『平場の月』堺雅人×井川遥、切なすぎる大人のラブストーリー
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Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1280回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、11月14日公開の『平場の月』と『ブルーボーイ事件』をご紹介します。

画像を見る(全13枚) (C)2025映画「平場の月」製作委員会
『平場の月』中学生の初恋と大人のリアルな恋愛が映し出される
第32回山本周五郎賞に輝いた、朝倉かすみによる「平場の月」。男女の心の機微を繊細に描いた本書は各紙の書評で絶賛を浴び、発売当初から寄せられた映像化のオファーは30社以上。
「これまでにない大人の恋愛小説」として話題を呼んだ話題の一冊が、満を持して映画となりました。
『平場の月』のあらすじ
妻と離婚後、地元の印刷会社に再就職して平穏に暮らす青砥健将。ある日、青砥は中学生時代に思いを寄せていた須藤葉子と35年ぶりに再会する。
須藤は夫と死別し、今はパートで生計を立てている。お互い独り身となり、様々な人生経験を積んだ2人は意気投合。
離れていた時間を埋め合わせるかのように過ごすうちに、惹かれ合うように。やがて、互いの未来についても意識するようになるが……。
『平場の月』のみどころ
主人公・青砥健将を演じたのは、本作が8年ぶりの映画主演作となる堺雅人。近年はアクの強いキャラクターを演じることが多かった彼ですが、今作では等身大の実年男性を好演。俳優としての懐の深さが滲み出る演技は必見です。
そして須藤葉子役は、井川遥。辛い過去を抱えながらも慎ましく生きる芯の強さを持つ一方で、儚さを持ち合わせた女性像を鮮やかに体現しました。
共演には中村ゆり、でんでん、椿鬼奴、吉瀬美智子、成田凌、塩見三省、大森南朋といった実力派俳優が集結。
また本作では、青砥と須藤の中学生時代のストーリーが原作以上に濃密に描かれているのも大きな特徴。坂元愛登、一色香澄がフレッシュな輝きを放っているのも見逃せません。
同級生で初恋同士の男女が、大人になって再び出会って恋をする。年齢を重ね、酸いも甘いも噛み分けてきたはずなのに、いくつになっても恋愛はもどかしい。それでも日常のささやかな幸せとともに愛を紡ぐ主人公たちに、愛おしさを覚える人も多いことでしょう。
観終わった後にはしみじみと余韻に浸って、薬師丸ひろ子の「メイン・テーマ」を口ずさんでしまいそう。晩秋の季節にピッタリな大人の恋愛映画です。
『ブルーボーイ事件』実際に起きたトランスジェンダー事件にもとづく物語
実際に日本で起きた事件から着想を得たオリジナル作品『ブルーボーイ事件』。
1965年、オリンピック景気が過熱する東京。売春の取り締まりが強化される中、警察が頭を悩ませていたのが、性別適合手術を受けた“ブルーボーイ”と呼ばれる人々の存在。戸籍は男性のまま、女性として性を売る彼女たちは、現行の売春防止法では摘発対象にはならないからだ。
そこで警察は、彼らに性別適合手術を行っていた医師の赤城昌雄を逮捕。裁判にかけることに。
その頃、かつて赤城から性別適合手術を受けたサチは、恋人の若村篤彦からプロポーズを受け、幸福感に包まれていた。そんな彼女の元に、赤城の弁護士・狩野卓が現れ、証人として裁判に出廷してほしいと依頼するが……。
メガホンを取ったのは、自身がトランスジェンダー男性であるというアイデンティティを反映した独創的な作品作りで、国内外から大きな注目を集める飯塚花笑監督。「本作では当事者キャスティングが必要だ」という飯塚監督の強い信念のもと、サチ役の中川未悠をはじめ、オーディションで選ばれたトランスジェンダー女性たちがメインキャストを熱演。自らの経験をもとに役と同化していく姿からは、強い説得力が感じられます。
これは、誰もが“ありのままの自分”を生きることを描いた物語。日本映画界に一石を投じた注目作です。

(C)2025映画「平場の月」製作委員会
<作品情報>
平場の月
2025年11月14日(金)から全国東宝系にてロードショー
出演:
堺雅人 井川遥
坂元愛登 一色香澄
中村ゆり でんでん 安藤玉恵 椿鬼奴 栁俊太郎 倉悠貴
吉瀬美智子 宇野祥平 吉岡睦雄 黒田大輔 松岡依都美 前野朋哉
成田凌 塩見三省 大森南朋
主題歌:星野源「いきどまり」(スピードスターレコーズ)
監督:土井裕泰
脚本:向井康介
音楽:出羽良彰
原作:朝倉かすみ「平場の月」(光文社文庫)
配給:東宝
(C)2025映画「平場の月」製作委員会
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会

(C)2025『ブルーボーイ事件』製作委員会
<作品情報>ブルーボーイ事件
2025年11月14日(金)から全国ロードショー
出演:
中川未悠 前原 滉 中村 中 イズミ・セクシー 真田怜臣 六川裕史 泰平
渋川清彦 井上肇 安藤聖 岩谷健司 梅沢昌代 / 山中崇 安井順平 / 錦戸亮
監督:飯塚花笑
脚本:三浦毎生 加藤結子 飯塚花笑
音楽:池永正二
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
配給・宣伝:日活 / KDDI
(C)2025『ブルーボーイ事件』製作委員会
公式サイト https://blueboy-movie.jp/
連載情報

Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/






















