有人宇宙飛行、ロケット…… 日本の宇宙開発、最新トピック【2】
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ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第455回)
■「ピンピンしている」油井亀美也宇宙飛行士がアメリカから記者会見
宇宙開発の最新トピック、後半はまず、予定より約1カ月早く地球に帰還したJAXA宇宙飛行士の油井亀美也さんです。帰還から半月あまり、2月5日にアメリカからオンラインで記者会見しました。

油井亀美也宇宙飛行士(オンライン記者会見から)
リハビリ中ながら「ピンピンしている」と元気な様子の油井さん、帰還が早まりましたが、「一番大事なのは私たちが地上に元気に帰ってこられたこと。本当によかった」と話しました。その上で「国の予算を使っている大きな事業。クルー(搭乗員)の安全を優先して早く帰すことを決めた方々に感謝の気持ちでいっぱい」と謝意を示していました。なお、早期帰還によって小型衛星の放出や交信イベントなどに影響が出たということです。
「最初から全速力で駆け抜けるような形で仕事をしてきた」と油井さんは振り返ります。滞在中のハイライトと語るのは、昨年10月30日未明に実施された新型補給機「HTV-X」1号機のキャプチャー(把持)。当時、私はJAXA筑波宇宙センターで見守りましたが、危なげない作業はさすがでした。油井さんと、地上で交信を行った宇宙飛行士の星出彰彦さんのメッセージを覚えています。
「HTV-Xくんが無事にISSに着きました。日本が高い技術力で国際的な宇宙開発に貢献していることを知っていただいて、誇りを持っていただけるとうれしい」(油井さん)
「地球低軌道、月までも含めて人類のさらなる可能性を切り開く大きなカギになる」(星出さん)

新型補給機「HTV-X」をロボットアームで把持する作業(NASAテレビから)
そして、星出さんは油井さんに「Good Job」とねぎらいました。ちなみに、HTV‐X1号機は、物資の補給を終えてISSから離脱した後も約3カ月間、宇宙空間を飛行し、新技術の実験を行う予定です。
一方、星出さんも触れていた将来の月面探査。アメリカ主導の国際月探査「アルテミス計画」の一環として、宇宙船オリオンを搭載した巨大ロケットの打ち上げが来月以降に控えます。今回は4人の宇宙飛行士が、月の裏側を周回する「10日間の旅」に臨む予定です。将来は日本人飛行士も2回月面に着陸する計画で、日本の宇宙開発にとっても大いに注目される出来事となります。
油井さんも記者会見で「本当に楽しみ。歴史的な事業がうまくいくことを信じている」と期待感を示します。その上で、自らの月飛行については「月・火星に行ってみたいという気持ちはあるが、それができるかは別問題。少しずつ後進を育てる方向にシフトしていかなくてはいけない」と話していました。

H3ロケット8号機の打ち上げ 当初は順調に見えたが…(JAXAチャンネルから)
■きれいな打ち上げに見えたが……、H3ロケット、新たなる試練
続いて、日本の宇宙開発に立ちはだかる試練についてです。
「打ち上げに失敗した。期待に応えることができず、心からおわび申し上げる」
昨年12月22日、H3ロケット8号機が鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられましたが、失敗に終わりました。記者会見でJAXA(宇宙航空研究開発機構)の山川宏理事長は沈痛な表情で陳謝しました。H3ロケットの打ち上げ失敗は2023年3月の1号機以来、2度目となります。
JAXAによると、打ち上げ当日、ロケットは1回目の燃焼停止が予測から27秒遅れ、2回目の燃焼開始も15秒遅れました。さらに、2回目は4分あまり燃焼するはずが、開始直後に停止したとみられます。私はJAXAチャンネルの画面で打ち上げの瞬間を見守り、これ自体は危なげないように見えましたが、その後、異常を伝える情報に「うーん、厳しいかな」と思いました。それが現実となったわけです。
燃焼停止により、搭載されていた衛星は予定の軌道に投入できなくなりました。衛星は本来の時刻に分離される前にロケットの機体を離れて、南鳥島の東の海上に落ちたとみられます。
JAXAでは引き続き原因の究明が進められています。ロケットの上の部分には衛星が搭載されていますが、衛星には「フェアリング」という保護するためのカバーが備え付けられています。文部科学省の専門家委員会への最新の報告では、そのカバーが上空で分離した時に、衛星とロケットの機体とのつなぐ部分が破損したと推定されています。破損により、結合部の下にあった2段目エンジンの水素燃料タンクの配管が損傷したとみられます。ただ、なぜ結合部が破損したのか……、カバーが衛星に衝突した、ロケットや衛星の機体の内部からガスが漏れていた、様々な可能性が考えられていますが、特定には至っていません。

H3打ち上げ失敗後に行われた記者会見(JAXAチャンネルから)
■「みちびき」の本格運用も先送りへ
H3ロケット8号機に搭載されていた衛星は準天頂衛星「みちびき5号機」です。衛星からの電波によりスマートフォンやカーナビなどで現在位置の把握を可能にするシステムで、「日本版GPS」と呼ばれています。静止衛星のように地上から見て同じ一点に止まって見えるものではありませんが、複数運用することで位置の把握を24時間カバーします。日本“自前”での測位を可能にするには7機体制が必要で、政府は増強を目指しています。順調にいけば今月1日に7号機が打ち上げられる予定でしたが、今回の失敗で延期されました。予備期間であった3月31日までの打ち上げを行わないことも明らかにされ、2025年度内の打ち上げはなくなりました。
H3ロケット8号機は失敗した日の前にも、打ち上げが中止・延期されていました。冷却水の注水量を調整するバルブの設定ミスによるものでしたが、開発責任者の有田誠プロジェクトマネージャは「H3は弱点を内包している所もある」と吐露していました。その弱点が露呈した形になりました。

1月23日に行われたJAXA山川理事長の定例記者会見
JAXAの山川理事長は先月23日に開かれた今年初めての定例記者会見で原因究明について「何に集中して検討すればいいかがわかってきた段階」という認識を示しました。その上で「起こった事象が複合的で難しさを感じているが、幸いにして様々なデータが揃っている。できるだけ迅速に原因究明と対策、Return to Flightを実現したい」と復活を期していました。油井宇宙飛行士も記者会見でH3ロケットについて問われ、「原因を追究して、次には同じ失敗を繰り返さずに成功に導く。その積み重ねが素晴らしい未来をつくっていくと信じている」と話しました。
前述の「アルテミス計画」を挙げるまでもなく、宇宙開発をめぐる世界的な競争は激しくなっています。そうした中で停滞は許されませんが、原因究明で得られたノウハウは、間違いなく今後の糧になるでしょう。地に足をつけて前に進んでほしいものです。
(了)





