バク宙アイドル・セイントフォーの不運だった「路線対立」とは?
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それゆけ!ドーナツ盤万博 第5回 セイントフォー『不思議Tokyoシンデレラ』
最近、ますます加熱するアナログ盤ブーム。そしてシングル盤が「ドーナツ盤」でリリースされていた時代=昭和の楽曲に注目する平成世代も増えています。子供の頃から歌謡曲にどっぷり浸かって育ち、部屋がドーナツ盤で溢れている構成作家・チャッピー加藤(昭和42年生)と、昭和の歌謡曲にインスパイアされた活動で注目のアーティスト・相澤瞬(昭和62年生)が、ターンテーブルでドーナツ盤を聴きながら、昭和の歌謡曲の妖しい魅力について語り合います。
チャ:オイッスー!声が小さい!もう一度!オイッスー!……こんにちは、チャッピー加藤です。
相澤:オイッスー!いかりやさんって、ドリフターズのベーシストだったんですよね。こんにちは、相澤瞬です。
チャ:親指弾きで、“元祖チョッパー”とも言われてます。それはさておき、5回目ですよ。とりあえず、1ヵ月もったね(笑)。
相澤:何年でも、末永く続けたいですね…
チャ:みんな、ニッポン放送「しゃベル」に全員集合!拡散してビュー数上げよう!……それじゃ、いってみよう!
■驚愕のアクロバット
チャ:さて、きょうのお題は、これも瞬くんたっての希望で、こちらのグループアイドルです!
チャ:1984年11月5日発売、4人組アイドルグループ・セイントフォーのデビューシングル『不思議Tokyoシンデレラ』!……んー、そこを選んできたか!
相澤:僕、この曲、死ぬほど聴いたんですよ!すんごいハマって。
チャ:CDがすり切れるほど聴いた、ってヤツね(笑)。
相澤:そうです(笑)。いやでも、ホントにすり切れるほど聴いたなー。他の曲も聴きたくなって、アルバム探したら、CDが廃盤になっちゃってて、メチャメチャ高値になってるんですよ!
チャ:へー、そうなんだ?アナログのシングル盤はそうでもないんだけどな。じゃ、発売当時のドーナツ盤で、さっそく聴いてみよう。
(♪ターンテーブルに乗せて、演奏)
相澤:(聴き終えて)いやー!いいわー!すんばらしい!
チャ:久々にちゃんと聴いたけど、いい曲だなー(笑)。
相澤:そうなんですよ!で、その後アルバムで全曲聴いて、ますますハマって、そしたら「今年復活する」って聞いて、「えーーーっ!これは運命だ…!」って。
チャ:あ、オレもその話聞いて驚いた!1人除いて 3人で再結成ライヴやるんだよね。
相澤:いやー、絶対観たいです!セイントフォーと言えば楽曲も最高ですけど、なんといってもあのライブパフォーマンスですよね。
チャ:ああ、はいはい。
相澤:側宙やったり、バック宙やったり、尋常じゃないアクロバットをやってるじゃないですか!
チャ:確かに、あれは尋常じゃなかった。
相澤:もの凄い運動量で、多分、現代のグループだったら、恐らく歌チームとダンスチームで確実に分かれてますよね(笑)。
とにかく、そのヒーローのような徹底した姿勢に惚れました…
チャ:オレは当時ね、そのパフォーマンスをTVで観て「ン??」って思ったんだよ。「アイドルに、それ要らないでしょ!」って。だって「曲芸」じゃん!
相澤:「こりゃおかしいゾ」と(笑)。
チャ:光GENJIみたいなローラースケートなら、まだわかるよ。歌と関係ないじゃん!リアルタイムで観た第一印象を言うと「何なの?このコたち?」だったなー。……オレが古いのかな?
相澤:僕、リアルタイム世代の人たちに「セイントフォーが好き」 って言うと、みなさん「グループ名は知ってるけど、曲は知らない」って言うんですよね。
チャ:あー、そうだろうなー。この『不思議Tokyoシンデレラ』も公称では20万枚と、そこそこ売れたんだけど、では誰でも知ってるほどヒットしたかっていうと、決してそうじゃないし。
相澤:チャートは、最高何位だったんですか?
チャ:オリコンだと最高35位。だけど「ある一定の層」には、ものすごく響く曲だったんだよ。きっと。
相澤:僕とかですね(笑)。
チャ:そうそう、瞬くんみたいに、刺さる人には刺さりまくりだったの。たぶん、掘り起こしちゃいけないところを掘っちゃった気がするな。
相澤:「そこ、やんなくていいでしょ!」みたいな?
チャ:オレ、キワモノ系は嫌いじゃないし、むしろ大好きなんだけど、アイドルが「ヒザに水がたまる」って何だよ?と(笑)。
相澤:完全にアスリートの世界ですよね。歌番組でも、ケガしちゃいけないから、楽屋でも真剣な顔して、笑ってなかったって聞きました。
チャ:笑っちゃいけないけど、笑うなー(笑)。だから「なぜそこまですんの?」と不思議だった。メンバーみんな、かわいいのに。
相澤:全員、超かわいいです!
チャ:けれど、それまでの王道のカワイコちゃんタイプじゃない、ひとクセある子をあえて選んでたよね。このチョイスがまた絶妙だったなー。
相澤:グラビアとかも結構出てたんですよね。
チャ:いっぱい出てた。水着より「レオタード」のイメージがあるな。それと目を引いたのは「メガネ」。板谷祐三子はステージでもメガネかけてて、アイドルでは珍しかった。
相澤:元祖「メガネ萌えアイドル」な感じですか?
チャ:うん、熱狂的なファンがいたよ。なんで、アクロバットやるのにコンタクトにしなかったのか不思議だけど。彼女が途中で脱退したのは痛かったねー。
相澤:今回の再結成に唯一参加してなくて、残念ですね…。でも僕は再結成して下さった、岩間さん、濱田さん、鈴木さんをこれまで以上の愛で応援させていただきたいです!
■不運だった「路線対立」
相澤:セイントフォーって、結成当時からトラブル続きだったんですよね?
チャ:そう。事務所とレコード会社がモメたのよ。「リバスター音産」っていう新興レーベルからデビューしたんだけど、レコード会社は、もうちょい普通にアイドルとして売りたかったらしいのね。
相澤:でも事務所は「アクロバットをやろう!」と。そりゃモメますよね。
チャ:確かに話題にはなったんだけど、いかんせん早過ぎたなー。今で言うと、ももクロのライヴパフォーマンスはアスリートに近いけど、元をたどってくと、セイントフォーに行き着くのかなと。
相澤:そういえば、色分けもしてますしね。あー、確かにルーツはここなのかも。
チャ:結局、この路線で第2弾の『太陽を抱きしめろ』までは突き進むんだけど、第3弾はアイドル路線で、タイトルは『ハイッ!先生』だよ(笑)。「迷走してるなー」って思ったなぁ。
相澤:まったく曲調が違いますもんね。で、第4弾『ハートジャックWAR』でまた元の路線に戻るという(笑)。
チャ:その路線対立が、契約上のトラブルに発展して、彼女たち、レコード出せなくなっちゃうんだよね。ワイドショーとか週刊誌の格好のネタにされて、かわいそうだった。
相澤:素晴らしいグループなのに、本当にもったいないですね…。
チャ:セイントフォーって、そういうゴタゴタとか、アクロバットやってたっていう部分しかクローズアップされなくて、もっと楽曲面で評価されてもいいよね。加瀬邦彦さんでしょ、プロデュース?
相澤:ジュリーに書いた曲もいいですけど、キャッチーだし、完成度高すぎます。さすがです!あと、イントロから暴力的すぎるスネアも素晴らしいです!
チャ:アレンジは船山基紀さんか。加瀬さんは、いったいどういうつもりでプロデュースしてたのか、亡くなる前に伺いたかったなー。
てか、無理にアクロバットなんかしなけりゃ、もっと違った評価になってたんじゃないの?
相澤:だから、再結成がとっても嬉しいんです!これが楽曲面での再評価につながれば……あー、語り足りない!来週もセイントフォーで、お願いします!
チャ:OK!オレも体鍛えとくわ(笑)。
……次回は、セイントフォー『太陽を抱きしめろ』について二人が熱く語ります。お楽しみに!
【チャッピー加藤/Chappy Kato】
昭和42年(1967)生まれ。名古屋市出身。歌謡曲をこよなく愛する構成作家。好きな曲を発売当時のドーナツ盤で聴こうとコツコツ買い集めているうちに、いつの間にか部屋が中古レコード店状態に。みんなにも聴いてもらおうと、本業のかたわら、ターンテーブル片手に出張。歌謡DJ活動にも勤しむ。
好きなものは、ドラゴンズ、バカ映画、プリン、つけ麺、キジトラ猫。
【相澤瞬/Shun Aizawa】
昭和62年(1987)生まれ。千葉県出身。懐かしさと新しさを兼ね備えた中毒性のある楽曲を、類い稀なる唄声で届けるシンガーソングライター。どこまでもポップなソロ活動、ニューウェーヴな歌謡曲を奏でる「プラグラムハッチ」、 昭和歌謡曲のカバーバンド「ニュー昭和万博」など幅広く活動。
好きなものは、昭和歌謡、特撮、温泉、お酒、うどん、ポメラニアン。