「2億6000万~~2億6000万~」
「2億6000万~~ございませんかぁ~?」
「2億6000万~~よろしいですかぁ~?」…
北海道・新千歳空港から車で15分のところにある苫小牧市のノーザンホースパーク。
自然の中で馬との触れ合いを楽しめるほか、サイクリングやパークゴルフなどアクティビ
ティ施設も充実したレジャーパークの片隅から
リズム良く、テンポ良く、活発に唄うような声で
信じられない莫大な金額の連呼と、若馬のいななきが混じり合って聞こえてきます。
いつもは国内外の観光客でにぎわうノーザンホースパークも、この日だけは別。
日本中から馬主、調教師、騎手、メディアなど競馬関係者がこぞって参加する日本最大
級のサラブレッドのセリ市"セレクトセール"が行われているのです。
セレクトセールは日本競走馬協会が主催する、生まれて3~6か月の当歳(0歳)と1
歳のサラブレッドのセリ市のこと。今年で20年目(20回目)を迎えます。
主催者が上場する競走馬を厳選(セレクト)していることが特徴で
日本の競走馬生産のリーディング・社台グループをはじめ、名門牧場から買いたくても
買えないような良血馬や好馬体の馬が数多く上場されています。
そういう馬を求めるオーナーたちのセリが熱を帯び、1頭1億円を超える「ミリオンホース」が多いのも特徴です。常に450頭を超えるサラブレッドが上場され、80%近い高落札率を誇りここ5年間の売上総額は100億円を突破。毎年過去最高を更新し去年は総額149億円、一頭平均では3831万円という世界でも例を見ないスケールとなっています。
したがって海外のレースを制することが不思議ではなくなった昨今、世界的に見てもレベルが高いといわれる日本の生産馬を目当てに海外からも購買者が大挙して訪れています。
7月10日(月)のセレクトセールには来年デビューを迎える2016年生まれの1歳馬240頭余りが登場しました。
当日は7月の北海道にしては珍しく真夏日。
会場を訪れた購買者も扇子をあおぐ手が止まらない状況で、セリもヒートアップします。
1番から12番の馬まで1000万円台~5000万円台まで次々に売れ続け
ついに13番の馬"シルヴァースカヤの2016"でいきなり2億円を突破。
(仔馬の名前は競走馬に登録されてから決まるので、母の名前と生年が通称になります)
兄も活躍し始めた馬の弟にあたる同馬には2億6000万円まで跳ね上がり、ハンマーが落ちました。
さらにこの日、最高値の2億7000万円で"リッスンの16"を落札したのは里見治オーナー。
去年の有馬記念を勝ったサトノダイヤモンド(2013年当歳セール2億3000万円)
今年の安田記念を勝ったサトノアラジン(2011年当歳セール1億3000万円)
宝塚記念を勝ったサトノクラウン(2013年1歳セール5800万円)など
近年数多くのG1レースを勝っている馬を所有されていて、これらの馬もセレクトセールで落札した馬達です。
父は日本最強馬のディープインパクト、母はイギリスのG1を勝った馬という、まさにサラブレッド。同じ血統の姉にはG1レース2着のタッチングスピーチがいる超良血馬。
落札した里見オーナーは
「調教師も『一番良い』と言っていたので、それじゃいこう(入札しよう)かと。なんとか種牡馬になれるくらいの活躍をしてもらえれば嬉しい。やっぱりダービーを勝ちたいですよね。」とまだ勝ったことのない日本ダービー制覇をこの馬で夢見ていました。
実は里見オーナー。このセレクトセールには先述の馬以外にも沢山の馬をセレクトセールで落札、購入。昨年も日間で8頭のディープインパクトの子を含む13頭を購入し、落札総額は13億2700万円でした。
ただ、去年のセールから今年のセールの間に愛馬が活躍。菊花賞を皮切りに、朝日杯FS、有馬記念、香港ヴァーズ、安田記念、宝塚記念と国内外の6つのG1レースを勝利。セール出身馬の実績に大いに貢献。
「自分が背伸びして頑張った分、間違いではなかったのかなという気持ちはあります。」と笑顔で話していました。
ただ、今回のセールについては「(金額が)高いですよね。かなり高く買われていると思う。"リッスンの16"も2億は超えるとは思いましたが、2億2000~3000万でいけると思いましたが」と想像を超える熱の帯び方だった様子。
実際にこの後のセリでその予感は的中。
初日は1歳馬242頭が上場され落札率は89.3%。
落札総額は86億3450万円、平均落札価格は3997万円と
すでに過去最高を更新するペースで落札され大盛況となりました。
さらに、この日と翌日には里見オーナーが予感した「熱」を吹き飛ばすような新しい勢い・風が馬主の世界に吹くことになるのですが...
その翌日の当歳馬のセリの模様は次回、お伝えします、
(清水久嗣)