3月3日、日本武道館で、オールナイトニッポン50周年記念『中島みゆきリスペクトライブ2018 歌縁』が開催され、8000人の観客が酔いしれた。
中島みゆきを敬愛する女性アーティストが一堂に会して中島みゆきの名曲を歌う「中島みゆきリスペクトライブ 歌縁(うたえにし)」は、2015年/2017年と過去2回開催し、東京公演はチケット即日完売。2017年は全国8都市を巡り、即日完売となった東京公演(Bunkamuraオーチャードホール)では全国14都市でライブビューイングも実施した。シリーズ3回目となる2018年は、2月3日(土)の札幌・ニトリ文化ホールを皮切りに、札幌・金沢・米子・名古屋・東京・神戸・新潟・仙台・広島の全国9都市で開催されている。
東京公演は、佐賀県唐津市出身のガールズロックバンド「たんこぶちん」のオープニングアクト『泣いてもいいんだよ』からスタートした。この楽曲は彼女らの事務所の先輩でもある中島みゆきが作詞作曲を手がけたもので、たんこぶちんは以前中島本人によるセルフカバーにコーラスとして参加しており、そんな“うたえにし”もあり、今回のリスペクトライブオープニングを飾った。
豪華女性アーティストによる中島みゆきリスペクトライブ、トップバッターに登場した歌姫は、ミュージカル界の実力者、新妻聖子。先月、妊娠中期に入ったと公表した新妻は、名曲『糸』、『空と君のあいだに』を、いつもよりまろやかさを増した歌声を披露。そんな彼女がチョイスした3曲目は中島のアルバムに収録されている楽曲『ひまわり“SUNWARD”』。少女時代には、タイのインターナショナルスクールに通って世界中のこどもたちに混じって生活していた新妻。そこでは訪ねたことのない国でも身近に感じたものだったそう。「どんな国でどんな風に生まれたとしても、ひまわりのように太陽に向かって明るく生きていけたら、そんな祈りを込めて」と、ミュージカルで鍛えた歌唱力を武道館いっぱいに披露した。
二番手に登場したのは、シンガーソングライターの中村中。彼女が選んだ1曲目は『狼になりたい』。普段は妖艶さで周囲を圧倒する彼女だが、この曲では爪を立て本能のまま歌い、吠えた。「みゆきさんのすごいところは頑張って張り詰めている気持ちをしまってしまいがちな、そんな孤独をみゆきさんの歌が聞いてくれていると思えるところ」と語り、続いて選んだのは電話にまつわる楽曲。話す相手の居ない孤独な女性がついかけてしまう『ダイヤル117』、そして『元気ですか(朗読)〜怜子』。別れた男性と付き合う女性に探りを入れるように電話をかけてしまう、惨めな思いをむせび泣くように歌い上げ、舞台を悲しみの色に染め上げた。
続いて三番手で登場したのはショッピングセンターの歌姫との呼び声も高い半﨑美子。この1月に「オールナイトニッポン」パーソナリティを担当した彼女は、中島みゆきの名曲『タクシードライバー』を力強い歌声で披露しながら、トークの部分は声が少しビブラートしているような可愛らしい女性だ。北海道出身で、「土の中で生活しているような」下積み時代を乗り越えてきた彼女が愛した中島みゆきの曲が『あり、か』。おいらやあたい、おまえ、てめえといった人称に痺れてきた楽曲を、これまた力強い歌声で武道館に響かせた。そして、北海道の大学を中退、親の反対を押し切って上京、住み込みで働きながらシンガーソングライターとしてのキャリアを積み重ね、認められるまで帰らないと思った若い日を思いながら披露した『帰省』。今日武道館に応援に駆けつけたご両親にも届けたい1曲を、心を込めてしっとりと歌い上げた。
続いて四番手で登場したのはデビュー15周年を迎えた平原綾香。空間の広がりを表現することに長けた彼女が最初に披露したのが『銀の龍の背に乗って』。ステージ狭しと駆け巡る龍を歌い上げてみせれば、次いての曲『孤独の肖像1st.』では、カフェで戻らぬ愛しい人を待ち続ける孤独な女性を涙ながらに歌いあげ、新たな大人の女性の一面を披露した。そして中島みゆきから楽曲提供を受けた『アリア-Air−』を熱唱。スケール感のある持ち味で武道館を包み込み、「15周年で、めいっぱいなんです!」と語りながら、圧巻のステージングを終えた。
五番手でステージにあがったのはシャンソン歌手のクミコ。これまで様々なアーティストがカバーしてきた『この空を飛べたなら』を、銀巴里最後の歌姫はアコーディオンの音色に乗せてシャンソンの色に染め上げてみせた。途中のMCでは「私はやっぱり飛べないけど、最後に残るのは勇気かも。そんな歌かな」と語り、続いて披露したのが『麦の唄』。北の大地で生き抜く夫婦を描いた楽曲を力強く歌い上げた。そして3曲目に選んだのが『世情』。「心のリレーで成り立っているような歌だから、うねって言葉をつなげて」と、合唱団総勢300名とともに重厚な歌の世界観、言葉のうねりを表現してみせた。
続いて六番手は女優・高畑淳子。日本を代表する女優が、まずは中島みゆきの『化粧』を朗読。スポットライトひとつ「死んでもいいから綺麗になりたい」と大人の女性の慟哭を表現、8000人の聴衆をあっという間に引き込んでいった。続いて披露した『涙 -Made in tears-』では、やりきれない惨めさを歌ったかと思えば、MCでは「生きた心地がしませんでした〜、お前はなんでそこにおるんじゃぁ〜」とバラエティで見せる朗らかさも垣間見せた。最後となる3曲目の『ファイト!』では、背負ってきた人生、戦い続けてきた日々を感じさせる大女優の圧巻のステージを披露した。
七番目は演歌界から『歌縁』二度目の参戦となる、島津亜矢。『命の別名』『歌姫』と、幼少時より“えん歌の申し子”と言われた実力そのまま、磨き抜かれた艶のある声、完璧なピッチで聴く人を心地よく歌の世界へと誘っていった。3曲目に選んだのは『誕生』、別れを誕生になぞらえる大きな愛の世界をも、完璧な歌の技術で会場を見事に圧倒した。
そして、大トリでステージにあがったのは「歌縁」シリーズ3回目の登場となった研ナオコ。盟友・中島みゆきから提供を受けた全16曲から『あばよ』を最初の曲にチョイス。続いて『わかれうた』を歌い上げ、去年負った大怪我の影響を全く感じさせない元気な姿を見せた。途中、10年バックコーラスを務めてきて今年デビューが決まった娘のひとみも姿を見せ、『地上の星』を母親譲りの歌声で披露した。そして最後に、元はアルバム収録曲の予定だったものをシングルカットした思い入れの強い名曲『かもめはかもめ』をしっとり歌い上げ、楽曲が大ヒットした時代を知る多くの観衆を魅了した。
アンコールでは、本日の出演者全員が華やかにステージに並び、中島みゆきの代表曲『時代』をステージ・客席一体となって歌い上げた。3時間に及んだ本公演は、中島みゆきの歌の世界に魅了された出演者全9組と、8000人の観客で作り上げた、素敵な一夜となった。
取材:allnightnippon.com編集部 長浜純・高盛雅子
『中島みゆきリスペクトライブ2018 歌縁』
<東京公演概要>
■公演名:オールナイトニッポン50周年記念『中島みゆきリスペクトライブ2018 歌縁』
■開催日時:2018年3月3日(土)15時開場/16時開演
■開催場所:日本武道館
■出演者:クミコ/研ナオコ/島津亜矢/高畑淳子/中村 中/新妻聖子/半﨑美子/平原綾香(※五十音順)
■オープニングアクト:たんこぶちん
■案内役(ナレーション):のん
■公式HP:http://utaenishi.com
<他全国公演概要>
2/3(土)札幌 ニトリ文化ホール
出演:クミコ/研ナオコ/高畑淳子/中村 中/新妻聖子
2/11(日)金沢 金沢歌劇座
出演:クミコ/研ナオコ/島津亜矢/高畑淳子/中村 中/半﨑美子
2/18(日)米子 米子コンベンションセンター BiG SHiP
出演:クミコ/研ナオコ/高畑淳子/新妻聖子/半﨑美子
2/25(日)名古屋 日本特殊陶業市民会館フォレストホール
出演:クミコ/研ナオコ/島津亜矢/中村 中/新妻聖子/半﨑美子
3/10(土)神戸 神戸文化ホール 大ホール
出演:クミコ/研ナオコ/高畑淳子/中村 中/新妻聖子/半﨑美子
3/18(日)新潟 新潟県民会館 大ホール
出演:研ナオコ/高畑淳子/中村 中/新妻聖子/半﨑美子
3/21(水・祝)仙台 東京エレクトロンホール宮城
出演:クミコ/研ナオコ/中村 中/新妻聖子/半﨑美子
3/25(日)広島 上野学園ホール
出演:クミコ/研ナオコ/高畑淳子/中村 中/新妻聖子/半﨑美子