「ロシアが北方領土を返還することはない」3つの理由
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月30日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。菅総理がロシアのプーチン大統領と電話会談したことを受け、北方領土問題について解説した。
菅総理、ロシア・プーチン大統領と電話会談
菅総理)私からは、平和条約締結を含む日露関係全体を発展させて行きたい。そして近いうちにお互いに対面のなかで、こうした日露関係について率直に話し合いたい、こうしたことで合意をしました。
菅総理大臣は9月29日、ロシアのプーチン大統領と就任後初めて電話会談を行った。会談では日ソ共同宣言をもとに、平和条約締結交渉を加速させるとした2018年の首脳間合意を再確認。近いうちに対面形式の会談を目指すことで一致している。
飯田)北方領土問題というところですが、一方でロシアは直前に軍事演習をやっています。
奥山)日本政府、メディアも含めて、我々はプーチンさんを信じてはいけません。何度も言いますが、北方領土は返してもらえません。これは断言できます。なぜなら、プーチンさん自身は「北方領土を返す」と一言も言っていません。日本側がメディアも含めて、「返してくれるのではないか」という雰囲気をつくっているのです。
飯田)特に山口県の長門で会談する直前は、「いますぐにでも戻って来る」という雰囲気がありました。
プーチン大統領が北方領土を返還しない3つの理由~ソ連が崩壊し領土が小さくなった
奥山)プーチンさんが返すつもりのない理由は3つあります。1つ目は、プーチンさんはソ連が崩壊して、その後にロシアを受け継ぎました。プーチンさんは「冷戦終結でソ連が崩壊したことは、地政学的な、我々にとって最大の悲劇である」と言っています。ソ連からロシアになったときに、十数ヵ国も離れてしまい、領土が小さくなってしまいました。いまでもロシアは世界一の領土を持っている国ですが、彼がそう言ったということは、「ロシアは1インチも領土を渡さない、むしろ取り返しに行くのだ」ということです。彼は帝国主義者です。「返す」と一言も言っていない点から、帝国主義者のプーチンさんは返さないです。
領土を取り返すために戦争をするロシアが歯舞群島、色丹島を返還することはない
奥山)2つ目は、その言葉を裏付けるために、プーチンさん自身、2014年にウクライナやクリミアで領土を取り返すための戦争をしています。そのために戦争をするくらいなので、歯舞群島、色丹島を返してくれるということにはつながりません。もし返したとしたら、それだけでプーチンさんの立場が危うくなります。ロシア国民全員が、帝国主義をやってくれることを期待しているのに、領土を返すことはあり得ません。領土のために戦争している人が返すわけがありません。
「北方領土は戻って来る」というメディアと政府の勝手な思い込み
奥山)それと、日本のメディアや政府は勝手な思い込みをしています。2001年のイルクーツク声明や、2018年の首脳合意があるということを言っていて、「北方領土問題を次の世代に先送りすることに、終止符を打たなければならない」と日本側も言っています。言っていても、「結果を出すとはどういうことか」に対する合意はまったくありません。「つけは残さない」ということについては、「いいよ」と向こうも言っています。しかし、「返す」とは言っていません。人道的に、昔の人のお墓参りはさせてあげると言いますが、ロシア自身は一言も返すと言っていないので、平和条約を餌にダラダラと同じことが続くのではないでしょうか。
飯田)ロシアの体制が大きく変わることでもない限り、難しいということですね。
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