西武は35年ぶり、3年連続Bクラスという大変な非常事態。そこで黄金時代を知る監督が誕生しました。
辻監督の第一声は、
「まさか、自分にくるとは思っていなかった。コーチではなく、監督です。どうしよう、と…」。
昨日、就任会見を行った新監督は、そう言いながらも高笑い。やはり、日本に12人だけという監督の座は、野球人の究極の目標でしょう。
チーム状況を表すように監督選びは難航しました。当初、田辺監督に替わる第1候補は、元ソフトバンク監督・秋山幸二さんでした。古巣の指揮を執ることにとてもノリ気だったようです。しかし、その状況を一変させたのは、ソフトバンクが、まさかのリーグ優勝を逃したことでした。最大11.5ゲーム差を逆転されたショックがこんな影響を及ぼしたのです。
工藤監督は3年契約。来季は最終年ですが、今季のさい配ですっかり評価が下がってしまいました。現状では、来季が最後というプラン。となれば秋山さんの再登板が濃厚となります。そこで、西武フロントは、あわてて元ヤクルトの宮本慎也さんを次の候補に立てましたが、交渉段階で情報が外部に漏れ、スポーツ紙に大きく書かれてしまいました。感触は良かったものの、またもや白紙に。
3人目が辻さんでした。今シーズンまで中日で、野手総合兼内野守備コーチ。現役時代は日本球界最高の二塁手と言われ、指導者に転じてからは、ヤクルト、横浜、中日で指導をしてきましたが、選手からのウケがいまひとつの印象。にもかかわらず、上からのウケは素晴らしいとの評価もあります。
社会人時代は、これといった実績はありません。それでも、西武が1983年のドラフト2位で指名して、翌春のキャンプでは広岡監督から直々に目をかけられました。ノックで徹底的に鍛えられ、スポットを浴びています。選手として期待通りの成長を遂げ、西武黄金時代の立役者の1人となりました。ただ、その後は腰痛で出番が減少。95年には球団から指導者転身という一方的な通告を受けて、自由契約になりました。
そんな時に、「力を貸してほしい」とまっ先に声をかけたのはヤクルトの野村監督。「おれの後継者は、辻でもいい」と話していたそうです。そこへ、ロッテでGM(ゼネラルマネジャー)だった、広岡さんも、「ぜひ、ロッテへ」というオファー。さすがに、球史に残る2人の名将から誘われたなら大いに迷うところでしょうが、ヤクルトを選択しました。理由は単純明快で、「最初に声をかけてくださったから」。
さて、古巣に戻った辻監督に期待されるのは、守備面を立て直すことですが、あくまでも中継ぎという意味合いが濃いことは否めません。近い将来、フロントは、OBで元中日の和田一浩さんを監督に据え、ヘッド格でこれまたOBの西口文也さんを迎えるプランがあるとのことです。
とはいえ、来シーズン西武を引き上げれば、辻監督の評価はまた変わるのではないでしょうか。期待しましょう。
10月4日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」