1973年12月17日、アグネス・チャン「小さな恋の物語」が唯一となるチャート1位獲得

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故郷の香港で芸能活動を始めた後、日本でも1972年に「ひなげしの花」でデビューしてトップアイドルの仲間入りを果たしたアグネス・チャン。次々とヒットを連ねる中、4枚目のシングル「小さな恋の物語」では遂にオリコン・チャートで1位を獲得した。本日12月17日は、1973年にアグネス・チャンが初のチャート首位に輝き、歌手としての栄光を手にした日である。

1972年11月25日に発売された日本でのデビュー曲「ひなげしの花」がチャート5位を記録するヒットで、我が国においても一躍スターとなったアグネス・チャンは、続いてのシングル「妖精の詩」もヒットさせ、3枚目の「草原の輝き」ではチャート2位を記録してミリオンセラーを達成。第15回日本レコード大賞の新人賞と第4回日本歌謡大賞の放送音楽新人賞を受賞し、翌1974年3月に開催された第46回春の選抜高等学校野球大会の入場行進曲にも選ばれた。そして、1973年の10月25日に、デビュー曲「ひなげしの花」と同じ作家陣である山上路夫作詞、森田公一作曲、馬飼野俊一編曲で満を持して出された4枚目のシングルが「小さな恋の物語」だった。曲自体の出来の良さはもちろんのこと、前作「草原の輝き」の勢いもあって、首位を獲得したのである。発売から2ヶ月近く経ってからの1位というのは、前作が長く売れ続けていた証拠だろう。

1973年12月17日、アグネス・チャン「小さな恋の物語」が唯一となるチャート1位獲得
1973年12月17日、アグネス・チャン「小さな恋の物語」が唯一となるチャート1位獲得
1973年12月17日、アグネス・チャン「小さな恋の物語」が唯一となるチャート1位獲得
渡辺プロダクションに所属したアグネス・チャンは、事務所の先輩にあたる天地真理や小柳ルミ子との共演も多かったが、やはり同じ事務所のザ・ドリフターズのテレビ番組や舞台への出演も頻繁であった。彼らが松竹で主演したシリーズ映画の1本、『大事件だよ 全員集合!!』にはアグネスが歌手役で出演して「小さな恋の物語」を披露するシーンが見られる。映画は曲がヒットしている最中の12月26日に公開された。劇中では広東語を喋り、いかりや長介とのちぐはぐな会話になるというシチュエーションを面白おかしく演じた。本国では早くから女優としても活躍していただけあってこなれた演技を見せる。その後の映画は、東宝チャンピオンまつりの1本として公開された主演作『アグネスからの贈りもの』(1975年)、テレビドラマでは主題歌「美しい朝がきます」を歌った、NET『おじさま!愛です』(1975年)に本人役でたびたびゲスト出演している。本格的なものでは中国で劇場公開された『マルコ・ポーロ シルクロードの冒険』(1982年)がある。

1973年12月17日、アグネス・チャン「小さな恋の物語」が唯一となるチャート1位獲得
1973年12月17日、アグネス・チャン「小さな恋の物語」が唯一となるチャート1位獲得
「小さな恋の物語」のヒットが続いていた1974年に入ってからも、安井かずみ×平尾昌晃の作詞・作曲による「星に願いを」、松本隆の作詞家としてのプロ・デビュー作となった「ポケットいっぱいの秘密」などさらにヒットを連発して活躍が続いた。「ポケットいっぱいの秘密」はそれまでずっと編曲を担当していた馬飼野俊一ではなく、東海林修とキャラメル・ママにアレンジが委ねられた作品でもあり、若い才能を積極的に採用した当時のスタッフの英断を讃える必要がある。ほどなくティン・パン・アレーと名を変えるキャラメル・ママは細野晴臣や鈴木茂が所属したバンドであり、作詞の松本も含めて、はっぴいえんど人脈が歌謡界へと進出する先駆けとなった重要な作品であった。アルバムにも『アグネスの小さな日記』『Happy Again』など名曲揃いの秀作があり、歌手としてのアグネス・チャンはもっともっと評価されてもいい。

1973年12月17日、アグネス・チャン「小さな恋の物語」が唯一となるチャート1位獲得
1973年12月17日、アグネス・チャン「小さな恋の物語」が唯一となるチャート1位獲得
アグネス・チャン「ひなげしの花」「妖精の詩」「草原の輝き」「小さな恋の物語」「星に願いを」「ポケットいっぱいの秘密」「美しい朝がきます」ジャケット撮影協力:鈴木啓之

【著者】鈴木啓之 (すずき・ひろゆき):アーカイヴァー。テレビ番組制作会社を経て、ライター&プロデュース業。主に昭和の音楽、テレビ、映画などについて執筆活動を手がける。著書に『東京レコード散歩』『王様のレコード』『昭和歌謡レコード大全』など。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』(毎週日曜23時~)に出演中。
1973年12月17日、アグネス・チャン「小さな恋の物語」が唯一となるチャート1位獲得

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