Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1275回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は10月17日公開の『ストロベリームーン 余命半年の恋』と『おーい、応為』をご紹介します。

画像を見る(全13枚) (C)2025「ストロベリームーン」製作委員会
『ストロベリームーン 余命半年の恋』泣けるベストセラー小説が、待望の実写映画に
「令和イチ泣ける」とティーンを中心に大きな反響を巻き起こした、芥川なおのベストセラー小説を実写映画化した『ストロベリームーン 余命半年の恋』。タイトルにもなっているストロベリームーンとは、6月の月を指す俗称。“恋を叶えてくれる月”という異名を持ち、好きな人と一緒に見ると永遠に結ばれると言われているとか。
そんなロマンティックな月を題材に、余命わずかな女子高生が一生分の恋とまっすぐに向き合う姿を瑞々しく描き出した、純粋無垢なラブストーリーが誕生しました。
『ストロベリームーン 余命半年の恋』のあらすじ
幼い頃から病弱で学校にも通えず、家の中で過ごす毎日を送っている桜井萌。15歳の彼女は余命半年の宣告を受けるが、高校に進学することを決意する。
入学式の日、萌は同じクラスになった佐藤日向に告白する。病院で宣告を受けた帰り道、偶然見かけた日向を運命の相手だと感じたからだ。
萌からの猛アプローチで付き合うことになり、初めて“恋人”と呼べる存在が出来た萌と日向。2人は萌の誕生日に、念願のストロベリームーンを見るが、その日を境に、萌は音信不通になってしまう。
萌が消えた理由、そして13年後に明かされる真実とは……。
『ストロベリームーン 余命半年の恋』のみどころ
主人公の桜井萌を演じたのは、いま最注目の女優・當真あみ。残酷すぎる現実に屈することなく懸命に生きようとする、明るくて快活なヒロインを熱演。それだけでなく、萌が内に秘めている悲しみや儚さ、そして芯の強さを見事に体現しており、懐の深い芝居からは包容力さえ感じられます。
佐藤日向役は、「第48回日本アカデミー賞」で新人俳優賞を受賞するなど、今後の活躍が期待されている齋藤潤。萌からの突然の告白に戸惑いながらも彼女に惹かれていく心情の変化を、繊細に表現しています。
また13年後の日向役・杉野遥亮、そして同じく13年後の萌の親友・高遠麗役の中条あやみの存在も、見逃せないところ。高校生の頃とその13年後が交錯しながら進むストーリー展開に、より深みを与える好演をみせています。
さらに、萌の両親にユースケ・サンタマリアと田中麗奈が扮し、脇をしっかりと固めているのも必見です。
限られた時間と知りながらも、全力で恋をする萌と日向の姿に胸が締め付けられ、忘れられない想いを抱えたまま大人になった日向に切なさを覚えてしまう本作。ピュアすぎるラブストーリーでありながら、2人を見守る両親や友人たちの思いも丁寧に描かれており、あらゆる世代の人の涙を誘う作品となっています。
中秋の名月に代表されるように、10月は、月がもっとも美しく見える時期。柔らかな月の光のような優しさに満ちたラブストーリーを、じっくりと堪能してみて。
『おーい、応為』葛飾北斎の娘の知られざる人生に迫る
世界中に熱狂的なファンを持つ日本を代表する浮世絵師・葛飾北斎の娘、葛飾応為。北斎の弟子でもあった彼女は、父親ゆずりの画才と豪胆さを持ち、数少ない女性絵師として江戸時代に活躍しました。そんな応為の生き様を描いたのが、時代劇映画『おーい、応為』。
絵師の元に嫁ぐも、夫の絵を見下したことで離縁されてしまった、葛飾北斎の娘・お栄。父が暮らすボロ長屋に出戻り、再び同居を始めることとなる。
絵筆を握る父の背中を見つめながら、自らの絵を描き始めたお栄は、やがて才能を発揮していく。北斎から「葛飾応為」という画号を授かったお栄は、浮世絵師として男社会をわたり歩いていく……。
「美人画では敵わない」と、北斎をも言わしめる才能を持ちながら、短気で気が強くて、煙草と犬が大好き。大胆に自由に生きる応為を、長澤まさみが伸びやかに演じています。
主演の長澤まさみはもちろん、葛飾北斎役の永瀬正敏をはじめとした俳優たちの生き生きとした姿が小気味よく、まるで江戸の町に暮らす人々の息遣いまで伝わってくるよう。
芸術の秋。名画が生み出される原動力に触れることが出来る一作です。

(C)2025「ストロベリームーン」製作委員会
<作品情報>
ストロベリームーン
2025年10月17日(金)から全国ロードショー
出演:
當真あみ 齋藤 潤 / 杉野遥亮 中条あやみ
池端杏慈 黒崎煌代 吉澤要人
伊藤健太郎 泉澤祐希 黒島結菜 池津祥子 橋本じゅん
田中麗奈 ユースケ・サンタマリア
原作:芥川なお「ストロベリームーン」(すばる舎)
脚本:岡田惠和
監督:酒井麻衣
音楽:富貴晴美
主題歌:ORANGE RANGE「トワノヒカリ」 (Sony Music Labels Inc.)
制作プロダクション:オフィスクレッシェンド
配給:松竹
(C)2025「ストロベリームーン」製作委員会
公式サイト https://movies.shochiku.co.jp/stmoon-movie/

(C)2025「おーい、応為」製作委員会
<作品情報>
おーい、応為
2025年10月17日(金)から全国ロードショー
出演:
長澤まさみ 髙橋海人 大谷亮平 篠井英介 奥野瑛太 寺島しのぶ 永瀬正敏
和田光沙 吉岡睦雄 早坂柊人 笠久美 一華 小林千里
監督・脚本:大森立嗣
原作:飯島虚心 『葛飾北斎伝』(岩波文庫刊) / 杉浦日向子 『百日紅』(岩摩書房刊) より 「木瓜」「野分」
配給:東京テアトル ヨアケ
(C)2025「おーい、応為」製作委員会
公式サイト https://oioui.com/
連載情報

Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/