1970年の本日、ヒデとロザンナ「愛は傷つきやすく」がオリコン・チャートの1位を獲得

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1960年代末、「愛の奇跡」でデビュー・ヒットを飾ったデュオ、ヒデとロザンナの5枚目のシングル「愛は傷つきやすく」がリリースされたのは70年5月25日。発売から2ヶ月以上経った8月3日付のオリコン・チャートで初の1位を獲得し、紅白歌合戦にも初出場を果たして彼らの代表作となった。今年デビュー50周年を迎えたヒデとロザンナの栄光の歴史を振り返る。

水木英二名義で東芝レコードからソロデビューした後、佐藤由紀(後のアン真理子)とのデュオ“ユキとヒデ”としてポリドールからでの活動を経て、出門英がイタリア出身のロザンナ・ザンボンと共に“ヒデとロザンナ”を結成したのは68年のことだった。10月にコロムビアから出された彼らのデビュー盤「何にも言えないの/愛の奇跡」は、当初は「何にも言えないの」がA面だったが、有線放送のリクエストをきっかけにB面の「愛の奇跡」に人気が集まり、AB面が逆転。ジャケットも新たに刷り替えられる。発売から実に4ヶ月後の69年2月には遂にトップ10入りを果たし、それから約2ヶ月に亘ってトップ10内をキープする大ヒットとなった。69年4月にリリースされた第2弾「粋なうわさ」は橋本淳と筒美京平コンビの作詞と作曲による作品、さらに同コンビでタイトルに“奇跡”が踏襲された第3弾「ローマの奇跡」と続き、4枚目のシングル「笑ってごらん子供のように」は佐藤由紀の作詞、出門英の作曲、つまりはユキとヒデの作詞・作曲で、「愛の奇跡」を作曲した田辺信一がアレンジを手がけるも、チャート100位圏外という結果に終わってしまった。ちなみにB面は橋本×筒美の「初めて人を恋した頃の」であった。

1970年の本日、ヒデとロザンナ「愛は傷つきやすく」がオリコン・チャートの1位を獲得

そこで起死回生の一発となったのが、5枚目の「愛は傷つきやすく」である。作詞は橋本淳だが、作曲に中村泰士が起用された。中村は“美川鯛二”の名で活動していた東芝時代、水木英二(=出門英)とレーベルメイトだった縁がある。ヴォーカルの掛け合いとなるサビが印象的な曲は、デビュー・ヒット「愛の奇跡」を想起させる強いインパクトがあり、かつての盟友へヒットを贈ろうとした中村の熱情が窺える。森岡賢一郎のアレンジの力も大きかった。結果、オリコンのウィークリーチャート1位を獲得し、年間チャートでも7位という大ヒットで、ヒデとロザンナの人気はますます拡大することとなった。その後も「ふたりの関係」「抱擁」「愛情物語」とヒットを連ね、コロムビア在籍時代の74年までに17枚のシングルと4枚のオリジナル・アルバムをリリース。75年からはワーナーへ移籍し、並行して出門英のソロ・シングルも出している。出門英は作曲家としても、小柳ルミ子が歌ってヒットした「星の砂」や、紅白歌合戦でも披露された森昌子「彼岸花」などに才能を発揮した。「星の砂」はヒデとロザンナもセルフカヴァーしている。

1970年の本日、ヒデとロザンナ「愛は傷つきやすく」がオリコン・チャートの1位を獲得
1970年の本日、ヒデとロザンナ「愛は傷つきやすく」がオリコン・チャートの1位を獲得

コロムビア時代、実は18枚目のシングル盤として発売が予定されていながらも未発売に終わった曲がある。それが「今からでも遅くない」と「別れてひと月」で、2003年にリリースされたCD『ヒデとロザンナ しんぐるこれくしょん』で陽の目を見ることとなった。同盤はほかに発掘された2曲と併せて4曲の未発表曲が収められた貴重なアルバムである。当時のレコードは曲のタイトルに横文字が併記されるケースが多かったが、ヒデとロザンナの場合はイタリア語と英語が混在し、「愛の奇跡」は「L'AMORE E UN MIRACOLO」、「愛は傷つきやすく」は「LOVE IS FREE」といった具合。さらに後になって再評価されている曲が多いのもヒデとロザンナの作品の特徴のひとつといえる。「ローマの奇跡」のB面曲だった「真夜中のボサ・ノバ」は、2011年にピンク・マルティーニ&由紀さおりが世界的なヒットとなったアルバム『1969』でカヴァーして広く知られることとなり、2012年に橋本×筒美作品のコンピレーション・アルバムのタイトルにもなった。約50年前の曲にも拘らず、今聴いてもまったく色褪せていない傑作である。ワーナー時代では、ユーミンが詞を提供した「追想」や「あなたとともに」も忘れがたい。ヒデとロザンナの作品は常に時代を先取りしていた。

1970年の本日、ヒデとロザンナ「愛は傷つきやすく」がオリコン・チャートの1位を獲得

ヒデとロザンナ「何にも言えないの」「愛の奇跡」「愛は傷つきやすく」小柳ルミ子「星の砂」ジャケット撮影協力:鈴木啓之

【著者】鈴木啓之 (すずき・ひろゆき):アーカイヴァー。テレビ番組制作会社を経て、ライター&プロデュース業。主に昭和の音楽、テレビ、映画などについて執筆活動を手がける。著書に『東京レコード散歩』『王様のレコード』『昭和歌謡レコード大全』など。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』(毎週日曜23時~)に出演中。
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