【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第683回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。支配人の八雲ふみねです。シネマアナリストの八雲ふみねが観ると誰かにしゃベりたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、全国公開中の『引っ越し大名!』を掘り起こします。
土橋章宏の傑作歴史小説を豪華キャストで映画化!
参勤交代やマラソンなど、これまでになかったユニークな視点で時代劇の新たな可能性を切り開く作家、土橋章宏。ポップで生き生きとした歴史小説はこれまでにも映画化され、私たちを楽しませてくれています。
そんななか、現在公開中の『引っ越し大名!』のテーマは、その名のとおり、お引っ越し。徳川の血を引く譜代大名でありながら、生涯に7度も国替えをさせられた不運の君主・松平直矩の実話をベースに、姫路藩の個性豊かな藩士たちが知恵と工夫で乗り切る様を描いた、笑いあり涙ありの時代劇エンターテインメントです。
江戸時代、姫路藩。藩主の松平直矩は豊後(大分県)の日田への国替え(引っ越し)を幕府から言い渡される。しかし度重なる国替えによる借金と、これまでにない遠方への移動、さらには減俸と、国の存亡が危うくなるほどの大ピンチに頭を抱える事態に。
この国難を乗り切れるかどうかは、国替えの総責任者である“引っ越し奉行”の腕にかかっているにもかかわらず、前任者は激務が原因ですでに亡くなり、国替えのノウハウさえも失われていた。
そこで白羽の矢が立ったのが、姫路藩書庫番の片桐春之介。人と接するのが苦手で、いつも書庫にこもり書物を読みふけっている“引きこもり侍”は、突然の大役に怖気づきながらも、幼なじみの鷹村源右衛門や前任の引っ越し奉行の娘・於蘭の助けを借りて、超難関プロジェクトに挑むことになるが…。
主人公・片桐春之介を演じるのは、星野源。本を読むのは大好きだけど人は苦手…という弱々しいオタク青年のキャラクターは、まさにハマり役。そんな彼が、国替えという一大プロジェクトを率いるリーダーとして成長して行く様子は必見です。
共演には高橋一生、高畑充希、及川光博、小澤征悦、濱田岳、西村まさ彦、松重豊ら超豪華キャストが集結。「江戸時代にもこんな人が本当にいたんだろうなぁ~」と、ふと頭をよぎるような個性豊かな“江戸の人々”を体現しています。
メガホンを取ったのは、『のぼうの城』を手がけた犬童一心監督。ミュージカル仕立ての軽快なエンタメ作品としても大いに楽しめますが、会社の経費削減やリストラ、転勤など、現代サラリーマン社会に置き換えて観るのも、これまた一興。
老若男女問わず幅広い世代に受け入れられる、痛快娯楽時代劇です。
『引っ越し大名!』
2019年8月30日(金)から全国ロードショー
監督:犬童一心
原作・脚本:土橋章宏「引っ越し大名三千里」(ハルキ文庫刊)
音楽:上野耕路
「引っ越し唄」振付・監修:野村萬斎
主題歌:ユニコーン「でんでん」(Ki/oon Music)
出演:星野源、高橋一生、高畑充希、小澤征悦、濱田岳、西村まさ彦、松重豊、及川光博 ほか
(C)2019「引っ越し大名!」製作委員会
公式サイト http://hikkoshi-movie.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/