番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
2020年で解散からちょうど50年が経ちますが、いまだに人気が衰えないザ・ビートルズ。先月(9月)、アルバム『アビイ・ロード』の50周年記念エディションが世界で同時発売され、母国・イギリスで50年ぶりのチャート1位を獲得し、話題になりました。
きょうは「『この声大好き』収穫祭!」にちなみまして、ビートルズのメンバー、ジョン・レノンとポール・マッカートニーの、歌声をめぐる絆のストーリーをご紹介します。
いまからちょうど50年前、1969年9月に発売された『アビイ・ロード』。ビートルズの4人が横一列に並んで、横断歩道を渡るジャケットでもおなじみのこのアルバム。レコーディングスタジオのすぐそばにある通りの名前が、そのままタイトルになりました。
当時、グループの方向性をめぐって対立が生じ、メンバー間の関係が揺らぎつつあったビートルズ。結果的に、4人がスタジオに集まってレコーディングを行ったのは『アビイ・ロード』が最後になり、実質的なラストアルバムになりました。
ビートルズはデビュー以来、主にジョンとポールが創り出す斬新な楽曲で人気を集めて来ましたが、彼らはまた、絶妙なコーラスワークで魅せるグループでもありました。特に、好対照をなすジョンとポールの歌声が奏でるハーモニーは絶品でした。
「ポールは、まるで女の子のような高い声が出せるんだぜ!」
ジョンは音域が広く、抜群の声量を誇り、七色の声を出せるポールの声が大好きでした。一方、ポールも低音が響き、ちょっとかすれていてワイルドなジョンの声が大好き。お互いコーラスの入る曲では、相手の声の魅力が最大限発揮されるように曲を作っていたのです。
ポールはある音楽誌のインタビューで、こう告白しています。「曲を書いていて行き詰まると、ジョンに向かったつもりで曲を弾いてみるんだ。『どうだい、ジョン?』『それはないだろ!』『これでどう?』『そっちの方がまだマシだな』…そんなやりとりを、僕は失いたくないんだ」。
『アビイ・ロード』の収録曲のなかで、とりわけ美しいハーモニーが聴けるのが『ビコーズ』です。
ジョンの妻、オノ・ヨーコさんがピアノでベートーベンの『月光』を弾いていたとき、ジョンが茶目っ気で楽譜を上下さかさまにしたところ、ヨーコさんはそのまま弾いてみせました。そのメロディにヒントを得てジョンが書き上げたという、『アビイ・ロード』屈指の美しい曲です。
この曲をさらに魅力的なものにするために、ジョンは、ポールとジョージにコーラスを依頼し、こんな試みをしました。ポールが高音域、ジョンが中音域、ジョージが低音域を担当。3人がそれぞれ3回ずつ歌をレコーディングして、合わせて9つの歌声を重ねたのです。
「空が青いから 僕は泣けてくる だって 空が青いから」
後にジョンが書いたソロ作品「イマジン」にも通じるシンプルな歌詞が、極上のハーモニーによってより胸を打つものになり、『ビコーズ』は『アビイ・ロード』のなかでも屈指の名曲になりました。
「ポール、君は高音のパートで思う存分、自分の力を発揮してくれ。俺は下のパートで、いいとこ見せるから」……そんなジョンの思いにしっかり応えたポールは、後にこう語っています。
「僕が『アビイ・ロード』のなかでいちばん好きな曲は、『ビコーズ』だよ」
八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50
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