時間無制限で野菜が採れる観光農園「秦野いとう農園」
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番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
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『秦野いとう農園』おくら畑のようす
自分で新鮮な野菜や果物が収穫できて、採ったものをその場ですぐ食べることもできる「観光農園」。きょうは元サラリーマンで、40代で会社を辞めて就農。時間無制限で採れたての野菜を畑で味わえる観光農園を始めた、園長さんのグッとストーリーです。
園長さんはなぜ、この観光農園を始めたのでしょうか?
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『秦野いとう農園』オーナーの伊藤隆弘さん
新宿から電車で1時間ほど、丹沢の山並みも近く、自然も豊かな神奈川県秦野市。ここで15年前に「秦野いとう農園」を開業したのが、伊藤隆弘さん・60歳です。
「畑は野菜のショーウィンドウ」が伊藤さんのモットー。秦野いとう農園では、夏はきゅうり、トマト、おくら、とうもろこしなどを時間無制限で採ることができ、新鮮な野菜をその場でそのまま味わえます。
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農園で育ったおくらの実と、つぼみ
「きゅうりは、ほら、こうして“ねじねじ”すれば採れるよ。ちょっとやってごらん!」
そんなふうに実演しながら、子どもたちに説明する伊藤さん。畑で実際になっているキュウリを初めて見る子どもたちにとっては、興味津々。夏場で特に人気なのが、とうもろこし。畑でもいだものを、茹でたり焼いたりすることなく、そのまま生で食べることができます。
「皮が固くなる前のとうもろこしは軟らかくて、採ったものをそのまま食べられるんです。甘くて、とってもおいしいですよ」
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農園のビニールハウス外観
時間を気にせず好きなだけ収穫体験ができる、いとう農園。野菜のお土産も付いていて、子どもの食育にも役立つと、家族で訪れるお客さんも多いそうです。
もともと電機メーカーのサラリーマンだった伊藤さん。30代で子どもができて、農業に目覚めました。「子どもに安全なものを食べさせたい、と思ったのがきっかけで、農業は生きる基本となる仕事だ、人生後半はこれを生業にしたい、と考えたんです」と言う伊藤さん。
会社に勤めながら5年間、休日に農家へ通って基礎を学び、15年前に会社を辞め脱サラ。畑を貸してくれる地主さんが見つかった秦野市で、新規に農業を始めました。
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色とりどりのトマトは評判のおいしさ
当時の妻には反対され、離婚も経験しましたが、それでも我が道を行ったのは、農業を志す若い人がちゃんと収益を上げて食べて行けるモデルケースを作りたかったから。そのための1つのアイデアが、10年前に始めた「観光農園」でした。
「自分が初めて農家へ修業に行ったとき、いつもスーパーで見るきゅうりが、畑で生き生きとツルにぶら下がっているのを見て、その新鮮で美しい姿に感動したんです。お客さんにもあの感動を味わってもらいたいと思って……」
トマトを栽培しているビニールハウスでは、赤・黄色・オレンジなどさまざまな色のトマトが収穫でき、味比べをすることもできます。秦野いとう農園のトマトは甘くておいしいと評判ですが、その秘密はビニールハウスにありました。
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手間ひまかけて育てられているトマト
トマトは暑すぎると味が落ちてしまいますが、いとう農園のハウスは、天井がネットになっていて密閉されていないので、夏場でもなかが高温になりすぎないのです。しかし突然、雨が降って来たときは大変。伊藤さんはハウスに駆け付け、天井にビニールをかぶせます。
「でも、おいしいトマトを育てるためなら、ちっとも苦にはならないです」
伊藤さんのそんなこだわりが評判を呼び、口コミやネットで秦野いとう農園を知って、遠くから訪れる人も増えました。
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ビニールハウス天井部分 ネット素材のため夏でも高温になりにくい
5年前、山梨県を記録的な大雪が襲い、山梨に近い秦野市でも農業に大きな被害が出ました。秦野いとう農園でもビニールハウスが雪の重みで潰れ、そのとき育てていたレタスが全滅……。心が折れそうになりましたが、行政の支援もあって再びハウスを建て直し、栽培を再開。
伊藤さんを支えてくれたのが、10年前に再婚した同い年の小夜子夫人です。ブルーベリーの農園は小夜子さんが担当。二人三脚で、秦野いとう農園を切り盛りしています。
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ビニールハウス内のトマト
2019年、夫婦で還暦を迎えた伊藤さん。後継者を育てることも、これからの目標です。
「野菜は生きている、というのが、うちの農園に来てもらえればわかりますよ。私がかつて畑で味わった感動を若い世代に伝えて、農業を志す若い人たちが増えたら嬉しいですね」
八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50