ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月12日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。3月12日に開催される「クアッド」首脳会談について解説した。
「クアッド」首脳オンライン会談が開催
「Quad(クアッド)」というのは英語で「4つ」という意味だが、アメリカのサキ大統領報道官は3月9日の記者会見で、日本とアメリカ、オーストラリア、インドの4ヵ国によるオンライン首脳会合が12日に行われると明らかにした。会合には、菅総理大臣とアメリカのバイデン大統領、オーストラリアのモリソン首相、インドのモディ首相が参加。「クアッド」の首脳が一堂に会して意見を交わすのは初めてとなる。
飯田)「アメリカが首脳会合に格上げすることを求めている」という報道もありましたが、いよいよ実現するということでしょうか?
宮家)そうですね。2020年の秋に外相レベルで日本会合を持ちましたね。その後、バイデン政権の発足前には、日本の一部でも、「インド太平洋重視などと言っているが、やはり欧州、中東を先にやるのではないか」、また、「中国に少し甘いのではないか」と若干の懸念がありました。しかし、今回バイデンさんが国内で1.9兆ドル、約200兆円という巨大な経済刺激策を法制化した直後にこういう形で首脳会談をやるということですから、我々の一部の心配は杞憂だったということなのでしょう。逆に言うと、それだけバイデン政権は中国のことが気になっているということなのだろうと思いますが、クアッド自体は中国に対抗するためにつくられているものではありません。
日本がクアッドの一員であるのは、アメリカに恩を売るためではない
宮家)この関連では韓国の関係者がアメリカである論文を書いています。そこでは、政府が本当にそう言っているかどうかはわかりませんが、韓国の一部の人が何と言っているかというと、「韓国もクアッドに入ろうかな」と言っている。昔はそんなことを考えもしなかったのですが、もしかしたら韓国はアメリカに対して「クアッドに入る」という姿勢を見せて、ある意味で、アメリカに恩を売って米韓関係を強くして、そのかわりにというわけではないですが、アメリカには北朝鮮に対してもう少し優しくしてもらう、話し合いをしてもらう、ということで動かして行くというアイデアがあるのかもしれません。
飯田)北朝鮮に。
宮家)私はそれを読んで、「この人たちはわかっていないな」と思いました。日本がクアッドの一員であるのは、決してアメリカに恩を売るためではないのです。自由で開かれたインド太平洋地域というもの、このアイデアが日本にとっていちばん利益になるからなのです。それに賛同してくれる国々がたまたまアメリカであり、オーストラリアであり、インドだったということです。逆に言うと、韓国にも同じように考えて欲しいのですよ。韓国も同じようにアジア太平洋、インド太平洋のなかで責任ある役割を果たすのだと。安定して、オープンで、繁栄するインド太平洋、この考え方が韓国も一緒であれば、入って来ればいいのです。しかし、それをアメリカとの交渉の材料に使おうというのは、それは少し違うのではないかということをいま考えているところです。
国際社会をつくって行くなかで、日本は中心的な役割を果たさなければならない
飯田)なるほど。宮家さん、常々指摘されていらっしゃいますが、中国とアメリカのどちらにつくか、ではなくて、この「自由で開かれたインド太平洋」という価値観を大事にするということが、日本にとって大切であると。
宮家)そしてそれはクアッドの4ヵ国では終わらないと思うのです。イギリスも関心を示しているという声もありますし、いろいろな人たちが「どうしようか」と考えていると思うのです。それはアメリカに対する関係の強化とかそういうことではなく、国際社会がこういう形で徐々につくられて行くということを、我々は考えなくてはいけないし、そのような動きのなかで、日本は常に中心的な役割を果たさなくてはいけない。これが、中国との関係でいちばん重要なポイントだと私は思っています。
飯田)この旗を高く掲げてともに進んで行くと。
宮家)そうです。別に中国を排除しようとしているわけではないですから。
飯田)中国が価値観をともにするならば入って来ることもできるということでもあると。
宮家)そうです。
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