収容所のなかでも「家賃を払えば個室に移ることができ、金を払えば外出もできる」フィリピンの悪しき慣習

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ジャーナリストの佐々木俊尚が2月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。連続強盗事件の容疑者引き渡しについて解説した。

収容所のなかでも「家賃を払えば個室に移ることができ、金を払えば外出もできる」フィリピンの悪しき慣習

フィリピン・マニラの入管収容施設=2023年1月26日(共同) 写真提供:共同通信社

連続強盗事件の容疑者、2月6日までにフィリピンから4人一括で引き渡しか

フィリピンのレムリア法務大臣は1月31日、日本で相次ぐ強盗事件の指示役が含まれているとみられる4人の引き渡しについて、2月6日までに一括で行われる可能性があると述べた。また、4人のうち3人がフィリピン国内で罪に問われている裁判に関し、「意図的な企みのもとに起こされたもので、引き渡しの障害にはならない」との見方も示した。

飯田)2月8日にフィリピンのマルコス大統領が日本を訪問するため、その前に片付けたい意図もあるようです。

90年代からマニラは身を潜めるには便利な土地だった

佐々木)なかなか素早いですね。フィリピンに隠れる方法は、私が事件取材をしていた1990年代くらいにも多くありました。何かあるとみんなフィリピンに逃亡するという。

飯田)ありましたね。

佐々木)当時、いまでもいらっしゃいますが、日本のフィリピンパブなどに出稼ぎに来る女性が多く、ルートがあったのです。逆にそのルートを使い、日本の暴力団関係者がマニラなどにいて、その送り元になっている。日本から行くと関係者がいるので、頼ることができるのです。

飯田)日本から行くにあたって受け入れてくれる、ある意味での出先機関があるというようなことですね。

佐々木)そういう感じで、よく利用されていました。マニラは、何となく「身を潜めるには便利な土地」というイメージが当時からあります。でも、東南アジアは成長が著しいですし、下手をすればマニラやタイのバンコクなどは日本よりも生活費が高いくらいなので、どうなのだろうと思っていました。

ビクタン収容所では家賃を払えば個室に入ることができ、携帯も使える

佐々木)先日、私が出演している「ABEMA Prime」という番組に、海賊版漫画サイト「漫画村」事件で逮捕された星野ロミさんが出演したのです。

飯田)攻めますね。

佐々木)彼もビクタン収容所にいて、そこから強制送還されて日本へ戻り、逮捕されたのですが、その施設ではお金を払うと個室に移れるようなのです。

飯田)本当にそうなのですね。

佐々木)敷金があるらしいです。10~20万円の敷金を払い、月々5~6万円払うと個室に移れて、豪勢な生活ができる。

飯田)完全に賃貸ですね。

佐々木)そうなのですよ。所内でも携帯電話が購入できて使えます。

飯田)売っているのですね。

佐々木)しかも、「ほとんど外と生活が変わらない。出られないだけですよね」と聞いたら、「出られます」と言うのです。

飯田)出られるのですか。

佐々木)「病院へ行く」と言って袖の下を職員に渡すと、普通に外を出歩けるし、病院へ行かずにショッピングモールで買い物して帰って来れる。

飯田)引っ越しただけではないですか。

フィリピンで裁判を起こされ、被告になると裁判中は強制送還されない

佐々木)もう1つ面白かったのは、今回の事件とも関係するのですが、向こうで民事などの裁判を起こされて被告になると、裁判が終わるまでは国外退去にならないそうです。

飯田)係争中は拘束しておかなければいけないから。

佐々木)知り合いに「俺を訴えてくれ」と頼んで裁判になると、当分は出国せずに済むようです。それを永遠に繰り返せば、いつまでも強制送還にはならないので、「日本に送還されて逮捕される心配がない」と説明していました。

フィリピンの法務大臣が「意図的な企みのもとに起こされたフィリピン国内の裁判に関しては、引き渡しの障害にはならない」と明言

佐々木)今回逮捕された渡辺優樹容疑者も、どうもそういう手口を使っているようです。フィリピンの法務大臣が「意図的な企みのもとに起こされたフィリピン国内の裁判に関しては、引き渡しの障害にはならない」と言っているのはそういうことでしょう。

飯田)なるほど。

佐々木)今回、「裁判で訴えられていても強制送還しますよ」と法務大臣が明言したので、彼らの企みは砕け散ったわけです。

飯田)法を所管する大臣がそう言っているとなると、その意図で裁判が棄却されるのかどうかというところですが。

暴力団組織が弱体化して、今回の事件のような特殊詐欺のグループが出てきている

佐々木)この人たちは以前、36人がフィリピンで拘束された特殊詐欺グループの一部です。一斉に捕まったなかの中心人物の2人ですよね。

飯田)特殊詐欺のスキームを使いながら、より凶悪なことを行っている。

佐々木)特殊詐欺は所詮、詐欺なのだけれど、そこから強盗殺人にまで及んでしまうのは、かなりエスカレートしていますよね。

飯田)そうですね。

佐々木)昔はこういう犯罪は暴力団絡みだったのですが、いまは暴対法や暴排条例などで締め付けが厳しくなり、暴力団組員でいること自体が難しくなっている状況です。銀行口座もつくれないですし。暴力団の存在はあるけれど、かなり弱体化している状況のなかで、関東連合のような「半グレ」と呼ばれる反社組織が増えている。その一環として、特殊詐欺グループが大量に出てきている状況があるのです。

犯罪組織がアングラ化して把握しにくくなっている ~さらに上がいる可能性も

佐々木)警察としても、暴力団を追い込んだのはよかったのですが、いくら追い込んでも反社会的な方向性の人たちは一定数必ずいます。

飯田)アングラ化してしまう。

佐々木)アングラ化して、逆に把握できなくなってしまったのは、痛し痒しのところがありますね。

飯田)これだけ広域的に、しかもお金もかなり集めていたとなると、さらに上がいる可能性もあります。

佐々木)フィリピンの収容所からリモートによる指示だけで、果たして可能なのか。全容解明には時間が掛かりそうですね。

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