筒美京平ディスコ!自然にカラダがスウィング?! 歌謡曲ここがポイント!

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歌謡曲 ここがポイント! チャッピー加藤(ヤンヤンハイスクール講師)

最近、ますます注目されている昭和歌謡。
この講座では、日本人として最低限覚えておきたい歌謡曲の基礎知識を、わかりやすく解説していきます。

7月も半ばを過ぎ、いよいよ本格的に暑くなってきました。夏といえば踊りたくなる季節ですが、こういうときについ聴きたくなるのが「ディスコソング」です。もちろん、アースやドナ・サマーなど、洋楽の王道ディスコソングもいいのですが、日本には筒美京平という、和魂洋才の天才作曲家がいます。最新の洋楽のエッセンスを、いち早く歌謡曲に取り込んできた京平氏。今回は、そんな職人の腕が冴えわたる「京平ディスコ」の代表作を見ていきましょう。

セクシー・バス・ストップ(元)(w680)-

京平ディスコを語る上で欠かせない、原点とも言える作品が1976年にリリースされた傑作『セクシー・バス・ストップ』です。「セクシーなバス停ってなんだ?」と思うかもしれませんが、ここで言う「バス・ストップ」とは当時アメリカのディスコで流行り始めたステップの名前で、平浩二とも無関係です。

その最新ステップにハマる曲をいち早く作って売り出そう、という意図でビクターは京平氏に作曲を依頼。「だったら、全部向こう風にやろうよ」ということで、京平氏はJack Diamondという変名で曲を書き、「Dr.ドラゴン&オリエンタル・エクスプレス」という覆面ユニットに演奏させました。このユニットの正体はなんと、鈴木茂(g)、後藤次利(b)、矢野顕子(key)、林立夫(ds)という豪華な面々。完全な「和製ディスコ」ですが、敢えて洋盤扱いでリリースされ、この年のオリコン洋楽売り上がチャート年間2位に輝いています。ジャケット裏のダンス図解も、新ステップ普及への意欲が窺えます。

セクシー・バス・ストップ(浅野版)(w680)

この曲はインストゥルメンタルでしたが、評判の良さに「歌詞を付けて、誰かにカバーさせたらどうか?」というアイデアが持ち上がります。作詞は『ブルー・ライト・ヨコハマ』を書いた盟友・橋本淳が担当。歌ったのは、当時アイドル歌手として活動していた浅野ゆう子でした。TVでは男性二人をバックに従え歌ったこの曲も、インスト版同様、スマッシュヒットを記録。浅野ゆう子にとっても新境地を開く作品になりました。ジャケットはアイドルにしては珍しくイラストですが、実際本人もこのヘアスタイルに変更したのです。

シンデレラ・ハネムーン(w680)

そして日本にも本格的なディスコブームがやってきた78年、京平氏は2つの傑作和製ディスコナンバーを発表します。
まずは、岩崎宏美『シンデレラ・ハネムーン』。デビュー以来、洋楽ディスコのエッセンスが入った曲を歌ってきた岩崎宏美ですが、それは作曲担当・京平氏の意図的な戦略で、抜群の歌唱センスを買っていたからこそです。その「和製ディスコ路線」の集大成がこの曲で、イントロはドナ・サマー風で、ミドル部分はヴィレッジ・ピープルの『サンフランシスコ』風と、まさに洋楽のいいとこ取り。スリリングな展開の曲にマッチした、阿久悠のアダルティな詞も最高です。岩崎宏美はこの年20歳を迎えましたが、デビュー期を支えた阿久ー筒美コンビの手によって、大人への階段を上っていきました。

リップスティック(w680)

そして『シンデレラ…』と双璧をなす傑作ディスコ歌謡が、桜田淳子に書いた『リップスティック』です。スローなイントロから急転、一気にテンポアップしていく流れも素晴らしいですが、全体はマイナー調なのに、サビだけメジャーコードを挟むところは心憎いばかりの演出です。

こちらは松本隆が詞を担当。口紅一本を小道具に、まるで映画のワンシーンのような恋模様を展開させていくあたり、こちらもプロの仕事と唸るばかりです。桜田淳子もこの年20歳だったのですが、TVでミニの片ひざを持ち上げるセクシーな振り付けを披露。清純派からの脱却に成功しました。当時私は子供心に「大人になるって、こういうことなんだなぁ…」と思ったものです。

“筒美京平ディスコサウンド”ここがポイント!
<こんな和製ディスコソングも書いていた!>

・スリー・ディグリーズ『にがい涙』(1975年)
…安井かずみとのコンビで書き下ろし。日本語カバーではない!

・中原理恵『東京ららばい』(1978年)
…「クールシティTOKYO」を、洗練された曲調で表現。作詞は松本隆。
・石野真子『日曜日はストレンジャー』(1979年)
…イントロが、もろフォートップス。阿久悠の危うい歌詞も素敵。

【チャッピー加藤】1967年生まれ。構成作家。
幼少時に『ブルー・ライト・ヨコハマ』を聴いて以来、歌謡曲にどっぷりハマる。
ドーナツ盤をコツコツ買い集めているうちに、気付けば約5000枚を収集。
ラジオ番組構成、コラム、DJ等を通じ、昭和歌謡の魅力を伝えるべく活動中。

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