東京の新たな感染者188人……なぜ政府は緊急事態宣言を出したくないのか 辛坊治郎が持論

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7月19日、東京都内で新たに188人が新型コロナウイルスに感染していることが確認され、4日ぶりに200人を下回った。

そうしたなか、キャスターの辛坊治郎は16日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演し、新型コロナウイルス感染症対策への国と東京都の温度差について、自身の分析を論じた。

東京の新たな感染者188人……なぜ政府は緊急事態宣言を出したくないのか 辛坊治郎が持論

(左)会見する安倍総理~東京都の感染者数の状況と今後の政府の対応についての会見 2020年7月9日 首相官邸HP https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202007/09bura.html /(右)東京、警戒度最高レベル  記者会見する東京都の小池百合子知事=2020年7月15日午後、都庁 写真提供:共同通信社

総理大臣の権限がほぼゼロの緊急事態宣言

東京都の小池都知事が7月15日に会見し、新型コロナウイルスの都内の警戒レベルを、最も深刻な「感染が拡大していると思われる」に引き上げたことを発表した。

辛坊)なぜ政府は緊急事態宣言をあまり出したくないのか。前回、緊急事態宣言を出した経緯から考えますと、政府の本音は出したくはなかった。やはり学者や東京都知事、マスコミにも煽られ出さざるを得なかったという部分があります。そもそも緊急事態宣言を政府が出したくない理由ですよね。

ひとつは緊急事態宣言というのは名前は仰々しいですが、総理大臣ができる権限というのは、時間、地域を決めて知事に指示をするというだけで、何ができるのかという具体的な権限がゼロに近いです。現実に総理大臣の権限がゼロなのに、宣言だけ出させられ責任を取らされるのはいやだよな。というのが本音としてあります。いまの法律上の新型インフルエンザの特措法による緊急事態宣言というのが、あまりに力がなさすぎなので、こんなものを出しても出さなくてもたいして関係ないのではないのかというのが本音の部分であります。これは、これからお話しする本題とは別の前段としてあります。

東京の新たな感染者188人……なぜ政府は緊急事態宣言を出したくないのか 辛坊治郎が持論

緊急事態宣言を発令し会見で国民に協力を呼びかける安倍晋三首相=2020年4月7日午後、首相官邸  写真提供:産経新聞社

興奮状態になった知事やマスコミに煽られて緊急事態宣言を出した政府

辛坊)では、本題の話ですが、政府が新型コロナウイルス感染症について本音ではどう思っているのか。知事は普段は目立たないのでこうしたときこそ出番だと、前面に出ていきますね。学者も感染症学者といのは、一生のうちにこうして頑張れるチャンスが一回あるかどうかです。私たちの出番だと思った部分があるのでしょう。ある意味、人によっては暴走してしまった人もいますし、冷静な人もいます。しかし、どの感染症学者にとっても一生に一度あるかないかの見せ場が回ってきたので、興奮状態になってしまった。知事やマスコミも興奮状態になってしまったのです。そして、政府は煽られ宣言は実行力があまりないと思いながらもそうなれば緊急事態宣言を出さざるを得ないですよね。しかし、大阪大学の教授が検証したように緊急事態宣言を出しても出さなくても関係はなかった。実際の感染者数は緊急事態宣言を出したからといって、大幅に下がったということはなかったということがありますね。

東京の新たな感染者188人……なぜ政府は緊急事態宣言を出したくないのか 辛坊治郎が持論

新型コロナウイルスのクラスター感染防止策について、記者会見する北海道大・西浦博教授(中央)=2020年4月15日午前、厚労省 写真提供:共同通信社

誰も気が付いていない異常事態~下がっている死亡率は“見かけ上”のもの

辛坊)誰も気が付いていないことをひとつ言います。見かけ上の死亡率はどんどんと下がっています。死亡率はどのように計算するのかというと、分母はPCR検査で明らかになっている陽性者です。分子は死者ですので、現在はほとんど増えていない状況のなかで分母の感染者がどんどんと増えています。私がこのあいだ計算してみましたら、この1ヵ月弱の間に5%を超えていた日本の死亡率が4%くらいまで落ちてきています。また私が衝撃を受けたのですが、このまま何もしなければ40万人が亡くなるといった方がいますよね。その方が最近の新聞のインタビューに答えていまして、日本での死亡率、欧米での死亡率もほぼ同じということを発言していました。私はなにを根拠にそのようなことがいえるのかと驚きました。死亡率というのは感染者の数が正確にわからなければ出せません。見かけ上の死亡率というのは、分母を判明している感染者数、分子を死者です。ヨーロッパはたしかに、スペイン、イタリアあたりの軒並み10%を超える死亡率のところがあります。ドイツでも5%です。日本はついこの間まで2万人弱が感染者で、1000人弱ほどが死亡者でした。ですので、2万人分の1000イコール約5%という数字でした。ところが現在、上の分子が変わらないのに、分母がどんどんと大きくなっている状況ですので、刻々と死亡率が下がっています。40万人が亡くなるという根拠はおそらく先ほど述べた日本の死亡率を前提にしていると思います。ところが日本の死亡率は2月3月4月あたりでPCR検査はほとんどしていませんでした。感染者数というのはごく一部しか把握していませんので、それを分母にして死亡率を出す。それが本当の死亡率なはずがありません。反対に感染者数がものすごく増えてくることによって、見かけ上の死亡率がどんどんと下がっているという、異常事態にもなっています。

では、どのくらいの死亡率なのか。このまま若い人の感染がどんどんと広がっていき、PCR検査の感染者数だけが上がっていくと。最終的に極端な数字の例でいうとシンガポールが現在、約4万7000人。人口の1%くらいが感染しています。そして亡くなっている方が27人で、1000人に1人も亡くなっていません。ではなぜなのかというと、2つの考え方があります。もともとそうした病気なのではないかという考え方の一方で、シンガポールの感染者というのは移民の若い人が多いのです。移民の若い人を労働力として使っていて、その人がタコ部屋のような場所で働いておりそこで集団感染が起きている。そして、4万5000人以上の感染者が出ていますが死者が27人しかいないのは、若い人が中心にシンガポールは感染が広がっているからなのではないのか、という見方があります。そういう背景だとしても、若い人の死亡率は1000人に1人なのだなということがわかります。

東京の新たな感染者188人……なぜ政府は緊急事態宣言を出したくないのか 辛坊治郎が持論

新型コロナ関連、公園で散歩する高齢者=2020年3月17日、大阪市東住吉区 写真提供:産経新聞社

高齢者に支えられている政権は、高齢者を敵に回したくないが

辛坊)そしてここから先です。ここから先は政治の世界と、学者の世界で異なるところなのですが、1000人に1人が死ぬということをやはり防がなくてはならないという論は当然ありますよね。高齢者はもっと亡くなっているだろうというのはおっしゃる通りです。同時に、それを防ぐために社会経済全体を止めるべきかという議論もあります。結局、これを判断するのは政治です。政治というのは我々民主主義の社会では国民が選んだ政権が決めますので、そこから先は国民の判断なのです。いろいろなことを言う人がいますが、実態は何なのか、この病気はどのくらい恐ろしいのか、という客観的な事実と、対策を取ったときに結果として何が起こるのかという、比較衡量に応じて対策を取らなければなりません。しかし、どうも一方の意見がこの国では暴走しがちです。そうした状況のなかで、高齢の方、とくに80歳以上の方の死亡率についてはいちばん最初のWHOの発表によれば15%ほど。7人に1人は亡くなる可能性があります。ならばどうするのか。そうしたことに当然なっていきます。

高齢者に支えられている政権としては、高齢者も敵に回したくはありません。高齢者がばたばた亡くなるという事態は避けたいのです。このまま、若い人の感染が広がっていく、それが高齢者まで広がるとなると高齢者がどんどんと亡くなる可能性がないとは言えません。ただ、高齢者が重症化して死亡するリスクがどのくらいなのかというのを考えたときに、どうも日本において重症化リスクというのと死亡リスクというのは、医者の努力によってかなり下がってきているのではないのか。いろいろなことがわかってきました。医療技術の向上が素晴らしいです。

そうしたことで救命率が劇的に上がってきている。そうした部分を考えると、重症化している人もそんなには多くありませんが、ICUにきちんといれて酸素投入、人工呼吸ECMOをサイントカインストーム対策、血栓症対策というのをきちんとできるような医療体制さえ整っていれば高齢者でもそう簡単には死なないというのがだいぶ見えてきた段階で、それが見えなかった段階と同じように社会全体の動きを止めなくてもよいのではないのか。若い人でも重症化する例はまれにありますが、シンガポールの例を見ても1000人に1人もいない。高齢者の場合、重症化する人はいますが、重症化しても今のプロセスを辿っていけば、そんなに簡単には死なないという状況になったときに、以前と同じような社会全体の動きを止めることが果たして正当なのだろうか。

東京の新たな感染者188人……なぜ政府は緊急事態宣言を出したくないのか 辛坊治郎が持論

定例会見する小池百合子東京都知事=2020年7月3日午後、東京都新宿区 写真提供:産経新聞社

救命率が劇的に上がってきているなら「緊急事態宣言」ではないという流れ

辛坊)というのを考えたときに、知事の皆さんは毎日毎日、感染者数が何百人と大騒ぎしますが、本質はそこではありません。やはり重症化した人をきちんと救えるような医療体制が継続できているのか、どうなのかというのが、話の本体なのではないのかということです。そうしたところから、緊急事態宣言は「そういうタイミングではないでしょう」という流れになっているということです。

飯田浩司アナウンサー)そうですよね。一歩進めば年代別にここまでの社会活動ができますというような指針を示すこともできる。ただ、それをやると高齢者に対しての差別だということにもなりかねないので政治の世界ではなかなかできない。

辛坊)スウェーデンではこれが極端です。社会的コンセンサスが取れているところがすごいと思うのが、どんな病気になっても80歳になるとICUに入れてもらえません。自動的に80歳になると寿命ですということになる。日本でそのようなことをしてみたら、とんでもない騒ぎになりますが、一方でスウェーデンにおける政権支持率が非常に高いというのはどういうことなのでしょうか。日本の状況はマスコミのせいなのではないのかな、というのも考えなくもありません。

番組情報

辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!

月~木曜日 15時30分~17時30分 

番組HP

辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)

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