1月20日、激戦の大統領選挙を制した共和党のドナルド・トランプ氏がついにアメリカ大統領に就任しました。現在、本屋には数々の「トランプ本」が陳列されていますが、その先駆けとなった本があります。その名は「トランプ革命」。
発売されたのは2016年3月27日。もちろん大統領が決定する前であり、トランプ氏が共和党の中での候補者としても選ばれる以前、つまり党内の選挙としてもまだ勝てていない頃に書かれたもの。
今回、いち早くトランプ大統領に注目し応援した、「トランプ革命」著者の饗庭直道氏にインタビューしました。
編集部:1月20日、ついにトランプ大統領が誕生しましたね。その日、ワシントンDCで行われる大統領就任式はどんな内容なのでしょう?
饗庭:大統領就任式では、就任をお祝いするコンサートや舞踏会をしたり、シンポジウムをします。盛り上がって楽しめるような式になっています。日本人では他に、Dr.コパさんとその息子の作家小林照弘さんと一緒に出席しました。この就任式に参加できるかと言うと、党の中でトランプの反対運動が激しかった時、私はそれでもトランプの支持をやめず、逆風が吹いているときも応援してきたからです。
編集部:饗庭さんから見て、トランプ大統領の人気の秘密はどこにあると思いますか?
饗庭:トランプ大統領の発言は暴言ともいわれていますが、彼の言葉はアメリカ人の「それを言ってほしかった!」という言葉なんです。他の候補者だったら『これを言ったら、ここの団体が黙っていないな、炎上するな・・・』ということを恐れて、みんなに好かれる綺麗ごとしか言いません。でも、トランプ大統領には綺麗ごとがないんです。
一つの事例を挙げると、メキシコの移民の問題がありますよね?「不法移民には壁を作って叩き出せ」と。でもそれは「不法移民を叩き出せ」と言っているだけで、合法で入ってきたメキシコや南米からの移民を叩き出せとは一言も言っていません。合法移民にとってこんな嬉しいことはないですよね?
アメリカのグリーンカードを取り、市民権を得て、選挙権を得るようになるまでに5年10年とかかります。一方の不法移民は、勝手に入ってきて、合法移民よりも安い給料で働く。すると、苦労して市民権を取ったひとたちの仕事を奪っていくわけです。これは法と秩序を照らしておかしいですよね。
そういうおかしな状況の中で、トランプ大統領はおかしいことはおかしい、正しいことは正しいと言ったから、アメリカの人々はスカッとしたんですね。
普通、実業家として大成功して70歳を過ぎていたら、それで良いのではないか、と普通は思うじゃないですか?けれども彼は、批判が起きることを知りながら、自分の財産を費やして立候補した。この正直さが彼の一番の人気の秘密ですね。
編集部:著書『トランプ革命』の中でも書かれていますが、トランプ氏のように逆風に立ち向かうにはどんなことが大切でしょうか?
饗庭:逆境の中でもとにかく諦めない、粘ることです。選挙の支持率の上がり下がりは激しく、昨年一年間だけでも「もうダメだ」と思う瞬間が何度もありました。でも、トランプ大統領の口からはギブアップの言葉は絶対に出なかった。絶対に諦めませんでした。
逆風に負けない精神的なバネがどこから生まれてくるのかというと、両親の影響は勿論、ずっと彼が小さい頃から影響を受けてきたのが牧師のNorman Vincent Peale(ノーマン・ビンセント・ピール)の影響が大きいと思います。『積極的考え方の力/ノーマン・ビンセント・ピール』という本が出ていますが、世のため人のために頑張れば神様がきっと味方してくれるという信念が強かったようです。
編集部:トランプ大統領誕生で、アメリカはどんな反応をするでしょうか?
饗庭:きっと、トランプ大統領は“アメリカの父”になると思いますよ。いま、アメリカの父は第40代大統領を歴任したロナルド・レーガン元大統領です。日本人はあまり知らないかと思いますが、レーガン元大統領はアメリカで凄く尊敬されている“オヤジ”なんです。この存在にトランプ大統領がなっていくと思います。
レーガン元大統領は尊敬もされ、冷戦時代を終わらせたりと実績も凄かった。けれど、当選した時の国民の反応は「冗談じゃないぞ」というもので、今のトランプ大統領とほとんど同じような扱いでした。「政治経験がほとんどないとか、離婚経験がある、売れない三流大根役者だ」といった感じですね(笑)。
トランプ大統領になることで、民主党と共和党の垣根が崩されつつあります。民主党のアメリカ、共和党のアメリカと、ここ数十年はっきりとした政策で別れていましたが、民主党、共和党が色分けできないものになっていくと思います。これが、『トランプ革命』と名付けた要素でありますが、新しい波ですね。レーガンデモクラートのように民主党だけどトランプ大統領の支持者が出てくると予想しています。
編集部:アメリカ大統領は、仕事始めとしてどんなことをするのでしょうか?
饗庭:日本へ来るなどの外遊の予定はまだ決まっていませんが、大統領に就任してからの100日間の約束というのをトランプ大統領はホームページに挙げています。その一丁目一番地が、移民問題。そして、アメリカの雇用を増やすために出来ることを全てやりますと。
つまり、就任前から仕事をスタートしているんです。今までにこんな大統領はいませんでした。大体が、大統領になってから3カ月4カ月とレクチャーを受けて、大統領の仕事を開始するのに、彼は当選した翌日から仕事をしています。
先日はトヨタ自動車と一兆円の約束をし、ソフトバンク、アリババとフライングにしてはかなり仕掛けて稼いでいます。これが仕事ですよね。国のために戦うオヤジが、きちっと結果を出し、これがアメリカ人にとってどれだけ喜ばしいか。
実業家はみんな感じているはずですが、時間はお金であり命です。時間を無駄にすることは、企業や実業家にとっては死を意味します。トランプにとってワシントンや政治家の時間の流れ方があり得ないほど遅くてしょうがない。この政治世界の大改革の波は、必ず日本にくると思います。
編集部:最後に、メッセージをお願いします。
饗庭:大事なのは、「流されないこと」だと思います。自分にとって一番大事な信念とは何かを知って、それを貫いてほしい。トランプ大統領もその強い姿勢で道を開きました。
どういう手を打つとその勇気が成功につながるかを、若い皆さんは知っておくといいと思います。大統領就任式にも参加するDr.コパさんが監修されている本『大統領の風水/小林照弘 著(音羽出版:1月23日発売)』には私も特別協賛していて、何でこんな強運になったのかという、トランプの成功の秘訣が書かれています。人生の勝負に出るときに、タイミングや場所はどこなのかを図る一つのきっかけにされたらいいと思います。若い皆さんはぜひ、希望をもって、諦めずに、貪欲に吸収していってください。
編集部:ありがとうございました。
【取材・文:allnightnippon.com編集部 望月知世】