伊坂幸太郎と斉藤和義の絆が生んだ、恋の物語
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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第691回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。支配人の八雲ふみねです。シネマアナリストの八雲ふみねが観ると誰かにしゃベりたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、9月20日公開の『アイネクライネナハトムジーク』を掘り起こします。
三浦春馬 × 多部未華子、不器用だけど愛おしい10年愛を軸にした恋愛群像劇
「アイネクライネ」に始まり「ナハトムジーク」で終わる、6章からなる「アイネクライネナハトムジーク」。
伊坂幸太郎作品には珍しい恋愛連作小説集は、伊坂氏がかねてからファンだと公言していた斉藤和義から<出会い>をテーマとした作詞の依頼を受けたことがきっかけとなって誕生したというエピソードはあまりにも有名ですが、その伊坂幸太郎らしい伏線と名言が散りばめられたベストセラーが、待望の映画化となりました。
仙台駅前のペデストリアンデッキ。ギターの弾き語りが鳴り響き、大型ビジョンからはボクシング世界戦のタイトルマッチに沸く声が聞こえる。街頭インタビューを集めていた“劇的な出会い”を待つだけの男・佐藤は、リクルートスーツ姿の本間紗季と目が合う。思い切って声をかけてみると快く応じてくれた彼女の手には、手書きで「シャンプー」の文字が。
大学を中退し居酒屋で働く佐藤の親友・一真は、みんなが憧れる美人妻をゲットし、2人の子どもとともに幸せに暮らしている。佐藤の上司・藤間は、愛する妻と娘に出て行かれてしまい、途方に暮れている。
運命って、奇跡って、幸せって何? 思いがけない絆で佐藤とつながって行く人々が、愛と勇気と幸福に満ちた奇跡を呼び起こす…。
本作は、「アイネクライネ」で描かれた佐藤と紗季の偶然の<出会い>を軸に、彼らを取り巻くさまざまな人々の思いがけない出会いの連鎖によって物語が進んで行く恋愛群像劇。
監督に起用されたのは、伊坂幸太郎からラブコールを受けた今泉力哉監督。繊細かつ温かみのある人物描写で、物語を丁寧に紡いで行く手腕は、さすが恋愛群像劇の名手。物語の中心となるカップル、佐藤と紗季を演じる三浦春馬と多部未華子が、不器用ながらも愛おしい恋愛模様を瑞々しく表現。
そして原田泰造、貫地谷しほり、矢本悠馬、森絵梨佳、恒松祐里、萩原利久ら、豪華かつフレッシュな俳優陣に加え、仙台出身のサンドウィッチマン(伊達みきお、富澤たけし)も登場。愛と驚きに満ちた<出会い>のドラマを展開します。
ところで、斉藤和義ファンにとって気になるのが、原作で独特な立ち位置を占める“斉藤さん”の存在。これが、登場人物たちが行き交うペデストリアンデッキで、物語の鍵を握る歌を10年にわたって歌い続けるストリートミュージシャンという絶妙な“斉藤さん”ぶりを発揮しており、思わずほくそ笑んでしまうほど。
そして本物の“斉藤さん”こと斉藤和義は、原作の始まりに関わっただけでなく、本作では劇中音楽と主題歌「小さな夜」も担当。
大人気ベストセラー作家と稀代のシンガーソングライターの絆から生まれた、奇跡のラブストーリー。この映画に出会えてよかった…。そんな幸福感に包まれる1作です。
『アイネクライネナハトムジーク』
2019年9月13日(金)宮城県先行公開、9月20日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
監督:今泉力哉
原作:伊坂幸太郎「アイネクライネナハトムジーク」(幻冬社文庫)
主題歌:斉藤和義「小さな夜」(スピードスターレコーズ)
脚本:鈴木謙一
出演:三浦春馬、多部未華子、矢本悠馬、森絵梨佳、恒松祐里、萩原利久、貫地谷しほり、原田泰造 ほか
(C)2019「アイネクライネナハトムジーク」製作委員会
公式サイト https://gaga.ne.jp/EinekleineNachtmusik/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/