「空飛ぶクルマ」デモ飛行で思い出した国民的漫画のワンシーン
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ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第458回)

SkyDriveの「空飛ぶクルマ」SD-05
■臨海副都心から東京湾に飛び立った国産の機体
東京都江東区の東京ビッグサイト端の駐車場。2月24日朝、「空飛ぶクルマ」のデモ飛行が行われました。国産の機体で東京都内を飛行するのは初めてで、多くの報道陣が見守りました。
ブイーーーンという音をたてながら、駐車場から「空飛ぶクルマ」は浮き上がり、海に向かいます。海上をしばらくホバリングした後、180度旋回し、駐車場に戻りました。
「たったいま、安全に着陸しました!」

SkyDriveの「空飛ぶクルマ」SD-05
機体が無事着陸し、音が収まると、会場からは拍手が起きました。主催者によると、飛行時間は3分30秒。距離は150m、高度は海上で水面から13m、速度は毎秒4m(時速14.4km)でした。今回、人は乗っておらず、遠隔操作によるものでしたが、危なげない飛行。飛行音はヘリコプターに比べて格段に静かで、バッテリーという動力源のなせる業です。
機体は一見、ヘリコプターのようにも見えますが、明確に違うのは機体をぐるりと囲む小型ローター。期待を開発したSkyDriveによれば、その数は12個に上ります。鳥が衝突するなどして2個が故障しても、残り10個で安全に飛行できるということです。

海上をホバリング 3分30秒の実証飛行は無事成功した
機体の最大離陸重量は1.4トンでほぼ乗用車1台分。パイロット1人に乗客2人の3人乗りで、大きさは約11.5m×約11.3m×約3m(ローター含む)。これまで認証が進んでいる機体の中では「最もコンパクト」と開発担当者は胸を張ります。コンパクトさは都心部では大きな武器になることでしょう。
SkyDriveは3年前のジャパン・モビリティショーでも出展していました。今回の実証を見ると、様々な壁にぶつかりながらも着実に歩を進めていると感じます。

トレーラーハウスを活用した「旅客ターミナル」
■顔認証でスピーディに。実際に必要な手続きも検証
取材ゾーンの背後には濃茶色のトレーラーハウスが誇らしげでした。今回はデモ飛行に加え、模擬の「旅客ターミナル」を設け、実際の運用を想定した搭乗手続きも初めて検証したわけです。ターミナルはコンテナ2個分ほどの広さ、中には搭乗手続きに必要な施設が機能的に配置されていました。
印象的だったのは保安検査。小部屋にはスマートフォンより少し大きい顔認証システムの機器があり、その下には体重計を設置。そして金属探知機によるチェックで検査は完了します。主催者によれば、一連の流れは1分もかからないということです。

左:保安検査は顔認証システムで、右:顔認証、体重検査、金属探知機チェックで検査は1分もかからないという
ターミナルにはそのほか、離着陸場周辺の監視室や旅客待合室も設けられていました。施設内では周辺の鉄道運行状況や気象情報をチェックすることもできます。
「今回の実証はまさに機体を飛ばすだけでなく、今後導入されていくであろうサービスの一連の流れを、搭乗手続きも含めて行うというところで、今後に向けた貴重な第一歩になるのではないか」行政として「空飛ぶクルマ」の社会実装プロジェクトを進める東京都デジタルサービス局の大井征史担当課長は今回の取り組みの意義を強調しました。
今回の飛行実施には機体開発のSkyDriveに、飛行を統括する三菱地所、ターミナルの運営を担当する兼松が加わりました。三菱地所丸の内業務企画部の土山浩平さんは「丸の内、横浜、大阪など大都市のど真ん中にきちんと着陸できるようなポートを整備していくのが目標。大規模展示場や運営する東京駅周辺のビルに直接乗り入れることができる可能性がある」と話します。ポートやターミナルの場所は既存の空港や駅などの大規模スペースは不要です。一方で航空法、建築基準法など様々な法令のハードルが立ちはだかります。移動可能なトレーラーハウス形式のターミナルは一つの解決法になるでしょう。

左:空域管理などはこの部屋で行う、右:待合室も完備
兼松航空宇宙部の中村康平課長代理はこんな「青写真」を描きます。それは陸上交通との融合。自動運転バスやタクシーの連携や、電気自動車の充電器共有の可能性を挙げました。特に自動運転については「地方は運転手不足で公共交通の維持が大変なところがある。自動運転とセットで提案できないか」と話していました。
運航時期についてSkyDriveでは2027年にプレ実証、2028年ごろに大阪府や大分県のサービス開始、また、東京都は2030年ぐらいに市街地での展開を目指します。都心部の活用方法としては観光遊覧のほか、「エアタクシー」といった迅速な旅客や物資の輸送などの活用が期待されています。

SkyDriveは2023年のジャパン・モビリティショーにも出展していた
■「空飛ぶクルマ」はドラえもんの「ひみつ道具」のよう?
国民的漫画「ドラえもん」では多くの「ひみつ道具」が出てきますが、「空飛ぶクルマ」はさしずめ「タケコプター」が大きくなったものと言えるかもしれません。一方、ターミナルも加えた検証を見て、私はもう一つのシーンを思い出しました。
毎日満員電車で通勤するパパに向けて、のび太とドラえもんがサンタクロースに扮し、パパにあるクリスマスプレゼントを渡します。それは自宅から会社までの地下鉄定期券でした。パパ専用に建設した地下鉄は、何と家の庭に駅への入口が設けられていました。列車は5分で会社に到着予定。「たすかるなあ」と、パパは座席に寝転がって座ってくつろぎます。ただ、途中で本物の地下鉄建設現場にぶち当たってしまい、列車の運行はとん挫してしまうのですが……。
ドラえもんで描かれた「ひみつ道具」はその後、実現したものも多くあります。「空飛ぶクルマ」は地下ではなく上空ですが、将来はこんなプライベートに近い運航が可能な時代がやってくるのかもしれません。ただ、パパの地下鉄のような「運行障害」が起きないような注意はもちろん必要です。具体的には型式認証や法令のクリア、緻密な運航監視ということになるのでしょう。
今回の取材は集まった報道陣も東京都庁担当から自動車・産業技術担当、不動産関連に至るまで多岐にわたりました。それだけ、様々な分野にまたがった壮大なプロジェクトであることを改めて感じました。
(了)





