JRA C.ルメール騎手の夢はアーモンドアイで凱旋門賞を勝つこと
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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、25日に行われた競馬・ジャパンカップで驚異的なレコードを出して優勝した3歳牝馬・アーモンドアイと、鞍上のクリストフ・ルメール騎手の「絆」にまつわるエピソードを取り上げる。
「僕はただのパッセンジャー(乗客)でした」
名手ルメールにそう言わせたほど、圧巻の勝ちっぷりでジャパンカップを制したアーモンドアイ。いくら桜花賞・オークス・秋華賞の牝馬3冠を制した馬だとはいえ、古馬(4歳以上)の一線級ホースと走るのは初めて。決して不安がなかったわけではありません。
しかし発走直前の単勝オッズは、去年のジャパンカップ勝ち馬・シュヴァルグランや、大阪杯(G1)の勝ち馬・スワーヴリチャードら強豪の牡馬勢を差し置いて、一本かぶりの1.4倍。ファンは馬の強さを信じていましたし、また、鞍上がJRAのリーディングジョッキーであるルメールというのも、大きな“買い材料”でした。
最内枠1番からの発走となったアーモンドアイ。一瞬、ゲートで跳ね上がるような仕草を見せましたが、先行するキセキをペースメーカーに、3番手をキープ。1,000m通過は59秒9と、G1レースとしては平均ペースでしたが、ルメールは、
「いつもの彼女のリズム。向こう正面の途中ではもう“お客さん気分”でしたね(笑)。この状態だったら、もう勝てるな、と」
この時点ですでに、勝利を確信していたのです。そこからレースは急にペースアップ。そんなきつい流れのなか、アーモンドアイは途中で2番手に躍り出ると、逃げるキセキをゆったり追走。最後の200mで並ぶと、一気に1馬身3/4も突き放してみせたのです。
3歳牝馬が、並み居る牡馬を子ども扱い。しかも勝ちタイムが表示されると、スタンドにどよめきが起こりました。
「レコード 2分20秒6」
これまでのJRA記録は、2005年のジャパンカップで、アルカセットが記録した2分22秒1でした。それをなんと、一気に1秒5も上回ってみせたのです。通常、1秒差=6馬身差と言われますが、単純に比較すると、13年間記録を抜かれなかったアルカセットを9馬身ちぎってゴールしたことになり、まさに世界的にも「あり得ないタイム」です。
このとんでもないスーパーガールを、しっかり4冠目に導いたのは、やはりルメールの手腕もあってこそ。これで今年、JRA開催のG1レース年間7勝の新記録を樹立(地方競馬と回り持ち開催のJBCスプリントも含めると、8勝)。またこの勝利で、今年JRA199勝。外国人初のリーディングジョッキーとなった去年の勝利数に早くも並び、武豊の持つ年間最多勝記録212勝の更新も見えてきました。
日本を主戦場にして4年目のルメール。短期免許で日本に来ていたとき、落馬で重傷を負いましたが、入院中にNHKの朝ドラ『マッサン』を観て日本語を勉強。2015年、JRAの通年騎手免許を取得し、いまは勝利騎手インタビューも流暢な日本語でこなします。
日本を愛するルメールの夢は「日本の馬で、母国・フランスの凱旋門賞を勝つこと」。
海外の記者から「この馬は、凱旋門賞を初めて勝つ日本馬になると思うか?」という質問が飛んだとき、「YES!」と即答したルメール。アーモンドアイは、悲願を実現するパートナーだとルメールは思っています。
「パーフェクトホース! どこからでもレースができるし、性格もいい。世界で対等に渡り合える能力がある」
陣営も来年は海外レース参戦の意向を示しており、今年、凱旋門賞を連覇した最強牝馬・エネイブルとの夢の対決が、来年、実現するかもしれません。