Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1273回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は10月3日に公開された『火喰い鳥を、喰う』『ワン・バトル・アフター・アナザー』をご紹介します。

画像を見る(全13枚) (C)2025「火喰い鳥を、喰う」製作委員会
『火喰い鳥を、喰う』執着が、人を、現実を変えていく
第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞を受賞した原浩による小説『火喰い鳥を、喰う』。ジャンルを跨ぐ巧妙なストーリー展開で高い評価を受けた傑作が、待望の実写映画となりました。
“謎の日記”を手にしたことをきっかけに、不可解な出来事が起こる様子をスリリングに描き出した衝撃作です。
『火喰い鳥を、喰う』のあらすじ
妻・夕里子と共に信州で暮らす、大学助教授の久喜雄司。ある日、彼らの元に、戦死した先祖・久喜貞市の日記が届く。
そこに綴られていたのは、戦地での壮絶な日々と、生きることへの貞一の異様なまでの執念。そして最後のページには「ヒクイドリ、クイタイ」と記されていた。
その日を境に、久喜夫婦の周辺では奇妙な事件が頻発。事の真相を探るため、雄司たちは夕里子の知人で超常現象専門家である北斗総一郎の力を借りることに。
すると、想像を超えた驚愕の世界が彼らの前に現れて……。
『火喰い鳥を、喰う』のみどころ
主人公・久喜雄司役は、本作が映画単独初主演となる水上恒司。貞市の日記を読んだことから平穏な生活が一変。奇怪な出来事に苦悩し、北斗の言葉に翻弄されていく。そんな男の心情を、徹底した“受け身の芝居”で丹念に表現しています。
そして雄司の妻・久喜夕里子を演じたのは、乃木坂46を卒業後、俳優としての活躍が目覚ましい山下美月。儚げでありながらも凛とした強さを併せ持つ女性像をしなやかに体現しました。
また物語のキーパーソンとなる北斗総一郎に扮したのが、Snow Manの宮舘涼太。ミステリアスなキャラクターも見事に自分のものとし、外連味ある演技で観客を魅了します。
共演には森田望智、豊田裕大、麻生祐未など、豪華なキャストが集結。先読み不能なミステリー映画が誕生しました。
横溝正史原作の映画『犬神家の一族』に代表されるような正統派ミステリーの流れを汲みながら、物語が進むにつれて、“死者の思い”が現実をも変えていくという、ファンタジーともSFとも取れるようなテイストが加味されていくのが、本作の面白いところ。
これほどまでに軽々とジャンルの壁を越えてしまうのか……、と感嘆せずにはいられない、唯一無二の世界観を堪能することができます。それと同時に、現実をも侵食してしまう人間の執着や思念の悍ましさに、ジワジワとした恐怖さえ感じずにはいられません。
生きることに執着した“死者の思い”は、一体どこに行き着くのか。驚愕の真相は、スクリーンで確認してみて。
『ワン・バトル・アフター・アナザー』3大オスカー俳優共演の話題作
最愛の娘と平和に暮らす、元革命家のボブ。ところがある日、娘が誘拐されてしまった。
次々と送り込まれてくる刺客たちと死闘を繰り返すうちに、ボブの中に眠っていた革命家時代の闘争心がよみがえってくる……。
世界3大映画祭(カンヌ、ベルリン、ヴェネチツィア)で監督賞を制覇した唯一の監督、ポール・トーマス・アンダーソンの最新作『ワン・バトル・アフター・アナザー』。レオナルド・ディカプリオ、ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロという、3大オスカー俳優の共演で話題。
そして「タイトルが覚えられない」というテレビスポットでも注目されている一作です。
娘を溺愛しているのに、肝心な時に合言葉が思い出せないボブ(レオナルド・ディカプリオ)。執拗にボブを追い詰める変態軍人“ロック・ジョー”(ショーン・ペン)。ボブがピンチになると必ず現れる、空手道場の“センセイ”(ベニチオ・デル・トロ)。この破天荒なキャラクター設定だけでも、映画ファンの食指が動くこと間違いなし。
何もかもがクレイジー! そして、観る者を興奮の坩堝へと導いてくれる! この秋、マストチェックなエンターテインメント超大作です。

(C)2025「火喰い鳥を、喰う」製作委員会
<作品情報>
火喰い鳥を、喰う
2025年10月3日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
出演:
水上恒司 山下美月
森田望智 吉澤健 カトウシンスケ 豊田裕大
佐伯日菜子 足立正生 小野塚勇人 / 麻生祐未
宮舘涼太(Snow Man)
監督:本木克英
原作:原浩「火喰鳥を、喰う」(角川ホラー文庫 / KADOKAWA刊)
脚本:林民夫
音楽:富貴晴美
主題歌:マカロニえんぴつ「化け物」(トイズファクトリー)
製作幹事:ギャガ KADOKAWA
制作プロダクション:アークエンタテインメント
企画・制作:フラミンゴ
配給:KADOKAWA ギャガ
(C)2025「火喰い鳥を、喰う」製作委員会
〈第40回 横溝正史ミステリ&ホラー大賞〉大賞受賞作
公式サイト https://gaga.ne.jp/hikuidori/

(C)2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
<作品情報>
ワン・バトル・アフター・アナザー
2025年10月3日(金)から全国公開
IMAX(R)/Dolby Cinema(R) 同時公開
出演:レオナルド・ディカプリオ ショーン・ペン ベニチオ・デル・トロ レジーナ・ホール テヤナ・テイラー チェイス・インフィニティ
監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
撮影:マイケル・バウマン ポール・トーマス・アンダーソン
衣装:コリーン・アトウッド
音楽:ジョニー・グリーンウッド
原題:ONE BATTLE AFTER ANOTHER
字幕:松浦美奈
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト obaa-movie.jp
連載情報

Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/