『ベートーヴェン捏造』山田裕貴主演、19世紀ウィーンの史実を日本で実写映画化!?

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Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1270回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

今回は、9月12日に公開された『ベートーヴェン捏造』と『Dear Stranger / ディア・ストレンジャー』をご紹介します。

『ベートーヴェン捏造』山田裕貴主演、19世紀ウィーンの史実を日本で実写映画化!?

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『ベートーヴェン捏造』果たして本当に“偉大な人”だったのか?

突然ですが皆さん、19世紀に活躍した音楽家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンについて、どんなイメージを持ってますか?

孤高の天才。革命児。歴史に残る数多くの曲を生み出した偉大な人。崇高なイメージを持たれているベートーヴェンですが、そんなイメージが第三者によって作り上げられた“でっち上げ”だったとしたら……。

映画『ベートーヴェン捏造』は、かげはら史帆による歴史ノンフィクション「ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく」を実写映画化したもの。偉大なる天才作曲家は、実は下品で小汚いおじさんだった!? 音楽史上最大のスキャンダルが、この秋、スクリーンに登場しました。

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『ベートーヴェン捏造』のあらすじ

19世紀、ウィーン。金も職歴もないヴァイオリニストのシンドラーは、少年時代から尊敬していた音楽家・ベートヴェンに出会い、秘書となる。ところが秘書として働くうちに知った実際の彼は、癇癪持ちで女好き。憧れとはまるでかけ離れた人物だった。

それでも、耳が聴こえないベートーヴェンと筆談でコミュニケーションを取りながら、忠実に働くシンドラー。しかし生真面目すぎる彼は、次第にベートーヴェンから煙たがられるようになる。二人の仲は決裂し、短期間で秘書としての関係性は崩れてしまった。

ベートーヴェンの死後、後任の秘書・ホルツが彼の伝記を刊行しようとしていると知ったシンドラーは、ベートーヴェンの真の姿が明るみになることを恐れ、自ら伝記を書くことを決意。やがて彼は、ベートヴェンを“聖なる天才音楽家”へと仕立てるために、ある罪を犯すことになる……。

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『ベートーヴェン捏造』のみどころ

ベートーヴェンの秘書・シンドラーを演じたのは、本作が2025年3本目の映画主演作となる山田裕貴。邪険に扱われながらも、ベートーヴェンへの重すぎる愛を捧げ続ける男を好演しています。

一方、シンドラーから熱烈に敬愛されるベートーヴェン役には、舞台・ドラマ・映画への出演が絶えない古田新太。私たちが知るイメージのベートーヴェンとは真逆の、でもどこか憎めない“おじさん”をチャーミングに演じています。

共演には染谷将太、神尾楓珠、前田旺志郎、小澤征悦、生瀬勝久、小手伸也、野間口徹、遠藤憲一といったバラエティ豊かなキャストが集結。皆さんが演じたのは、もちろん19世紀のウィーンに生きるベートーヴェンを取り巻く人々。日本を代表する実力派俳優たちが、実写映画で西洋の実在の人物に扮する。それだけを聞くと「これはコントですか?」と言いたくなるところですが、芝居への向き合い方は真摯そのもの。

どこの国に生きる人物であっても、リアリティをもって説得力のあるキャラクターを創り上げる様子は、演技巧者だからこそなせる技とも言えるでしょう。

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脚本を手がけたのは、原作者のかげはら史帆が“日本語の魔術師”と絶賛するバカリズム。もしもベートーヴェンやシンドラーが日本語で話したとしたら、こんな風に生き生きと、そして飄々と言葉を交わすのだろうなぁ〜と、観る者の創造力を掻き立てるほど言葉のチョイスが秀逸。あちらこちらに“バカリズム節”が炸裂しているのも、本作の面白いところです。

果たしてシンドラーは、どのようにして真実を嘘で塗り替えたのか。驚愕の史実を、スクリーンで目撃して。

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(C)Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.

『Dear Stranger / ディア・ストレンジャー』ある事件をきっかけに、人生の歯車が狂い出す……

ニューヨークで暮らす、日本人の賢治と中華系アメリカ人の妻ジェーン。母国語ではない言葉を話し、働き、子どもを育てながら、忙しい日々を送っている。

ある日、4歳の息子が失踪。警察は誘拐事件とみて、夫婦は事情聴取を受けることに。悲劇に翻弄されるなか、2人はこれまで内に秘めていた本音や秘密が露呈。夫婦間の溝が深まっていくが……。

全編ニューヨークロケ、英語で撮影されたヒューマン・サスペンス『Dear Stranger / ディア・ストレンジャー』。誘拐事件に端を発し、夫婦の絆の脆さや、他民族国家で共存していくことの困難さが浮き彫りとなってくる本作。国内外で活躍の場を広げる西島秀俊と、台湾出身の俳優グイ・ルンメイが、崩壊していく夫婦の姿を野生味あふれる演技で体現しています。

監督・脚本を務めたのは、鬼才・真利子哲也監督。ヒリヒリとした手触りの作風ながらも、愛について考えずにはいられない一作。私の中では、2025年に観た映画の中でも一二を争う秀作です。

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<作品情報>
ベートーヴェン捏造
2025年9月12日(金)から全国ロードショー

出演:
山田裕貴
染谷将太 / 神尾楓珠 前田旺志郎 小澤征悦
生瀬勝久 小手伸也 野間口徹 遠藤憲一
古田新太

原作:かげはら史帆『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』(河出文庫刊)
脚本:バカリズム
監督:関和亮
メインテーマ曲演奏:清塚信也
製作:Amazon MGM スタジオ
制作プロダクション:松竹
制作協力:ソケット
企画・配給:松竹
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公式サイト https://movies.shochiku.co.jp/beethoven-netsuzou/

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<作品情報>
Dear Stranger / ディア・ストレンジャー
2025年9月12日(金)からTOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー

出演:西島秀俊、グイ・ルンメイ
監督・脚本:真利子哲也
英題:Dear Stranger
配給:東映
(C)Roji Films,TOEI COMPANY,LTD.
公式サイト https://d-stranger.jp/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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