Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1205回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、現在公開中の『あの人が消えた』と『ぼくのお日さま』をご紹介します。
『あの人が消えた』このマンションの住人たち、怪しすぎる!
気鋭のクリエイター水野格が完全オリジナル脚本で挑んだ劇場長編作品『あの人が消えた』。怪しげな人々が住む、とあるマンション。彼らの秘密を知ってしまった配達員は、思いもよらぬ事件に巻き込まれていく。
先読み不可能なミステリー・エンタテインメントが誕生しました。
『あの人が消えた』のあらすじ
次々と人が消える。
そんないかがわしい噂が立つマンションの担当になった、配達員の丸子。
その住人に日々、荷物を届けているうちに、その中のひとりである小宮が、自身が愛読しているweb小説の作者であることに気づく。しかしその一方で、彼女がストーカー被害に遭っているという疑惑が浮上。
丸子は同じ運送会社で働く先輩で、小説家志望の荒川の協力を仰ぎながら、ほかの住人たちに聞き込みを開始するが……。
『あの人が消えた』のみどころ
主人公・丸子を演じたのは、人気急上昇中の俳優、高橋文哉。慣れない配達員の仕事にも真面目に取り組む、正義感にあふれる実直な青年を好演しています。
そして丸子の先輩・荒川役は、田中圭。面倒見の良い頼れる兄貴のような存在でありながら、ちょっぴりコミカルな一面もある役どころ。高橋文哉との息の合ったコンビぶりは必見です。
共演には北香那、坂井真紀、袴田吉彦、染谷将太、さらに菊地凛子といった演技巧者たちがズラリ。ちょっぴりクセが強めなキャラクターを見事に体現しているのも大きな見どころですよ。
コロナ禍のステイホーム期間、宅配を利用する機会が増えたことから本作の着想を得たという水野格監督。ふと考えてみれば、自分が住むマンションの隣人がどんな人なのか知らない……という人も、都会では少なくないかもしれません。そうなると、集合住宅に住む人々のことをいちばん把握しているのは、各々に届いた荷物を運ぶ運送会社の配達員!?
そんな社会的背景が作品の根底に宿っていて、ストーリーをよりリアルに感じられる人も多いのではないでしょうか。緻密に張り巡らされた伏線を解き明かした、その先にある衝撃とは。
タイトルにある「あの人」は一体誰なのかを想像しながら楽しんで。
『ぼくのお日さま』カンヌでも話題となったヒューマンドラマ
舞台は、雪の降る小さな街。アイスホッケーが苦手な少年・タクヤは、フィギュアスケートを学ぶ少女・さくらに心を奪われる。少年の淡い恋心に気づいたのは、元フィギュアスケート選手で、さくらのコーチを務める荒川。
荒川は2人に、アイスダンスのペアを組むことを提案する……。
2024年に開催された「第77回カンヌ国際映画祭」の「ある視点」部門に正式出品。大きな反響を得た、奥山大史監督商業デビュー作『ぼくのお日さま』。「子どもの頃から習っていたフィギュアスケートを題材に、映画を作りたい」という奥山監督の思いが詰まった本作。
真っ白な雪景色、スケートリンクに差し込む柔らかな光。少年少女の真っ直ぐな姿が、ただただ眩しい。
青春の美しさと残酷さを瑞々しく描いた秀作です。
<作品情報>
あの人が消えた
2024年9月20日(金)から全国ロードショー
出演:高橋文哉 北香那 坂井真紀 袴田吉彦 菊地凛子 染谷将太 / 田中圭
監督・脚本:水野格
音楽:カワイヒデヒロ
主題歌:NAQT VANE「FALLOUT」(avex trax)
製作:日本テレビ 日活 東宝
制作プロダクション:日テレアックスオン ダブ
協賛:小説家になろう
配給:TOHO NEXT
(C)2024「あの人が消えた」製作委員会
公式サイト https://ano-hito.com/
<作品情報>
ぼくのお日さま
全国公開中
出演:越山敬達 中⻄希亜良 若葉⻯也 山田真歩 潤浩 池松壮亮
監督・撮影・脚本・編集:奥山大史
音楽:佐藤良成(ハンバート ハンバート)
主題歌:ハンバート ハンバート「ぼくのお日さま」
英題:MY SUNSHINE
製作:「ぼくのお日さま」製作委員会
製作幹事: 朝日新聞社
企画・制作・配給: 東京テアトル
共同製作: COMME DES CINÉMAS
制作プロダクション:RIKIプロジェクト
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
(C)2024「ぼくのお日さま」製作委員会 / COMME DES CINÉMAS
公式サイト https://bokunoohisama.com/
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連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/