『星と月は天の穴』綾野剛が恋愛拗らせ中年男を熱演!
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Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1286回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、現在公開中のお正月映画の中から『星と月は天の穴』と『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』をご紹介します。

画像を見る(全13枚) (C)2025「星と月は天の穴」製作委員会
『星と月は天の穴』滑稽だけど切ない。中年男の愛の行方は……
吉行淳之介が1966年に発表し、芸術選奨文部大臣受賞作品を受賞した小説「星と月は天の穴」。過去の離婚経験から女性を愛することを恐れる一方で、愛されたい願望をこじらせている。そんな40代小説家の日常をエロティシズムと哀愁を織り交ぜながら綴った純文学が、日本を代表する脚本家であり映画監督の荒井晴彦の手で映画となりました。
荒井監督にとっては、念願の企画の映画化。自らがメガホンを取る作品群では、“愛と性”に真正面から向き合ってきた、荒井晴彦監督の作家性を存分に堪能できる渾身作が誕生しました。
『星と月は天の穴』のあらすじ
1969年。妻に逃げられて結婚に失敗して以来、独身のまま40代を迎えてしまった小説家・⽮添克⼆。時折、娼婦の千枝子と軀を重ねては、心にぽっかりと空いた穴を埋めようとしていたが、彼には恋愛に尻込みする秘密があった。
ある時、⽮添は画廊で大学生の瀬川紀⼦と運命的に出会う。彼女と奇妙な情事にいたったことをきっかけに、⽮添の⽇常と心情に変化が現れ始めて……。
『星と月は天の穴』のみどころ
主人公の⽮添克⼆を演じたのは、荒井晴彦監督とは『花腐し』以来2度目のタッグとなった綾野剛。本作では、これまでにない“枯れた男”を好演。それでも憂いと色気が滲み出てくる存在感で、俳優・綾野剛の真骨頂を発揮しています。
また⽮添の心の中に無邪気に入り込んでくる瀬川紀⼦役には咲耶。時に無邪気に時に艶かしく、体当たりの演技は必見です。
そして⽮添のなじみの娼婦・千枝子に扮したのは、田中麗奈。矢添との肉体的なつながりだけでなく、絶妙な心理的な駆け引きも見事に体現し、女優としての新境地を開く名演を見せています。
さらに柄本佑、岬あかり、MINAMO、宮下順子たちが脇を固め、官能的な中にもユーモアが垣間見える唯一無二の世界観が創り上げられました。
こじらせてしまった恋愛観を、まるですべてを達観した哲学者のように滔々と語る男。そんな男の心の中に、無意識なのか確信的なのか、軽やかに足を踏み入れてくる女。
原作小説が発表されたのと同じ1960年代を舞台に映画化したにもかかわらず、決して古さを感じさせない。むしろ、今の時代に呼応しているかのような印象を受ける本作。
とりわけ際立っているのが、言葉の美しさ。劇中で繰り広げられる会話は、現代的な滑らかな話し方とは異なりますが、これは荒井監督の演出ではなく、綾野剛や咲耶のプランニングによって生まれたものとのこと。少し時代を感じさせるその台詞回しが、言葉の意味をより深いものとし、観客の創造力を掻き立て、純文学の香りへ いざなうようにも感じられます。
2025年最後の映画鑑賞に選んでほしい耽美的な一作です。
『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』シリーズでもっともエモーショナルな物語が奏でられる
映画界の頂点を極め、映像技術の進化を追求し続ける巨匠ジェームズ・キャメロン監督によるSF超大作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』。
壮麗なパンドラの世界とそこに暮らすナヴィたちの姿を描いた第1作『アバター』(2009年)。パンドラの美しい海を舞台に、家族の絆を紡いだ第2作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(2022年)。そして、シリーズ第3作にして最新作となる今作では、かつてない規模の“炎の決戦”が繰り広げられます。
神秘の星、パンドラ。地球滅亡の危機に瀕した人類は、パンドラへの侵略を開始する。
アバターとして潜入した元海兵隊員のジェイク・サリーは、人類と戦うことを決意。しかし同じナヴィでありながら、パンドラの支配を目論むアッシュ族のヴァランは、人類と手を組み、復讐を果たそうとしていた……。
ジェームズ・キャメロン監督が「集大成」と語るとおり、スペクタクルなバトルムービーとして楽しめることはもちろん、普遍的な家族の物語としても共感できる一作。ますます磨きがかかった映像美は圧巻の一言。いまこの映画をスクリーンで目撃できる喜びを感じずにはいられません。
上映時間3時間17分。2025年の年越しは、『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』で圧倒的な映画体験を。

(C)2025「星と月は天の穴」製作委員会
<作品情報>
星と月は天の穴
テアトル新宿ほか全国公開中
出演:
綾野 剛
咲耶 岬あかり 吉岡睦雄 MINAMO 原一男 / 柄本佑 / 宮下順子 田中麗奈
脚本・監督:荒井晴彦
原作:吉行淳之介「星と月は天の穴」(講談社文芸文庫)
製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2025「星と月は天の穴」製作委員会
公式サイト https://happinet-phantom.com/hoshitsuki_film/

(C)2025「星と月は天の穴」製作委員会
<作品情報>
アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ
全国公開中
出演:サム・ワーシントン ゾーイ・サルダナ シガーニー・ウィーバー ウーナ・チャップリン
日本版声優:東地宏樹 小松由佳 早見沙織 菅生隆之 田村睦美 清水はる 楠大典 山路和弘 バトリ勝悟 内田雄馬 香月萌衣 内田真礼
監督・製作・脚本:ジェームズ・キャメロン
原題:Avatar: Fire and Ash
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(C)2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
公式サイト https://www.20thcenturystudios.jp/movies/avatar3
連載情報

Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/






















