黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)にニュースキャスターの辛坊治郎が出演。今後の人生について語った。
黒木)今週のゲストはニュースキャスターの辛坊治郎さんです。辛坊さんは、公務員か商社マンになろうと思っていたところで運命的な出会いをして、読売テレビのキャスターになられたということですが。
辛坊)そうですね。運命的な出会いというか、弾みというか、間違いというか。
黒木)そして、いまのポジションを築いていらっしゃいます。
辛坊)もともとジャーナリストになろうと思っていたわけではなく、本気でテレビやラジオの業界を目指したわけでもなく、気がついたら、サラリーマンとして「テレビに出るのが仕事」という就職先だったという話です。それから40年くらいこの商売をやっていますが、意識は変わりません。「どこか違うよな」と思いながら来ました。
黒木)そうなのですか。
辛坊)私は元バックパッカーですから、夢は「定年退職をしたら、年金で世界を旅して回る」ということでした。小学校、中学校、高校、大学と親に育ててもらって、唯一の私ができる恩返しは、大学を出たら、サラリーマンになって自活をして、家族を養って、定年退職まで勤め上げるということで、それが小学校から抱き続けている使命感でした。私の人生計画で言うと、60歳までは一生懸命働いて、それまでに親も他界するだろうから、親に対する義理のようなものもなくなるわけです。子どもが大きくなって、子どもも私と同じように大学を出て自活してくれれば、60歳で私も自由になれる。そうなれば、年金をいただきながら楽しく世界を旅して回ろうと思っていました。
黒木)いいですね。
辛坊)旅して世界を回るためには、年金プラス若干のお金が要る。60歳までに若干のお金、具体的に目標額を決めて、プラス毎月の厚生年金と合わせて60過ぎたら世界中を旅して回ろうと思っていたのですが、そのタイミングを失してしまった最大の理由は、年金が65歳からの支給開始になったということです。いま64歳です。来年から、フルで年金が出るのです。だから、「そろそろ、人生の出発点の夢に帰れればいいな」ということを考えながら生きているわけです。
黒木)来年ですか。
辛坊)一方では、おかげさまで、ここまで運よく過ごさせていただいたので、どこかで社会還元しなければいけないのかな、という気もしています。偉そうに言うわけではないのですが、何のためにニュースキャスターをやっているのかと言うと、いま我々が住んでいる社会が理想郷、エル・ドラード、パラダイスでないのならば、少しでもパラダイスに近づけるような役割みたいなものができないかと。それで、自分で政治家になろうという人もいますけれども、それは「私の役どころはそこではないよね」と思います。だから、つまらないことが気になるのです。電車に乗っていると、隣で若い人とは限らないのですが、新型コロナについて喋っているとします。明らかな間違いを言っているケースがあるわけです。「若い人はこの病気に関して、こういう間違った常識、情報を持っている」という話があれば、番組を通じて「こんな話がいま巷で流布されていますけれど、それは違いますよ。正しい情報はこうですよ」とお伝えすることができます。それで少しずつ、世の中に正しい知識が広がると、新型コロナだけではなく、政治でも経済でも何でもそうですが、正しい知識を知ることで自ら変わることもあります。そういうお手伝いができたら、自分だけの楽しみではなくて、いいなと思っています。
黒木)素晴らしい志ですよね。
辛坊)いえいえ。それも含めて、自分の楽しみなのです。バスに乗っていて「違うぞ、それ」と言って、いきなり因縁をつけることができないから、ラジオで言うのです。考えてみたら幸せですよね。多くの同じ思いのおっちゃんらは、言えずに悶々として家に帰って家族に言うのですよ。
黒木)65歳で旅人になるのではなくて、まだまだ私たちに正しい知識を教えてください。
辛坊治郎(しんぼう・じろう)/ニュースキャスター
■1956年、鳥取県生まれ。
■1980年、早稲田大学法学部卒業後、読売テレビ放送に入社。
■アナウンス部に配属され、「ズームイン!!朝!」「ウェークアップ!」などを担当。
■2000年、報道局情報番組部長に就任。
■朝の情報番組「ズームイン!!SUPER」でニュース解説を担当するなど数々の番組で活躍。
■2010年に読売テレビを退社。設立した株式会社大阪綜合研究所・代表に就任。
■現在は「ウェークアップ!ぷらす」「そこまで言って委員会NP」など多数担当。ニッポン放送では「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」を担当。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳