、テレビドラマ「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」がオンエア中。さらに、今作の撮影現場に密着したドキュメンタリー『ドキュメンタリー オブ ベイビーわるきゅーれ』が、10月4日から劇場公開。
ますます広がっていく『ベイビーわるきゅーれ』旋風に乗り遅れることなかれ。一度観れば、“沼”にはまってしまうこと間違いなしですよ。
映画『Cloud クラウド』この悪意、見えないからこそ怖い
『スパイの妻』(2020年公開)で、第77回ベネチア国際映画祭銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞した黒沢清監督と、日本映画界を牽引する俳優・菅田将暉が初タッグを組んだサスペンス・スリラー。
町工場に勤めながら、「ラーテル」というハンドルネームを使って“転売屋”として働く吉井良介。フィギュアや医療機器、バッグなど売れるものは何でも仕入れて高く売る。転売について教えてくれた高専の先輩が持ちかける儲け話に目もくれず、日々コツコツと悪事を働いていた。
ある日、吉井は町工場を退職することを決意。
恋人との新しい生活をスタートし、すべてが順風満帆だったが、彼の周囲で不穏な出来事が多発する……。
知らず知らずのうちにバラまいた憎悪の粒が、インターネット社会の闇を吸収して、どす黒い狂気へとエスカレートしていく。誹謗中傷、フェイクニュースなど、誰もが標的になりうる悪意と恐怖を巧みに表現する演出は、まさに黒沢清監督の真骨頂。
先日、第97回米国アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表作品に決定した本作。この機会に是非、スクリーンで。
<作品情報>
ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ
2024年9月27日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
出演:髙石あかり 伊澤彩織
水石亜飛夢 中井友望 飛永 翼(ラバーガール)
大谷主水 かいばしら カルマ Mr.バニー
前田敦子
池松壮亮
監督・脚本:阪元裕吾
音楽:SUPA LOVE
アクション監督:園村健介
主題歌:女王蜂「狂詩曲」(Sony Music Labels Inc.)
挿入歌:忘れらんねえよwith ちさと&まひろ(from ベイビーわるきゅーれ)「そっか、自由か。」(Bandwagon/UNIVERSAL MUSIC)
公式SNS:大広
特別協賛:フェニックス・シーガイア・リゾート ソラシドエア
特別協賛:宮崎県
「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会:TOKYO CALLING ライツキューブ SUPA LOVE 渋谷プロダクション テレビ東京 ムービーウォーカー シャイカー
制作プロダクション:シャイカー
配給:渋谷プロダクション
(C)2024「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会
公式サイト https://babywalkure-nicedays.com/
<作品情報>
映画『Cloud クラウド』
2024年9月27日(金)からTOHO シネマズ日比谷ほか全国ロードショー
出演:
菅田将暉
古川琴音 奥平大兼 岡山天音
赤堀雅秋 吉岡睦雄 三河悠冴 山田真歩 矢柴俊博
森下能幸 千葉哲也 松重豊
荒川良々 窪田正孝
監督・脚本:黒沢清
音楽:渡邊琢磨
配給:東京テアトル 日活
(C)2024「Cloud」製作委員会
公式サイト https://cloud-movie.com/
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連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/