追悼、三浦春馬さん その輝きは永遠に……
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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第875回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
2020年7月18日に30歳という若さで死去した、三浦春馬さん。
映画・ドラマ・舞台など俳優として幅広く活躍し、その実力と魅力は年を重ねるごとに増すばかり。これからがますます楽しみな俳優さんのひとりでした。そんな彼の突然の死は、日本のみならず海外にも衝撃を与え、いまも多くの人が哀悼の意を捧げています。
この連載でも「いつか三浦春馬さんの出演作をご紹介できれば……」という思いがありましたが、まさか「追悼」という形で実現することになるとは思いもよりませんでした。
そこで今回は、日本の俳優界において、かけがえのない存在としての三浦春馬さんを偲びつつ、代表的な映画出演作5タイトルを振り返りながら、その輝かしい軌跡を辿って見たいと思います。
『キャッチ ア ウェーブ』屈託のない笑顔とキラキラした瞳は変わらず
まずは、初主演作となった『キャッチ ア ウェーブ』。湘南を舞台に、落ちこぼれ高校生たちがサーフィンと恋を通じて成長して行く様子を爽快に描いた青春映画です。
水中撮影などを駆使し、サーフィンの魅力を余すところなくとらえた映像は迫力満点。本格的なサーフィン映画としても注目を集めました。
この映画がきっかけでサーフィンと出会い、夢中になって行ったという三浦春馬さん。自身のSNSには波乗りショットが度々アップされていたので、ご存知の方も多いかも知れませんね。
いま本作を見ると、まだ声変わりする前の三浦さんの姿は初々しい限り。そして屈託のない笑顔とキラキラとした瞳の輝きは、当時から変わっていないと気づかされることでしょう。
『君に届け』イケメン俳優がみせる正統派の輝き
続いては、椎名軽穂による人気コミックを実写映画化した『君に届け』。素直で純粋ながら見た目が暗いために孤立しがちな女子高生と、クラスの人気者との交流を描いた学園青春ドラマです。
本作で三浦さんが演じたのは、クラスの人気者・風早翔太。明るく爽やかで、誰にでも分け隔てなく接する優しさに満ちたキャラクターは、まるで三浦さんの人柄をそのまま映し出しているかのよう。
ダブル主演を務めた多部未華子さんとは、ドラマ「僕のいた時間」(2014年)、映画『アイネクライネナハトムジーク』(2019年)でも共演。約4年ごとの共演について「まるでオリンピックカップルみたい!」と、ファンの間でも話題となりました。
さらに4年後、お二人の4度目の共演は叶わない夢となってしまい、惜しまれるばかりです。
『真夜中の五分前』美しい双子姉妹に翻弄される、美しすぎる三浦春馬
行定勲監督がメガホンを取り、本多孝好のベストセラー恋愛小説を映画化した『真夜中の五分前』。美しい双子の姉妹をそれぞれ愛した2人の男性と彼女たちが織り成す、切なくもはかない愛の物語です。
本作では主人公の時計修理工を演じた三浦春馬さん。1ヵ月間の海外ロケ、中国・台湾キャストとの共演、そして全編中国語での芝居と、出演作のなかでも自身初となる挑戦が多かった作品だったのではないでしょうか。
特に中国語のセリフは、撮影の合間にも練習を繰り返し、共演のリウ・シーシーやチャン・シャオチュアンが舌を巻くほどの上達ぶりだったとか。
静かに穏やかに展開されるストーリーのなかで、美しすぎる三浦さんの表情を堪能できる1作でもあります。
『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』2部作を通じて垣間見える、“座長”三浦春馬のリーダーシップ
諫山創の大人気コミックを、樋口真嗣監督をはじめ最高峰のクリエイターが実写化した『進撃の巨人』前後篇。
『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』で、主人公・エレンを演じた三浦春馬さん。がむしゃらでまっすぐなキャラクターを、エモーショナルに体現しています。
その姿からは、錚々たるキャスト・スタッフが集結したビッグプロジェクトの“座長”として、チームを牽引して行く三浦さん自身と重なる部分も。妥協を許さない彼の仕事ぶりが随所に感じられるエンターテインメント作品です。
『コンフィデンスマンJP ロマンス編』もう一度会いたい! ジェシー=三浦春馬!!
“欲望”や“金”をテーマに、3人の信用詐欺師が欲望にまみれた人間たちから大金を騙し取る痛快エンターテインメント『コンフィデンスマンJP』。
劇場版第1作となった『ロマンス編』で三浦さんが演じたのは、香港マフィアの女帝が所有するダイヤを狙う天才恋愛詐欺師・ジェシー。クールな声で甘い言葉をささやき、輝く瞳で女性を一瞬で虜にしてしまうジェシーに、文字どおり“ハマって”しまった女性も多いはず。
ファンからスピンオフ作品誕生を期待する声が上がるほどの人気キャラクターへと昇華させたのは、俳優・三浦春馬の実力と華があったからと言っても過言ではないでしょう。
最新作『コンフィデンスマンJP プリンセス編』でも、その存在感は健在。脚本家の古沢良太氏が「こんなに魅力的なキャラクターを書いた記憶がない」と追悼コメントを寄せるほど麗しいジェシーに、何度でもスクリーンで会いたいものですね。
真面目で一生懸命で、人間的な魅力にあふれていた三浦春馬さん。彼が情熱を注いだ作品は、永遠に輝き続けることでしょう。
ご冥福を心よりお祈り申し上げます。
■キャッチ ア ウェーブ(2006年公開)
DVDリリース デジタル配信中
監督:高橋伸之
原作・脚本:豊田和真
音楽:DEPAPEPE
主題歌:Def Tech「Catch The Wave」
出演:三浦春馬、加藤ローサ、木村了、濱田岳、益戸育江(特別出演)、とよた真帆、坂口憲二、竹中直人、三船力也、桂亜沙美、西宮佑騎
■君に届け(2010年公開)
Blu-ray&DVDリリース デジタル配信中
監督:熊澤尚人
原作:椎名軽穂「君に届け」(集英社/別冊マーガレット連載)
脚本:根津理香・熊澤尚人
音楽:安川午朗
主題歌:「君に届け」flumpool(A-Sketch)
出演:多部未華子、三浦春馬、蓮佛美沙子、桐谷美玲、夏菜、青山ハル、金井勇太、富田靖子(特別出演)、ARATA、勝村政信
■真夜中の五分前(2014年)
DVDリリース デジタル配信中
監督:行定勲
原作:本多孝好「真夜中の五分前 five minutes to tomorrow(side-A・side-B)」(新潮文庫刊)
脚本:堀泉杏
音楽:半野喜弘
出演:三浦春馬、リウ・シーシー(劉詩詩)、チャン・シャオチュアン(張孝全)
■進撃の巨人 ATTACK ON TITAN(2015年)
Blu-ray&DVDリリース デジタル配信中
監督:樋口真嗣
原作:諫山創(講談社「別冊少年マガジン」連載中)
特撮監督:尾上克郎
脚本:渡辺雄介、町山智浩
音楽:鷺巣詩郎
主題歌:SEKAI NO OWARI「ANTI-HERO」(TOY’S FACTORY)
出演:三浦春馬、長谷川博己、水原希子、本郷奏多、三浦貴大、桜庭ななみ、松尾諭、渡部秀、水崎綾女、武田梨奈、石原さとみ、ピエール瀧、國村隼
■進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド(2015年)
監督:樋口真嗣
原作:諫山創(講談社「別冊少年マガジン」連載中)
特撮監督:尾上克郎
脚本:渡辺雄介、町山智浩
音楽:鷺巣詩郎
主題歌:SEKAI NO OWARI「SOS」(TOY’S FACTORY)
出演:三浦春馬、長谷川博己、水原希子、本郷奏多、三浦貴大、桜庭ななみ、松尾諭、渡部秀、水崎綾女、武田梨奈、石原さとみ、ピエール瀧、國村隼
■コンフィデンスマンJP ロマンス編(2019年)
Blu-ray&DVDリリース デジタル配信中
監督:田中亮
脚本:古沢良太
音楽:fox capture plan
主題歌:Official髭男dism「Pretender」(ポニーキャニオン/ラストラム・ミュージックエンタテインメント)
出演:長澤まさみ、東出昌大、小手伸也、小日向文世 織田梨沙、瀧川英次、Michael Keida、前田敦子、佐津川愛美、岡田義徳、桜井ユキ、生瀬勝久、山口紗弥加、小池徹平、佐藤隆太、吉瀬美智子、石黒賢、竹内結子、三浦春馬、江口洋介
■コンフィデンスマンJP プリンセス編
大ヒット公開中
監督:田中亮
脚本:古沢良太
音楽:fox capture plan
主題歌:Official髭男dism「Laughter」(ポニーキャニオン/ラストラム・ミュージック・エンターテインメント)
出演:長澤まさみ、東出昌大、小手伸也、小日向文世、織田梨沙、関水渚、瀧川英次、前田敦子、ビビアン・スー、白濱亜嵐、古川雄大、滝藤賢一、濱田岳、濱田マリ、デヴィ・スカルノ、石黒賢、生瀬勝久、柴田恭兵、北大路欣也、竹内結子、三浦春馬、広末涼子、江口洋介
(C)2020「コンフィデンスマンJP」製作委員会
THE CONFIDENCEMAN JP: Princess
公式サイト https://confidenceman-movie.com/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/