本日12月11日は谷村新司の誕生日、古希となる

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【大人のMusic Calendar】

チンペイさん、古希、おめでとうございます。
もう、あれからこんなに時間が経ってしまったんだなあと、想いを深くしています。

僕とチンペイさんとの関わりは、僕からの一方的な時代も含めると、1970年か71年か、その頃からですからなんと半世紀近くにもなります。
当時、チンペイさんはアマチュアながらすでに関西では大スターでした。僕も友人と一緒にバンドをやっていたので、コンサート会場にもよく足を運び、ときには大部屋の楽屋で一緒になることもありました。しかしながらその頃は会話を交わすどころか、ご挨拶すらできず、遠目に「ああ、あそこに谷村新司がいる」とドキドキしながら眺めていたものです。

その後、チンペイさんは「アリス」を結成。僕が一緒にバンドをしていた高山弘(のちに高山厳と改名)も「バンバン」のメンバーとして東京に行き、メジャー・デビューを果たします。
デビュー間もなく、高山に誘われ、「アリス」も「バンバン」も一緒に住んでいた麻布十番のマンションの一室を訪ねた事がありました。暑い夏の午後でした。デビューしたものの「アリス」も「バンバン」もまだ売れていなくて、みんな一緒くたに合宿のような生活をしていたのです。蒸し暑さを掻き立てるような蝉の声が聞こえる中で、家具も何もなく、隅に布団が積み上げられた部屋に、長髪でジーンズを履いた男たち数人が膝を抱えて座っていました。その中にはもちろんチンペイさんも確かにいらっしゃったのですが、この時もお声をかけることはできませんでした。

それから2、3年が経ち、音楽番組のラジオ・ディレクターを目指していた僕は、大学を卒業し、運よく毎日放送に入社する事ができました。入社して数年後、念願のラジオ・ディレクターになる事ができ『MBSヤングタウン』を担当することになりました。
桂三枝(現・桂文枝)、笑福亭鶴光、原田伸郎、当時はまだ新人だった笑福亭鶴瓶、明石家さんま、その中にあって金曜日のパーソナリティを務める「チンペイ(谷村新司)&バンバン(ばんばひろふみ)」は最強のコンビでした。もちろんその頃は「冬の稲妻」も大ヒットしてチンペイさんもすでに名実ともに全国区の大スターでした。
11年余りの長きにわたって『ヤンタン』のパーソナリティを務めていただいたうち、僕が実際にチンペイさんの曜日のディレクターを務めたのはわずか数年でしたが、ソフトな語り口でラジオという媒体の特性をよく理解された上で話を運んでいく手法など、たくさんのことを学ばせていただきました。

本日12月11日は谷村新司の誕生日、古希となる
その後、チンペイさんも『ヤンタン』を辞め、ソロとしても本格的に音楽活動を積極的に展開していくようになり、僕も、サラリーマンの常である人事異動によってラジオを離れ、事業局に移りイベント・プロデューサーになりました。
そこでまたなんという偶然でしょうか、『ASIAN MUSIC SCENE(通称:アジア音楽祭)』という音楽イベントの仕事をご一緒することになったのです。チンペイさんがホストとなってアジア各国からアーティストを集め、毎年アジアの各都市を回って、毎日放送と現地の放送局がコンサートとTV番組を共同制作するというイベントです。この仕事で、シンガポール、上海、ホーチミン、マニラ、クアラルンプールと、5年間ご一緒させていただきました。

ただでさえ大掛かりなイベントを、言葉も文化も違う海外で行うのは大変です。チンペイさんも我々スタッフも筆舌に尽くしがたい苦労をしましたが、毎年、苦労の末になんとか幕が開き、本番を迎えるたびになんとも言えない達成感が心に充満していき、「よし、来年はどんなふうにやろうか」と意欲が湧いてくる、確かな充実感を味わう事ができたイベントでした。
どこの国に行っても、観客の中に現地の日本人駐在員がたくさん来られていて、チンペイさんが“自分を待つ人が日本にいる”という「いい日旅立ち」のリフレインを歌いあげるところで彼らがみんな涙を流してしまう光景は、いまもはっきりと僕の心に焼き付いています。

一昨年、僕は65歳で毎日放送をリタイアしましたが、昨年の冬に『MBSヤングタウン50周年記念特別番組』を放送することになり、OBである僕も制作スタッフの一員として加わり、久々にチンペイさんとお仕事をご一緒させていただきました。
そして今春から「アリス」の三人が『MBSヤングタウン』のパーソナリティとして復活。またまた僕も呼び出され、毎回、スタッフとして収録に立ち会っています。

半世紀近くにも及ぶ不思議なご縁、嬉しいご縁に感謝しています。
チンペイさん、70を過ぎても、これからももっともっとお元気で素敵なことをいっぱい世の中に送り出してください。いつでもお手伝いさせていただきます。

アリス「冬の稲妻」ジャケット撮影協力:鈴木啓之

【著者】宇野幹雄(うの・みきお):1951年生まれ。大阪在住。元毎日放送 ゼネラル・プロデューサー。ラジオ『MBSヤングタウン』をはじめ、TVラジオ番組やイベントのディレクター/プロデューサーを務める。2005年からはMBS(毎日放送)が設立した劇場「シアターBRAVA!」の総支配人として、演劇、ミュージカル、コンサート、落語会など様々なライブ・パフォーマンスのプロデュースも手がけた。MBSリタイア後の現在も、番組やイベントのプロデュースに携わるかたわら、自身のバンドを率いて音楽活動も積極的に行なっている。
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