外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が1月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理のウクライナ・キーウ訪問について解説した。
岸田総理大臣のキーウ訪問の課題
岸田総理が検討していると報じられたウクライナの首都キーウ訪問をめぐり、外務省などの関係者が頭を悩ませている。日本の総理が戦火をかいくぐって外国を訪れた前例はなく、移動経路や日程の秘密保持、護衛など課題は多い。
飯田)1月22日に読売新聞が一面トップで報じました。
宮家)私にはどうしても理解できません。私個人の意見を言わせていただくと、「なぜ行かなければならないのか」とすら思います。
飯田)まずは。
宮家)先進7ヵ国首脳会議(G7サミット)の議長だからですか? それはそうかも知れない。でも他の国の首脳たちが行っているかと言うと、アメリカは行っていません。
飯田)バイデンさんは行っていない。
宮家)バイデンさんの場合は、ワシントンで会ったのだから。
飯田)そうですね。ゼレンスキー大統領がワシントンへ行きました。
日本のように「秘密が守れない国の首相」がウクライナへ行けるわけがない
宮家)どうしても対面で会談しなければならないのでしょうか? 私が思うのは、「日本のように秘密が守れない国の首相が、そんなところに行けるわけがない」ということです。
飯田)秘密が守れない国。
宮家)以前の官邸ではメディアが官邸内を徘徊していたのですからね。いまは少し距離があるけれど。
飯田)エリアが変わりましたね。
日本ほどメディアが見ている官邸は世界にない ~総理の一挙手一投足がすべてわかってしまっている
宮家)これほどみんなが見ている官邸は、世界にないと思います。それはそれでいいのですよ。
飯田)オープンにしていることは。
宮家)オープンなのはいいことだけれど、外交を行うときでも秘密を守らせてくれないのです。総理の一挙手一投足がすべてわかってしまっているのだから。
飯田)そうですよね。
宮家)ヨーロッパの人たちがウクライナに行くのは可能ですよ。九州から北海道へ行くようなものですから。しかし、アメリカは行っていません。私は「そもそもなぜ行かなければならないのだ?」と思います。「G7議長として対面していないではないか。だからG7議長としてけしからん」と言うG7の国がどこにありますか? そんな国はありません。だから何か変に感じます。
飯田)変。
アメリカのメディアは秘密を報じない ~日本で秘密外交することは難しい
宮家)すごく変です。もし本当にそういう外交をしろとおっしゃるのならば、メディアの方々もきちんと秘密を守ってあげてください。秘密を守らせてあげてください。でも、それはできないのです。
飯田)できない。
宮家)アメリカのプレスだって、みんな知っていても絶対に報じませんよ。
飯田)そういうことに関しては。
宮家)そういう意味では、何だか違和感がある。この国で秘密外交をするのは非常に難しいと思います。我々はそういう国をつくってきたのですからね。
飯田)日本は。
宮家)「透明性を高めよう、アカウンタビリティを高めよう」と言うのであれば、何かを犠牲にせざるを得ない。その意味では、「秘密外交や首脳の日程を自主的に外に出さない」ことがいかに難しいか、よく考えてください。
秘密外交を行うのであれば、何かを犠牲にしなければならない
飯田)確かに。今回、「複数の日本政府関係者が明らかにした」と書かれています。
宮家)「いつ行くのだ?」と言われたら、総理だってみんな悩みますよ。黙っていてくれたら行けるのだけれど。
飯田)報じなければ。
宮家)ああやって煽られたら行けないではないですか。みんな総理の日程をじっと見ているのだから。
飯田)「行け行け」と言って、実際に「やはり止めます」と言うと「なぜ止めるのだ!?」と批判される。
宮家)おかしいですよ。
飯田)ある意味のマッチポンプ感がありますね。
宮家)ある意味ではなく、完全なマッチポンプだと思います。それは民主主義だからわかりますよ。しかし、本当に外交させたければ、もう少し考えて欲しいと個人的には思います。
日本は秘密を守る権利のない国
飯田)メディアもそうですし、いまは国会の会期中です。予算を議論しているところで仮に行くと、「なぜ総理がいないのだ!」となってしまいます。
宮家)それも大変ですね。
飯田)そういう意味では、この国は外交を行うのが本当に難しいですね。
宮家)非常に難しい国です。それでも頑張ってやってきました。これからも頑張っていくと思いますが、やはり「違う」ということをわかっていて欲しいと思います。他の国とは違って、この国は秘密を守れないのです。
飯田)ガラッと変えない限りは。
宮家)ヘンリー・キッシンジャー氏は昔、「日本は秘密を守る権利のない国だ」と言っています。
飯田)秘密を守る権利がない。
宮家)「日本の政治家には秘密を守る権利がない」と言っていました。
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