『風のマジム』伊藤沙莉主演、沖縄のサトウキビでラム酒を作る!
公開: 更新:
Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1271回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
「昭和100年」にあたる2025年。様々な角度から「昭和」を振り返るうえで外せないのが、沖縄の存在です。美しい海と空。そこに住む人々の大らかな心。国内の南国リゾート地として人気が高い一方で、かつては太平洋戦争の激戦地となり、戦後は長きにわたって米軍の施政下にあったという重い歴史も刻まれている場所です。
そこで今回は、沖縄が舞台の映画をご紹介。全国の映画館にて公開中の『風のマジム』と『宝島』をご紹介します。

画像を見る(全12枚) (C)2025 映画「風のマジム」
『風のマジム』ひとりの女性が思い描いた夢が、奇跡へとつながる
新作を出せば必ずと言ってもいいほど話題になる人気小説家、原田マハ。映画・ドラマ化されることも多い彼女の小説の中で、累計14万部を突破している同名小説を実写映画化したのが『風のマジム』です。
“まじむ”とは、沖縄の方言で“真心”のこと。契約社員から社長になった女性の実話をハートフルに描いたヒューマンドラマです。
『風のマジム』のあらすじ
那覇で豆腐店を営む祖母と母と一緒に暮らしながら、通信会社の派遣社員として働いている伊波まじむ。ある日、通いつけのバーでラム酒の美味しさに目覚めた彼女は、その原料がサトウキビだということを知る。
その頃、社内ではベンチャーコンクールが開催されることに。ラム酒の魅力の虜になってしまったまじむは、南大東島産のサトウキビを使ったラム酒を作ることを提案するが……。
『風のマジム』のみどころ
主人公の伊波まじむを演じたのは、確かな演技力で定評がある伊藤沙莉。ごくごく普通の派遣社員が周囲の人々を巻き込みながら自分の夢を叶えていく女性を、生き生きと体現しています。
また劇中では、自身初となる沖縄弁を披露。柔らかくて独特の温かみが感じられ、伊藤沙莉の新たな魅力を引き出してくれています。
共演には高畑淳子、富田靖子、染谷将太、滝藤賢一、シシド・カフカといった実力派キャストが集結。また尚玄、川田広樹、肥後克広など、沖縄出身の俳優・タレントが出演しているのも注目ポイントですよ。
実話の映画化と聞くと、ハッピーなサクセスストーリーなのだろうなぁと予測してしまいがちですが、フタを開けてみると、これが困難の連続で。新規事業を立ち上げるということが如何に大変なことなのかということを、窺い知ることができます。
それでも決して諦めず、夢に向かって突き進んでいくヒロインを観ているうちに、気がつけば応援してしまう人も多いことでしょう。
本作の根底に流れているものは、故郷を大切に思う気持ちと、関わるすべての人に幸せを届けたいという真心。いま、何かを頑張っている人。頑張りたいけど、自分に自信が持てない人。そんなすべての人たちの背中をそっと押してくれる感動の1本です。
『宝島』不条理に抗う若者たちの姿を鮮烈に描く
第160回直木賞など3冠に輝いた真藤順丈の同名小説を映画化した『宝島』。アメリカの統治下に置かれていた頃の沖縄を舞台に、自由を求めて駆け抜けた若者たちの友情と葛藤を映し出したサスペンス超大作です。
1952年、沖縄がアメリカだった時代。いつか“でっかい戦果”を上げることを夢見ている、幼馴染のグスクとヤマコとレイの3人。彼らはアメリカ軍基地から食料や生活用品を奪って住民に分け与えた“戦果アギヤー”と呼ばれていて、その英雄的存在だったのがリーダーのオンだった。
ところがある襲撃の夜、オンは姿を消してしまう。
大人になった3人は“本物の英雄”になるべく、それぞれの道を歩み始める。しかしアメリカに支配され、本土からも見捨てられた環境では、何も思い通りにならない。その現実に、やり場のない怒りを募らせていた……。
妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太をはじめ、豪華キャストが顔を揃える本作。俳優たちの熱量の高い演技から目が離せず、本土復帰前の沖縄を追体験しているような錯覚さえ覚えてしまいます。
本物の英雄とは。そして、タイトルが示す“宝”とは何か。「昭和100年」の今こそ知るべき“沖縄”が描かれた意欲作です。

(C)2025 映画「風のマジム」
<作品情報>
風のマジム
全国公開中
出演:伊藤沙莉 染谷将太 尚玄 シシド・カフカ 橋本一郎 小野寺ずる なかち 下地萌音 川田広樹 眞島秀和 肥後克広 滝藤賢一 富田靖子 高畑淳子
監督:芳賀薫
原作:「風のマジム」原田マハ(講談社文庫)
音楽:高田漣
主題歌:「あの世でね」森山直太朗(ユニバーサル ミュージック)
製作:オーロレガルト
制作プロダクション:ポトフ
製作・配給:コギトワークス
共同配給:S・D・P
特別協力:グレイス・ラム
(C)2025 映画「風のマジム」
公式サイト https://majimu-eiga.com/

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会
<作品情報>
宝島
2025年9月19日(金)から全国ロードショー
出演:
妻夫木聡 広瀬すず 窪田正孝 永山瑛太
塚本晋也 中村蒼 瀧内公美 栄莉弥 尚玄 ピエール瀧 木幡竜 奥野瑛太 村田秀亮 デリック・ドーバー
監督:大友啓史
脚本:高田亮 大友啓史 大浦光太
音楽:佐藤直紀
原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫)
後援:沖縄県
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会、JLOX、JLOX+
製作:「宝島」製作委員会
製作幹事:電通
製作プロダクション:クロスメディア
配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会
公式サイト https://www.takarajima-movie.jp/
連載情報

Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/