2025年は戦後80年。映画を通して戦争と平和を考える
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Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1264回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
2025年8月15日、日本は80回目の終戦記念日を迎えます。各メディアでは例年以上に熱量の高い特別番組が製作され、各地では様々なイベントやシンポジウムが開催されています。
そんな中、今夏は戦争をテーマとした映画を数多く公開。新作のみならず、2016年に公開されてロングランヒットを記録した『この世界の片隅に』は、全国の映画館にてリバイバル上映がスタート。
またスタジオジブリの名作アニメーション映画『火垂るの墓』が、Netflixで日本国内にて独占配信がスタートするなど、名作と呼ばれている戦争にまつわる映画も再び注目を集めています。
そこで今回は、戦後80年を迎えた今こそ観るべき映画をご紹介します。

(C)2025 Yukikaze Partners.
『雪風 YUKIKAZE』戦うこと。それは、仲間の命を救うこと。
太平洋戦争下、最前線で戦い抜き、ほぼ無傷で終戦を迎えた駆逐艦「雪風」の史実を元に、戦中から戦後、さらに現代へとつながる激動の時代を生き抜いた人々の姿を描いた『雪風 YUKIKAZE』。
竹野内豊を主演に迎え、玉木宏、奥平大兼、當真あみ、田中麗奈、中井貴一など、豪華俳優陣が集結。
今を生きる私たちへのメッセージを乗せて、2025年夏、出航します。

(C)2025 Yukikaze Partners.
駆逐艦とは、対空戦闘によって戦艦や空母といった主力艦を護衛する艦のこと。さらに兵員や物資の輸送、上陸支援、沈没艦船の乗員救助などにも駆り出され、“海の何でも屋”と呼ばれる存在でした。
そんな駆逐艦の中でも「雪風」は、最後まで戦場に留まり、沈没する艦から海に投げ出された仲間たちを救助して帰還することが多かったことから、「幸運艦」「不沈艦」と称されたとのこと。主力だった甲型駆逐艦38隻のうち、ほぼ無傷で終戦を迎えたのは「雪風」ただ一隻だったという事実にも驚かされます。
生きて帰り、生きて還す。「雪風」という艦が持つ信念は本作にもしっかりと刻み込まれており、登場人物ひとりひとりのドラマが濃密に描かれています。
『雪風 YUKIKAZE』は、2025年8月15日(金)から全国ロードショーです。

(C)ALEXIA TRUST COMPANY LTD. (C)KADOKAWA 1959
※写真は『ジョニーは戦争へ行った 4K』(C)ALEXIA TRUST COMPANY LTD.
終戦80周年企画『ジョニーは戦場へ行った 4K』『野火 4K』観たら頭から離れない! トラウマ級の衝撃作
戦後80年の今年、戦争の意義に迫る様々な作品が特集上映される中、戦争映画不朽の名作が4K版となって上映されています。
赤狩りによってハリウッドから追放されながらも、『ローマの休日』『黒い牡牛』『スパルタカス』など脚本家として多くの名作を生み出したダルトン・トランボが、自らの小説を映画化した『ジョニーは戦争へ行った』。
そして、大岡昇平による戦争文学の最高傑作を名匠・市川崑監督が手がけた『野火』。両作品とも戦争の悲惨さや人間の尊厳を問いかけるものとなっており、国内外の映画賞を多数受賞した衝撃作です。

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※写真は『野火 4K』(C)KADOKAWA 1959
砲弾を受けたために目、鼻、口、耳を失い、運び込まれた病院で両腕、両脚も切断されてしまった青年ジョニー。現実と幻覚が交錯する中で彼が想いを巡らせたのは、愛する恋人のこと。そして、父親と過ごした平穏な日々。
『ジョニーは戦争へ行った』は戦争の惨さを伝えるとともに、言論の自由、命の尊厳について考えさせられる一作です。
また『野火』は、フィリピンのレイテ島を舞台に、病魔に侵され、飢餓と孤独に苦しむ日本兵の視点から、陰惨な戦場を描いた戦争映画の傑作。主演の船越英二は、役作りのために2週間の絶食を行い、極限状態に置かれた人間の狂気を見事に体現しています。
終戦80周年企画『ジョニーは戦場へ行った 4K』『野火 4K』は、角川シネマ有楽町ほか全国順次公開中。映画の先人たちが繰り返し描いてきた“戦争”を、いま改めて見つめ直すことが出来る上映企画です。

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『ハオト』平和への祈りを伝書鳩に託したヒューマンドラマ
初夏のある日、90歳を超えた老人が甥の刑事を訪ねて警察署にやってきた。老人は「人を殺した」と告白。そして、太平洋戦争末期に存在した、ある特殊機密施設について話し始める……。
2005年に下北沢・本多劇場で初上演された舞台を映画化した『ハオト』。東京郊外の精神病院を舞台に、正義という名の狂気に迫った群像劇です。

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主演の原田龍二をはじめ、片岡鶴太郎、高島礼子、倉野尾成美(AKB48)、村山彩希など、個性豊かなキャストが顔を揃えた本作。
表向きには精神病院と称されている施設には、戦争や軍を批判し精神病扱いされた元エリート海軍兵、原子爆弾開発間近に多重人格となった博士など、特異な患者ばかり。シリアスなだけでなく、ユーモアやサスペンス、ファンタジー的な要素も取り入れて、病院の内と外を対比することで戦争の狂気を映し出しています。
世界的にも軍事緊張が続く昨今。戦後80年に届けたい、平和への祈りが込められた作品です。
『ハオト』は2025年8月8日(金)から池袋シネマ・ロサほか全国順次公開です。
さて、2025年は戦後80年であると同時に、昭和元年からちょうど100年目を迎える節目の年でもあります。現在では、国民の7割が昭和生まれ。約3割が平成以降生まれとなり、昭和を知らない世代も増えてきたと言われています。
その一方で、令和の若者を中心に、昭和レトロブームが再燃中。昭和という時代の持つ奥深さに、興味を寄せる人が増え続けています。
ニッポン放送では8月11日(月・祝)、昭和100年をテーマにした特別企画『昭和100年ステーション』を10時間にわたりオンエア。レギュラーワイド番組がリレー形式で担当し、昭和100年を振り返ります。
2025年の山の日は、ニッポン放送とともにお過ごし下さい!

(C)2025 Yukikaze Partners.
<作品紹介>
雪風 YUKIKAZE
2025年8月15日(金)から全国ロードショー
出演:
竹野内豊 玉木宏 奥平大兼 當真あみ 藤本隆宏 三浦誠己 山内圭哉 川口貴弘 中林大樹 田中美央 田中麗奈 益岡徹 石丸幹二 中井貴一
主題歌:「手紙」uru(ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)
脚本:長谷川康夫
撮影監督:柴主高秀
VFX 監督:オダイッセイ
音楽:岩代太郎
監督:山田敏久
協力:防衛省 海上自衛隊
撮影協力:平塚市 茅ヶ崎市
海洋協力:SURF’90茅ヶ崎LIFE SAVING CLUB
撮影所:角川大映スタジオ、リマーテスタジオ
DI:東映ラボ・テック 東映デジタルセンター
『小説版 雪風 YUKIKAZE』(小学館文庫)
オリジナルサウンドトラック(バンダイナムコミュージックライブ)
製作プロダクション:デスティニー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/バンダイナムコフィルムワークス
(C)2025 Yukikaze Partners.
公式サイト https://www.yukikaze-movie.jp/

(C)ALEXIA TRUST COMPANY LTD. (C)KADOKAWA 1959
<作品紹介>
終戦80周年企画
ジョニーは戦場へ行った 4K
野火 4K
2025年8月1日(金)から角川シネマ有楽町ほか全国順次公開中
ジョニーは戦場へ行った 4K
原作・脚本・監督:ダルトン・トランボ「〔新訳〕ジョニーは戦場へ行った」(角川新書/KADOKAWA刊)
製作:ブルース・キャンベル
撮影:ジュールス・ブレンナー
編集:ミリー・ムーア
出演:ティモシー・ボトムズ キャシー・フィールズ ジェイソン・ロバーズ ダイアン・ヴァーシ ドナルド・サザーランド
1971年/アメリカ/112分/カラー・モノクロ/ビスタ/字幕翻訳:高内朝子
配給:KADOKAWA
(C)ALEXIA TRUST COMPANY LTD.
野火 4K
監督:市川崑
原作:大岡昇平「野火」(角川文庫/KADOKAWA刊)
脚本:和田夏十
撮影:小林節雄
音楽:芥川也寸志
出演:船越英二 ミッキー・カーチス 滝沢修
1959年/日本/105分/モノクロ/シネマスコープ
※2022年のデジタル修復によるマスターです。
配給:KADOKAWA
(C)KADOKAWA 1959
公式サイト https://movies.kadokawa.co.jp/johnny-nobi4k/

(C) JOE Company
<作品紹介>
ハオト
2025年8月8日(金)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
出演:
原田龍二 長谷川朝晴
木之元亮 倉野尾成美 村山彩希 三浦浩一 二瓶鮫一
植松洋 マイケル富岡 金城大和 バーンズ勇気
石田隼 清水一光 栩野幸知 大原誠弍 河原健二 宗林咲智 丈 崔哲浩(友情出演)片岡鶴太郎(特別出演) 高島礼子
監督・脚本・プロデュース:丈
配給:渋谷プロダクション
製作:JOE Company
(C)JOE Company
公式サイト https://haoto-movie.com/
連載情報

Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/