1970年1月3日、B.J.トーマス「雨にぬれても」が全米1位を獲得

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1970年1月3日、B.J.トーマス「雨にぬれても」が全米1位を獲得
アメリカン・ニュー・シネマの名作に挙げられる『明日に向って撃て!』に用いられたことが大きな要因となり、「雨にぬれても」は永遠の生命を宿した傑作ポップスとして日本でも愛されている。もとより映画のためにバート・バカラックとハル・デヴィッドのコンビが書いた楽曲だった。ふたりはとりわけディオンヌ・ワーウィックのヒット・メイカーとして名を馳せていた背景もあり、彼女と同じセプター・レコード所属のB.J.トーマスが歌うことになる。その決定前にワーウィックがトーマスの「心の中まで(フックト・オン・ア・フィーリング)」(69年 当時日本シングル盤はビリー・トーマスという表記)を聴かせてバカラックにトーマスの起用を説得したという。ただしこれにはその役回りはセプター・レコードのスティーヴ・タイレルだったとする著述もある。バカラックは結局、トーマスに依頼するが、レイ・スティーヴンスが曲も映画も好きになれないという理由で、さらにはボブ・ディランもがこの話を断っていたことは伏せたそうだ。

トーマスは運悪く喉頭炎を患ってしまい、最初の録音前夜に医者から2週間喉を使うなと言われたがポール・ニューマン主演映画の主題歌を歌うのだからと説き伏せ、治療を受けてスタジオに入ったものの、仕上がりは散々で5回目のレコーディングでようやくバカラックが納得した。耳障りなひどい声だったことがむしろポール・ニューマンっぽいと映画会社=20世紀フォックス重役に好評で、こちらもオーケーが出る。8週間後に完治した喉で歌い直したヴァージョンがシングル盤となり、その際に曲の終演部を彩るチャック・フィンドリーによる印象的なトランペットが加えられたとされる。

トーマスによると映画が公開されるまでは曲の評判は悪く、バカラックとデヴィッドの練れた曲作りはむしろ仇になってラジオの反応も冷淡だったというが、映画『明日に向って撃て!』(69年10月24日 アメリカ/70年2月7日 日本公開)が多くの人々の心に響くと共に「雨にぬれても」は大変な反響を呼び出した。70年1月3日付全米シングル・チャートにおいてランク・イン10週目で第1位に輝き4週王座を守ると、さらには70年4月7日に発表された第42回アカデミー賞で最優秀主題歌に選出される(バカラックは最優秀スコアも受賞)。

いくつかの偶然と幸運が重なってこれを歌うことになったトーマスは、“いい時にいい場所にいたおかげで、バートたちが書いた一番いい曲に巡り会ったんだね”と振り返っている。

B.J.トーマス「雨にぬれても」ジャケット撮影協力:鈴木啓之

【著者】矢口清治( やぐち・きよはる):ディスク・ジョッキー。1959年群馬生まれ。78年『全米トップ40』への出演をきっかけにラジオ業界入り。これまで『Music Today』、『GOOD MORNING YOKOHAMA』、『MUSIC GUMBO』、『ミュージック・プラザ』、『全米トップ40 THE 80'S』などを担当。またCD『僕たちの洋楽ヒット』の監修などを行なっている。
1970年1月3日、B.J.トーマス「雨にぬれても」が全米1位を獲得

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